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第六話 王女としての矜持

あけましておめでとうございます。まさか年越すとは。もともと短い連載なので一月で途中でぶちっということになるんですが、真剣に掲載できるものは今執筆中です。しばらくお待ちください。

 


 アレティアの夢の時間が終わった。図書館の古時計が時を告げ、無情にも司書として働く時間は終わった。最初は受けいる事を嫌がっていた者もこの時ばかりはにはアレティアを抱きしめ、涙を浮かべた。

「あなたみたいな可愛い司書はどこを探してもいないわ」

「そうよ。いつも一生懸命に仕事して……。本と触れ合っている時が一番楽しそうだったわね」

「皆さん、この1週間新米より下手な私を受けいれてくれてありがとうございました。大好きな本の仕事に携われて私は幸せでした。皆さんもこれかも大好きな本と仕事をして行ってください。本当にありがとうございました」

 アレティアは頭を深く下げる。声は泣きそうに震えていた。だが、涙は見せなかった。王女としてのプライドがそこにあった。みだりに泣くものではない。そう教えられてきた。母の後を継ぐのだからこれからは王女として行動しなくてはならない。姉のように結婚には逃げられないのだ。

 大きな花束を抱えて、アレティアはマルコムと一緒にいつもの馬車の所まで来た。

「アレティア。君がいなくなるとあの図書館も寂しいよ。ミーアでさえ涙ぐんでたからねぇ」

「大丈夫。また新しい可愛い司書さんが来てくれるわ。あんな魅力的な図書館ないもの」

「ありがとう。明日、旅立つのかい?」

「わからないわ。王女としての務めもあるから。それにレイスの疲労度合いもあるし」

「そうだね。今日は一心に王族の系譜を見ていたね」

「ええ。あれで記憶が戻ればいいんだけど、そう都合良く行かないわね。じゃ、マルコム神のご加護を」

「ああ。アレティア、君には石版の加護を祈るよ」

「やだ。あの石版のためにとんでもないことになったんだから、加護なんていらないわよ」

「そう言わずに」

 アレティアは思わず笑顔になる。マルコムも優しく見ていた。そこへレイスの無粋な声が割入った。

「いつまで待たせる気だ」

「悪かったわね。最後の時ぐらい待っててよ」

 憮然として言うアレティアの表情の奥に泣きそうになっているアレティアをレイスは見た。

「ほら。さっさと乗る。じゃ、マルコムさん。また何かあったらお願いします」

「ああ。君達も気をつけて」

「はい。ほらアレティア!」

「ちょっと押し込まないでよ。お尻触らないで!」

 アレティアが甲高い声で怒鳴る。それに耳を塞ぎたい気持ちを抑えてやっと馬車にのる。そしていきなりアレティアの頭を胸元へ抱き寄せた。

「ちょっ……!」

 顔を上げそうになったアレティアの頭を押さえつける。

「ここだったら誰もわからないから。泣けば良い。失った場所を振りかえる時間も必要だ」

「レイス……」

 もうアレティアの声は震えていた。

「いい子だ。泣きたいだけ泣け。そしてしっかりとしろ。それがお母御の願いだ」

 どうして王族の心得を知っているのかレイスにはわからない。だが、そう教えられてきたのが自然と出る。王女もみだりに泣くものではない。一人孤独な時間に泣くのだ。それならば、旅の相棒の胸で泣いてもいい。一人よりはいい。アレティアの心にはきっとぽっかりと穴が開いている。自分の記憶がない穴のように。大好きな本から離れなければならないのだから。

「レイスー」

 アレティアは声を押し殺して泣く。わっと泣きたいだろうが王女として生きてきた人生でそれはできなかった。それを察してレイスは言う。

「思いっきり泣け。後悔が出ないほどに。俺だけだ。聞いているのは」

 その言葉でわっとアレティアは泣き崩れる。一週間だけの司書としての思い出が走馬灯のように駆け巡る。楽しい仲間と楽しい仕事。雑用ばかりで司書らしいことはしてないけれど、楽しかった。重い本を腰を痛めながらも持ち運んだりもした。筋肉痛になっても笑顔で仕事をしていた日々。たった一週間。それでも憧れた一週間だった。もう。終わり。もう会えないみんな。いつしかアレティアは泣き疲れて眠ってしまった。

 

「悲しみは心の底に沈める方がいい。今は。いつか一緒に癒やしてくれる人間が現れる。それまで眠らせておけば良い」

 アレティアの心の傷は誰が癒やすのかと、思うと少し不機嫌になったが、なぜ、そんな風に思うのかもレイスにはわからなかった。

 

 王族というのは厄介なものだ。仕事に疲れ、泣き疲れた娘を見た母の女王は娘の髪を一撫でして額にキスすると世話役に寝かせに連れて行かせた。レイスに目線をやって感謝の意を伝えてきた。レイスはただ、頭を下げて答えた。

ここまで読んでくださってありがとうございました。

今年もよろしくお願いします。

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