第七話 総帥の平日
稲村真二のとある昼下がり
私は普段しがない電気店の派遣社員である。入社当社 広報部マーケティング部に配属と聞いていたが私が配属されたのは、出荷配送部であった。主な仕事は商品の梱包、出荷であり、私は毎日薄暗い倉庫のなかで商品をダンボールに箱づめするという地味な作業に追われていた。私の部署の上司の刈山は私を嫌い日々執拗ないじめを繰り返していた。
「おーい 稲村!これおまえだろ?また伝票まちがえやがって!いい加減にしてくれ!おまえがいることでみんな迷惑してんだ。」
刈山は眉間にしわをよせながら、せせら笑う同僚達のまえで私に伝票を投げつけた。
・・・しかし、私はののしられても 馬鹿にされても 踏みつけられたも、悪の組織コリディアスの総帥コリディアスである。表向きはしがない派遣社員を演じる必要があるのだ。
私は埃っぽいコンクリートの地面におちた伝票に目をやった。そこには私の記憶にない出荷内容と明らかに私の筆跡ではない文字で商品名が記載されいていた。わたしはこぶしを握り締め、言葉を飲み込み、あきらめ言葉を発した。
「すいません。次から気をつけます。」
私が頭をさげそういうと、刈山は唇の端に笑みを浮かべながら、満足そうに去っていった。
私は地面に落ちた伝票を拾いにぎりしめた。
私は悪の組織コリディアスの総帥コリディアスである。表向きはしがない派遣社員を演じる必要があるのだ。
夕方業務がおわると 私は今日給料日だったのを思い出し事務室へと向かった。
私が係りの女性から給料明細をうけとり、事務室から出たとき、私を中傷するような話が背後から聞こえてきた。
A子「あの 稲村さん外見ばっかりで全然仕事できないんだってさ。」
B子「えーそうなのー」
C子「それにマザコンらしいよ、配送部の刈山主任がいってたんだけどねー」
B子「えーうそーまじキモい いくら男前でもマザコンはねえー」
C子「そういえばさ 部署でも嫌われているらしいよ 稲村さん XXXXXXXXXXでxxxxxxxxでxxxxxxxxxxxxxxxxx」」
わたしはそれ以上耳に入らないように足早に廊下を歩いた。
私は悪の組織コリディアスの総帥コリディアスである。表向きはしがない派遣社員を演じる必要があるのだ。
私は特別用事がない限り、日曜のみ、コリディアスに出社する。平日はこのようにしがない派遣社員を演じる必要があるのだ。今日もタイムカードを押した後、再び、倉庫に戻り、箱詰めを続ける・・・。無論これから 5時間のサービス残業である。私は時計の針が10時をすぎる頃、この悪徳企業から解放される。サービス残業を行うと、小さな缶コーヒーとコンビ二弁当を差し入れにもらえるが、私は其の日それをカバンに押し込むと、スーツに着替え都電に乗った。母親には電気店の正社員でマーケティング部所属といってあるのだ。私の母親は重い病であり、母には会社での私の実情を知られるわけにはいかなかった。母は幸い、普段の生活を送ることにはそこまで支障なく日々の生活はおくれていた。が時折幻覚に悩まされており、週に何度か深夜「ホンダヘイハチロー」「ホンダヘイハチローくたばれ!」と叫んだ。
過去のわたしにとっては、悪の組織コリディアスが生きがいであったが・・・。
昨今の私にとってユウキちゃんの存在が大きくなりつつあった。
主人公、稲村真二の年齢はあきらかになっていませんが、恐らく、作者の妄想では、18−24歳のオダ○リジョーに似たイケメンの設定です。