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△アタック

「ば~か!」


「何さ、いきなり!?」


「ば~か、ば~か、ば~か!!」


意味不明な言葉を連呼されるといくら寛大な心の持ち主である俺でも切れる寸前だ。


「あのなぁ~~~~!!」


「ふん、あんたはいっつもば~かなことばっかり」


連呼した少女というか、俺と同い年の人物なわけだが……


「馬鹿ばっか???」


「ば~か!!」


ボケをかましても相手にしてくれない。ひたすら、『ば~か』と連呼される。

遅くなったが、俺は今、美佳の家でラーメンを食している。

本日は土曜日で休日。文化祭が終わって1週間も経っていない今日この頃。

あれから、姐さんとは別にどうということもない。

『恋仲』から『仲のよい友人』に降格したってだけで、別に気まずい雰囲気はない。

でも、なんか……違和感がある。

『幼馴染に敬語を使っている=変』しかしここで『タメ口に変える=やっぱ変』な方程式ができる。

むぅ~、やっぱ……今までどおりでいっか。


「ズルズル……」


「……ば~か」


ラーメンをすすると、またもや言われた。

振り返ればいろんなことがあった。

あの喧嘩をふっかけられた時に出会った、姐さん。(結果的として再会となった。)

よく分からないままになっているストーカー(?)の岩倉さん。

やっぱり姉らしいところもあるとわかった、おとちゃん。

最近はそれほど害のない人物になりつつある春日。

そして、目の前にいる美佳……。


「人って、本当にいろいろだよなぁ……」


「ばか……」


あれ、美佳の声が泣き声になってきたのは気のせいか?


「美佳ちゃん……泣いてる?」


「っ、そ、そんなわけ……ないじゃ……ない」


「ば~か!!」


言い返してやった。ウソが下手くそだからだ。めっちゃ泣いてる。


「……ばかーーー」


「おぶっ!!」


美佳はグーで俺の頬を殴りつけて店の奥に引っ込んでいった。


「いつつ……泣かせちゃったのかな?」


「ば~か!」


「うあ!? って、姐さん? どうしてここに?」


姐さんがいつの間にか俺の後ろに立っていた。

一体、いつ入ってきたのだろう?

瞬間移動なのか!? 瞬●なのか!?

姐さんはひたすら攻撃系だったはずなのだが……


「女の子を泣かせるなんて『ば~か』以外にありえん!」


「ちなみに理由はなんなんすかね?」


そもそも、美佳がつっかかってきたのはこの前の文化祭の話をしてからだ。

何故か怒ったのだ。俺にはさっぱりだ。


「そういうこと、普通俺に聞くか? ったく……おそらく、文化祭のときに相手にされなかったってとこじゃないか?」


そうか、探してでも声をかければ良かったのか。

勿論、それだけじゃないんだろうけど……

姐さんは何やら思い出したように続ける。


「お前、まだ自分の気持ちに整理がついてないのか?」


「はい……自分でもよくわからないんすよ」


問題は姐さんを愛せない、しかし、美佳に心変わりしたというのも何か違う気がする。

いや、姐さんへの罪悪感が関係しているのかもしれない。


「お前、俺に遠慮してないか?」


なんか心の中を覗かれたくさいぞ。さすが姐さん!


「別にそんなことは……」


「今更過ぎるぞ? 変な時に気を使ってんじゃねー」


ゲンコツを食らった。

威力は抑えてあったのか、吹っ飛びはしなかったが重みがあった。


「お前とみっちゃんがどこまで仲がいいかは知らねーけどな、ケジメはやっぱ必要だ。気のおけない仲だったとしても、『親しき仲にも礼儀あり』って言うだろ?」


「……泣かす女は俺だけにしとけ」


どうやら俺は姐さんを泣かせてしまったみたいだ。

考えてみれば当然だ。フったんだ。

でも、厳密には違う。俺は姐さんを嫌いになってはいない。

お付き合いを申し込むことは……そう、していない!

