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輪廻創世 アルヴァーナ  作者: ひやニキ
Chapter3.5 合成のクラスメイト
39/120

第26.7話 歪な悪意の申し子よ

 それからまた1ヶ月と少し、正確には40と9日が過ぎ去った。

その月日はプルメリアという一個人にヒトらしさを教えるには十分な月日だった。

厭、寧ろ彼女が彼にヒトを教えていたのかもしれない。


「人ってのは不思議と非日常を求めたりもするんだぜ」

「山に登る……いい景色ですね。

森林は人間の精神バランスを良質に保つと私も記録されてます」

「そこはその……『聞いたことあります』っていいんだぜ」

笑いながら2人で山に行ってみたり。


「金額を払ってスペースと時間を買う。

喫茶店とは実に資本主義の理に適ったシステムですね」

「あー……その捉え方は流石にオメーの脳みそも、再教育が必要じゃあねェかな……」

「???」

喫茶店で人間の微妙な感情や世の中のシステムをただ2人で話したり議論することもあった。


奇怪なことに。

見た目が人間からかけ離れた彼。

見た目は人でも人ではない彼女。

彼らが最も優しく温かい時間を過ごす機会を得ていた。


しかし、以前よりも有機的な気持ちが増えたウォルノも、風邪には寝込むことがある。

どうにも亜人特有の病気だったらしい。

医者が対応できなかったことで1週間と休む羽目になった。


俺がいねェ間、アイツはうまくやってンかね。

根本リエと……なんつったけ、箱崎と藤田か?

あのキメェ女子達にイジメられてんじゃあねェだろうな。

彼が再び教室へと入った時、その答えは明白であった。


金色の瞳の少女の顔に、眩しい笑みはない。

泣けないその眼から涙が溢れそうな程の蒼く暗い感情。


聞かなくても判る。

プルメリアは日々のイジメによって新たに孤立していたことが。

俺が来ない間、お前だけが独りぼっちだったんだな。

破られて落書きだらけになった教科書に、かつての自分が重なった。


金の瞳にウォルノが映り込む。

「来てくれた……のですね!」

そうか、俺に見捨てられたと思っちまったのか。

「大丈夫だ、見捨てたりしねェよ。

俺が守るからよ」


しかしそんな2人の様子を面白く思わないヒトが少なからずいたのであった。



―同日 夜20時 同市内 ホテルにて―

「っていうことがあるワケ。

あいつら犬と機械のくせに、頭も学年トップでばりテンション下がる。

面白くなさすぎ」

「へぇ~そいつらがリエの笑顔を奪ってるんだ?」

「嫌がらせして顔色変えないとかウケ」

「獣とか臭そう。文字通り鼻につくってワケね」

シャワーを浴びてバスタオル一枚のリエは、ベッドで各々自由にしている男たち3人の真ん中に寝そべる。


「で、成井、土見、佐藤くん。貴方達3人にお願いがあるの♡

あのロボ女に私、社会勉強をしてあげたいなって思ってるの。

その間、ケダモノと遊んであげて欲しいな、って」

寝そべったまま頭上で腕を組み、扇情的なポーズをする。


「再教育とは、俺達の女優しすぎかー?」

「動物の躾は得意だわ、はーーー因果因果」


佐藤が樹液に誘われる甲虫のように、リエににじり寄る。

「んで、動物とじゃれあう報酬は?」

「ん~、私の他に箱崎と藤田もつけてあげる。

終わったら6人で組んず解れつ……で、どう?良くない?」

「あの如何にもって感じの2人ね、いいぜ」

「オッケー、よろ~☆じゃあ続き……まだイケるでしょ?」

獣欲業を重ねる夜が更けていくのであった。



翌日、学校 -教室内-

 明くる日、プルメリアが席に着くと机には一通の手紙が入っていた。

「これは……えっ……」

咄嗟に同教室内のリエの方を見る。

目があったリエはプルメリアに凍れる笑みを投げかけるだけであった。


「よォ、どうした、手紙なんて珍しいじゃあねェか。

ラブレターでももらったか?」

プルメリアの後ろから、ウォルノが明るく声をかける。

ちょっとした言葉でも元気づけよう、という彼の優しさを感じる。

この文を読んだ今、その優しさが逆に辛い。


「はっ、はい!

私のような機械でも、人並みの好意を受け取ることもある……というところでしょうか」

「何いってんだ、お前は十分人間だろ?

ヘッ、お前が誰かに恋されるってのは……ちょいと妬けるがな」

ウォルノが見せたことのない、嬉しいような悲しいような笑顔を向けた。


「大丈夫です、放課後に手早く済ませます。

それに私は」

彼女がいいかけたところでチャイムが鳴る。


「はぁぁぁいいタイミングでふざけやがって。

今日は体育、俺ぁパスだな。

自称ヒト風情を伸しちまう。

帰りはお前の用事が待つまで待ってるぜ」

そう告げると、ウォルノは教室を出ていった。

プルメリアは手紙をもう一度見、そこに書いてあった言葉を読む。


~放課後、屋上へ一人で来なさい。

狼さんがどうなってもいいなら逃げてもいいのよ 根本リエ~

【ライナーノーツ】

1 タイトル元ネタ:シン・汎用合成クラスメイト:宇佐見227号

歌詞の「誰にも隠そうとしない 歪な科学の申し子よ」から拝借。


2 キャラクターについて

根本、箱崎、藤田、成井、土見、佐藤→高校で僕をつま弾きにしてた奴らの苗字。

こいつらみんな〇なないかなって割と毎日思ってる。

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