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患者氏名:風間七奈
性別:女
年齢:一七歳
身長:一五七センチ
体重:トップシークレット
カルテに記載されたすべての項目を、真土迅は少女のものだけは詳細に記憶している。
識別名称:セヴン(七刀ノ神)
異常患部の危険度:極大(全身部位)
精神汚染の影響:大
人格変貌:融合型
感染度合:L5(特重度感染者)
その病室を訪れた真土は、いつものようにぶ厚いガラス越しに少女と面会しながらこう切り出した。
「結局、今回の件はお咎めなしってことで、僕が責任を問われることはなかったよ。そういう意味では国木田博士に救われたとも言える。まさに首の皮一枚繋がったって感じさ」
「ふぅん? クビにならなくてよかったじゃん、つっちー」
どうでもいいと言わんばかりに少女の言葉はあっけらかんとしていた。自らの暴走が真土をさらなる窮地に追い込んだことなど一切、これっぽっちも考慮していない。
というか、何も考えていないのだ。差し入れの焼き芋を口いっぱいに頬張っていたので、少女はことのほか機嫌が良かった。それだけである。
「きみの方もすっかり体調が良くなったみたいじゃないか。入院というほどではなかったけれど、一応おめでとうと言っておこうかな」
風間一郎から受けた毒による〝D〟の麻痺はそれほど長時間持続するものではないとわかっていたが、目を醒ましたばかりの少女の様子はかなり異様だった。
意識ははっきりしているのに、物思いに耽るようにいつまでもぼーっとしており、一時期は食事すらほとんど摂らなかったほどだ。これには玲子をはじめ真土もかなり心配していた。
一週間が経過した頃になってようやく復調の兆しが見えたのだが、予断は禁物である。今日は様子を見にやって来たのが真土の一番の目的だった。結果は見ての通り、食欲旺盛なさまを見て胸を撫で下ろした。
「なんてゆーのかな、幸せの余韻にひたっていたい気分だったの。べつに体調悪かったわけじゃないから、心配したのならごめんね」
ちっとも悪びれたふうもなく少女は言う。
「幸せ……ねぇ」
口づけによって実の兄から毒を盛られたことに、少女は気づいていなかった。感極まって自分が勝手に失神したのだと思いこんでいる。まったく幸せなことである。
「それで、これからどうなるの?」
「ん? どうなる、とは?」
「『おままごと』は続けるのか、って聞いてるのよ。あの鎧神ってやつ、まだ刃向かうつもりなら今度は容赦しないんだから」
この前のあれはすでに容赦のカケラもない死闘だったはずだが、あるいは少女の認識ではあの程度まだまだということかもしれない。
思わず冷や汗をかいた真土だったが、表面上は何事もなかったようにスマイルを続けた。
――鎧神の少年は、あれほどの重傷を負ったにしては順調に回復していた。おそらく少女に負けたことに対しては、武士道精神的なものをもって受け入れるだろうと予測されており、少なくともこの前のように問答無用で相手に斬りかかるようなことはないだろう、と思われた。
班長たちに関しても、むしろ敗れたことで相手に一目置いた様子で、感触的には再度の衝突を危惧するほどではなさそうである。案外、あれをきっかけにして男同士の友情的なものが芽生えるといった展開すらありえるかもしれない。
そして少女もまた、言葉のわりにはとても穏やかな目をしていた。
これまで何度となく面会を重ねてきた真土には、少女の感情の起伏がある程度わかるようになっている。
おそらくだが、少なからず禍根は残っているものの、それらすべてが結局のところ少女の言う『幸せ』に引き合わせてくれた、とでも考えているのかもしれない――だとすれば、こちらも心配するほどのことはなさそうだった。