ということは、あの時のやり取りはあくまでガキの頃の約束は守れないだけで、今までどおり接することは別に問題ない。

いや、なんか見苦しいな。

何を言えばいいか整理がついていないが、とにかく美佳のご機嫌を直しておこう。





美佳の部屋は2階にある。

木造の年季の入ったかなり急な角度の階段を登った先にある。

一段一段登る度にギシギシと音もなる。

部屋の前に立ち、ノックした。

返事も聞かずに扉を開けた。鍵がかからないことは知っている。

今の状況でなければラッキーなスケベフラグも期待できたが、お構いなし。


「……何よ」


ベッドに腰を下ろして枕を抱きこみ、こちらに背を向けている。

それは随分と隙だらけだということを美佳には自覚してほしい。


「いろいろとさ、悪かったよ。別に美佳のこと無視するつもりはなかったんだ。」


「……別に約束してたわけじゃないし、いいんだけど。」


話が通じるところを見ると、やはり学園祭のことで機嫌を損ねているようだ。


「あんたがいないから、そこら中の男子からナンパされたわよ……」


そうそう、美佳ちゃんは美人なんだ。

超絶美人なんだ。

愛想がよくて、夏休みにバイトもしていたが、実はインドアな性格。

外に出てもゲームセンターに行くくらいだ。

おっと、内面の話はこの場合関係ないな。

とある筋からの情報によると、学校でもモテモテらしく、頻繁に告白されるらしい。

全部つっぱねているのは、単に相手が良くないのか、好きな人が既にいるのか定かではないとか。

断り慣れている美佳が、柄の悪いウチの学校(偏差値はそれほど低くはないのだが)に来たならば考えられる状況だった。

俺のせいだ。

もっと気をつけていれば。


「ほんとにごめん! まじですいませんでしたぁ!!」


「……親切な生徒会の人が助けてくれたから良かったけどね」


生徒会?

春日か? 藤原には無理だろうし……副会長か?

あの人は体つきが良かったな。


「でも、怖かったよ?」


美佳はまだこちらに背を向けたままだ。

肩が小刻みに震えているように見える。

そうだ、この娘は俺が守ってやらないといけない、いやこれは義務とかじゃなくて、願望。

守りたい。

そして、姐さんとも……


あ、そっか。そういうことか。

今わかった。

俺の頭がどんどんクリアになっていく。

気分も清清しい。

そう、最初からこう言えば良かったんだ!


「俺は、美佳も、姐さんも、大好きだぁー!!」


「はぁ!?」


「ちょ、お前何言って」


なぜか姐さんもこのタイミングで背後から現れた。

扉の前で聞き耳を立てていたのだろう。

いや、構うものか。


「どっちか1人なんて知るか! 俺は2人とも好きだ! 好きなんだよ!!


このままモヤモヤしているよりずっといい。

だってこれが俺の望みなんだ。

正直に生きよう。

正直に接しよう。

姐さんと美佳が顔を見合わせて頬をゆるませた。

わかってくれたようだ。

これにて一件落ちゃ


『この、ばぁ~~~~~~、かっ!!!』


「なっごぶふぉあああああ~~~~!!!」


コンビネーションパンチ。

2人の鉄拳が俺の顔面を的確にとらえ、俺の体は背後の窓を突き破る。

繰り返すがここは2階。

窓から殴り出される俺は宙を舞った。

あいきゃんふら~~~~い!!

今の俺なら2人の女性を愛することも、このまま車にひかれようとも生還できる。

そう、俺は超人!

なんでもできるぅうううううう~~~~~

アスファルトの上に鈍いを音を立てながら着地。

いや、体全体をアスファルトに強打。


「あー……今度こそ死んだかな、あいつ?」


「大丈夫でしょ? 竜輔だし。」


「そうだな。」


そう、俺はラブモードになればまさに無敵!


チリンチリン


「ぷぼるぺおぉおおおおおお」


「あらあら、これはこれは、失礼。ここがあなたの寝床だって知らなかったものだからつい」


眼鏡の女がチャリに乗っていた。

こともあろうか、俺の顔面にタイヤを乗り上げやがった。

こいつが誰かは言うまでもない。


「てめぇ、春日ぁ!!! やはりてめぇとは決着をつけねぇといけないようだなぁ!!」


「ふふふ、まさにゴキブリ並みの生命力ねぇ」


「ふん、俺は無敵の清原竜輔! 何者にも負けん!」


ファイティングポーズをとる。

どんなトリックやスキルがあろうと、今日は絶対に負けない!

今日だけはそんな気がする。


「無敵モード(笑)の清原くんにも興味あるけど、丁度いいから伝えておこうかしら?」


「“(笑)”てなんだよ!? 馬鹿にしすぎじゃ」


「あなたが好きです」


「………………!?」


「それじゃ、ごきげんよう」


春日は清清しい笑顔で自転車を走らせ、去っていった。

いや、いやいやいやいや!!

待て、これは一体どういうことだ!?

この日、俺の世界は反転した、とでも言うのか!!!

美佳の部屋から美佳と姐さんも、何だかよくわからない目でただこちらを見下ろしていた。

俺だってもうなんかよくわからん。



いきなりの超展開。

だが、俺たちの青春はまだまだ続く。

姐さんの拳は、


「打ち切り乙っしたぁあああああ!!!」


「ぼぺらぁああああああ」


今日も無敵に輝いていた。


長々と読んでいただきありがとうございました。

番外編、オールスター(?)編を計画中です。


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