第2章 142話
『勝彦・・・この手紙を開いている頃には、僕は死んでいるかもしれない・・・勝彦は確認しに行ってくれたけど、アレスが裏切ったのは恐らくホントの事だと思う。信じたくないけど、多分アレスは僕を殺しに来るはずだよ!
でも、もしそうなっても、あいつを恨まないでやって欲しい。あいつも、あいつで、俺の友であり、アルゼン家で生まれた使命があるんだ。これも運命なんだ・・・・勝彦は、この国の事を良くわからないかもしれないけど、遅かれ早かれ、アントフェス帝国はもう滅亡寸前だったんだ。そして、それは僕自身が一番わかっていた事なんだ。
この国に生まれて、皇帝を兄に持って、カタ・ルー家に生まれたのも、また運命…。この国の為に、死ぬ事は僕の使命なんだ!責任があるんだよ!
だから、もし、僕が死ぬ事になっても、勝彦は悲しまないで欲しい!アレスを恨まないでやって欲しい!僕が死ぬ事で、この国が良くなるなら、僕は喜んで死ぬよ・・・だから・・・僕の国は駄目だったけど・・・・君の故郷は必ず救っ欲しい!君の事・・・ずっと見守っててあげるから。最後に・・・ありがとう・・・』
ジャネイロの手紙にはそう書いてあった。
「ジャネイロ・・・」
勝彦の目から、涙がまた溢れ出してくる。涙の水滴が、一粒また一粒とジャネイロの手紙に零れ落ちてくる。
さっきから、あれほど涙が出たのにまだ涙が止まらない。
(ジャネの奴、やっぱり知っていたんだ・・・こうなる事を・・・)
そして・・・涙を拭って、もう一枚の手紙を開いた。それは、シンシアのからの手紙である。
『勝彦・・・ごめんね・・・グランデお兄様がこうする事はなんとなくわかっていたの・・・お兄様とは、もう2ヶ月以上も直接話さなかったからね。グランデお兄様は、私に心を読まれない様に、必要以上に近づかなかったの。でも、アレスお兄様は絶対止めたはずよ!最後の最後まで、ジャネを裏切りたくなかったはずだわ!だって、二人は親友だったのよ!悲しくないはずがないじゃない。だから、二人を信じてあげて・・・私も・・・私も信じているから。そして・・・私も、私の使命を全うするわ!もちろんジャネの妻として、そして、アルゼン家の娘としてもね・・・だから、あなたは、あなたの使命を全うして!あなたの使命は、私たちの使命よりも、より困難なはずよ!こんなところで、私たちに構っている場合じゃないわ!勝彦には、多くの人たちの期待がかかっているのよ!だから、勝彦ならやれるわ!勝彦なら、きっとどんな困難も乗り越えられるはずよ。今までありがとね・・・あなたの旅の無事祈ってるわ!頑張ってね!』
(シンシア・・・みんな、死を受け入れていたんだな・・・)
勝彦は、皆死んでしまったのは自分が力不足だったから止める事が出来なかったのだと考えていた。でも、こういった結果になる事は・・・皆覚悟していた事だった。
きっと、勝彦がこの星に来る前から、ずっと皆覚悟していた事のである。
ただ・・・勝彦一人だけが覚悟出来ていなかっただけだった。
「どう勝彦君・・・?二人は、自分の使命を全うして死んでいったんだよ!僕だって止めたかったよ!でも・・・二人の気持ちを、覚悟を聞いたら、止められないよ!僕には・・・止める事は出来なかったよ・・・僕だって、大事な使命があるからね、勝彦君と・・・地球を救う使命がね・・・」
「うぐう・・・」
勝彦は何も言えなかった・・・確かにクー太の言う通りである。勝彦にはやらねばならない事があった。背負わなければならない責任があった。
冥王星で会った人々や、地球に住む人々の運命が、この勝彦の肩にのしかかっているのである。
(忘れてはいけない・・・・この俺の使命を・・・)
勝彦は平和な日本で生まれ、死という事が身近じゃない。
でも、死というものは、この国では・・・いや、この星では当たり前の事である。
昔の地球も、死というものが身近な存在だった。そう考えれば、勝彦の考えは全く甘い物だった。
(俺は・・・冥王星で地球を救う覚悟をしたつもりだったけど・・・まだまだ覚悟が足りなかったかもしれない。ホントの意味で・・・命を懸けた自分の使命というものを!)
「忘れたの?僕達は地球の運命を背負ってここまで来ているんだよ!僕達が遅れれば、遅れた分だけ、今、地球に住んでいる数十億の人達はみんな死んでしまうんだよ!僕達は立ち止まっちゃいけないんだ!必ず地球に帰ってこなければならないんだよ!だから・・・立ち上がって!前に進んでよ!勝彦君!」
クー太は感際立って叫んでいた。そのクー太の魂の叫びが勝彦の心に突き刺さった。




