第1章 44話
「お兄ちゃんの演説はね、もうすでに冥王星中の人が映像で見ているんだよ!」
「え?俺の演説が映像で流れているのか?」
確かに演説をした時、マスコミ関係者らしき人達は来ていた。勝彦自身も、より多くの人に知って貰いたいから、進んで映像に映っていた。
「うん、そうだよ。冥王星の多くの人達は、お兄ちゃんの演説の映像を聞いて、二人を助け出そうと立ち上がったんだよ!」
(え、俺とリリアを助けるために・・・立ち上がった?)
勝彦は驚いた。演説をした時、マスコミに映像を撮られている事は理解していた。
でも、それは「これからシンピ星に行って地球を救う!」という事を、より多くの人に知ってもらいたいが為であり、こうやって助けに来てくれる事は想像もしていなかったのである。
「それで、お前はどうやってここまで来たんだよ?」
勝彦は不思議に思った。助けに来てくれたのはありがたい。でも、アーロンの様な子供がどうやってここまでやって来たのか?それに、部屋の前には警護の警官がいたはず。その警官を突破して来たのか?
「お巡りさんの中にも、地球出身者がいるんだ。そして、協力してくれる人は他にも一杯いるんだよ!」
(つまり、警官の中にも俺達に協力してくれた奴がいるということか?)
「じゃあ、ほかにも協力者がいるんだな・・・・?その人達がお前をここに!?」
「うん、そうだよ!」
「みんな・・・本当に俺達に協力してくれるのか?」
勝彦は信じられなかった。管理局長は、邪魔をすれば難民の申請を取り消すと言っていたし、実際あの時、管理局長の言葉を聞いて静かになっていた。逆らいたくても、逆らえないはずである。
もし、逆らえば難民申請を取り消される恐れがある。そんなリスク背負ってまで、自分たちを助けてくれるなんて思ってもみなかったからだ。
「そううだよ、皆、お兄ちゃんとリリアお姉ちゃんに地球の運命を託したんだよ!」
アーロンは、真っ直ぐな目で勝彦に訴える。
(みんなが・・・俺達に地球の運命を託してくれた?それは本当なのか?あの、ふざけた演説が本当にみんなの心を動かしたのか?)
勝彦は、アーロンの言葉がどうしても信じられなかった。
「本当に地球の運命を俺達に・・・?」
勝彦はアーロンにもう一度念を押す。
「うん、僕も、僕のパパも、そして・・・この星にいるすべての地球人が、お兄ちゃんと、リリアお姉ちゃんに最後の希望を託しているんだ!」
「俺達が・・・最後の希望・・・」
(俺みたいな馬鹿が、地球人最後の希望だって・・・?)
「だからお願い!!必ず地球を救って欲しいんだ!その為なら僕は何でもするよ!」
アーロンは、レストランでリリアにすがっていた時の様な眼差しを勝彦に向けた。それを見た勝彦は、下を向いてすべてを悟った。
「く、くくくくく・・・」
勝彦は自然と笑いが込み上げてきた。それはアーロンを馬鹿にして可笑しかったのではない。もちろん、自分達を助けてくれようと動いている人達を嘲笑ったものでもない。
勝彦は、とてつもない嬉しさで、感動に打ち震えていたのだった。
そもそも、勝彦が演説をして地球を救う事を発表したのは、半分自分の為である。
自分が冥王星を脱出する為に、スムーズに道をあけてもらえる様に・・・そして、自分が目立って英雄気分を味わいたいが為である。
なのに、自分の演説を見て、助けてくれようとしている人達がいる。こうやって子供までもが、自分を助けようと危険を冒してやってくる。
勝彦は、何か運命的なものを感じていた。何か、見えない大きな波が自分にやってきていると思った。
そう思ったら、何だか可笑しくなってきたのだ。
地球を救いたいと立ち上がったのは、自分だけじゃなかった。冥王星にいる、多くの地球人が立ちあがったのだ!地球を救う英雄は自分だけじゃない!そう思ったのだった。
(みんな・・・気持ちは一緒だった!)
「・・・・・?」
勝彦が笑っている横で、アーロンが不思議そうに見ている。勝彦は、そんなアーロンに向かって宣言した。
「ああ!!任せろ!絶対に俺が地球を救ってやる!」
勝彦のモチベーションは完全復活していた。さっきまで悔やんでいた自分はもう、何処にもいなかった。
(俺の後ろには、地球を救いたい多くの英雄がいるんだ・・・)
そう思うと、不思議とやる気が出て来たのだ。




