第十二話 旅立ち、そしてミストウッドの街へ
第十二話 旅立ち、そしてミストウッドの街へ
次の日の早朝にアレティスとレイスは、馬に乗って旅立つ事となった。
マルコムと話していると母、レイナと姉、イリスが出てきた。
「お母様。お姉様。まだ日が昇る前なのに」
「娘の出立を見送らない家族はいませんよ。アレティス無事で」
乗っていた馬からアレティスは下りると母と姉に抱きしめられる。
「無事に帰ってきてね」
姉イリスが言う。
「もちろんよ。きっと石版の使命なんてすぐに終わるわ。そうしたらお母様に親孝行するつもりよ。お姉様にも。自由気ままに暮らしていたツケが回ってきたのよ。これからはもっといい子になるわ」
アレティスが言うと母は言う。
「いい子になる必要はありません。いつものあなたらしく在れればいいのです。母の元へちゃんと帰ってきなさい。帝王学を勉強する本をたくさん用意してますから」
「それって母の愛なの?」
「もちろん。愛ですよ」
冗談めかして突っ込んだアレティスだったが、母は真剣に答える。改めて母の愛を感じるアレティスである。思わず泣きかけたがそこは踏ん張った。それを母、レイナにはわかっていた。
「そうです。王女の矜持をいつでも持っていなさい。芯を一本作っておけばどんなことも乗り越えられますよ」
「はい。お母様。それじゃ。レイス、行こうか」
行き先のミストウッドはここから北方にある街だ。そこに大きな聖域エレシアン・サンクチュアリがあり、その中に始めの目的の神殿、ルナリス神殿があるのだ。
二人の馬は走るわけでもなく、歩くわけでもなく中途半端な速さで向かう。
ぱかぱかと馬の足音のみが聞こえる。アレティスもレイスも何を話せば良いかわからなかった。
レイスが馬を横付けした。
「もうすぐミストウッドだ。うまいものでも食おう」
「そんなに美味しいものがあるの?」
食べ物の話にすぐ食いついてきたアレティスらしい態度にレイスは薄笑いを浮かべる。
「あー。今、食いしん坊とか思ったわね。食事は気持ちを高めるのよ。行く当てのない旅だって前向きになるんだから」
「アレティス。今、何を考えていたんだ」
行く当てのない旅、とアレティスは言った。そんな事を考えてぱかぱか馬を歩かせていたのか、とレイスは驚く。先を見据える視線を持っていた。だが、この旅にはそれは役にたたない。一つ一つ石版の謎とレイスの記憶の欠片を取り戻すしか無いのだ。
「アレティスの頭が優秀なのはいいが、今はその頭が旅を邪魔する。しばらく馬鹿になっていろ。急ぐぞ。早いほうがおごってもらえることにする」
路銀は二人とも平等に持っていたが、おごるなどと聞いたことがない。アレティスは馬の腹を蹴って走らせる。
「おごる何ていやだからねー!」
そう言って二人はミストウッドの街へ急いだのだった。




