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冒険者受験対策授業

 それから約二か月後、とうとうこの日がやってきた。


 1週間前の対策授業の日の朝、家の前まで送迎馬車が来てくれるらしい、ミヤカは受けないらしく久しぶりに一人の勉強だ。あいつ悲しくて泣かないかな?と思っていると…


「セイア、そんなズルして落ちるなよ」


 朝っぱらだがミヤカとアラフさんが受験前最後の顔合わせをしに来てくれた。この対策授業は合宿みたいになっておりそのまま受験直行なのである。父と母も後ろにおり全員勢揃いである。


「お前は1人で寂しくて勉強できなかった…とかやめろよ」

「お前さんらが合格したら俺は塾でも開こうかな」


 そんな冗談を言い合っていると馬車がやって来た。


「じゃあ行ってくる」


 馬車の人が降りてきて俺を乗せてくれた。そのあと父と何か話しており少しして戻ってきて手綱を握った。もう出発らしい。


「「行ってらしゃい」」

「受験落ちんなよ」

「負けないからね!」


 みんなからのお別れを背に馬車が出発した。俺は振り返らず前を見た。何故かって?それはこれが初の一人旅でこれからどんなところに行くか楽しみだからだ…というわけではなく振り返らないほうがかっこいいと思ったからだ。俺が伝説の冒険者になったら受験前最後の顔合わせでのこのことを嘘偽りもなく書ける。というか書くからだ。

 しかし俺が行った後あいつらが何をしゃべっているのか気にならないわけがなく目を閉じ聞き耳を立ててみた。すると小さいがかすかに聞こえてきた。


「あんな対策授業に負けてらんねぇな、特訓開始だ」

「もう?はやくなーい」

「ミヤカちゃんも頑張ってよね」


 相も変わらず楽しそうな会話をしていた。最近はミヤカへの問題がかなり厳しくなっており受験で出ても捨て問レベルだった。俺とどっちのほうが苦なのかな、と考えていると俺はいつの間にか笑みがこぼれていたらしい。

 朝早かったからか緊張で眠れなかったのか急に眠気が襲ってきた。馬車の揺れも心地よくすぐに眠ってしまった。



「もうすぐ、お着きになります」


 あれからどれくらい経ったのだろう、ドキドキしながら馬車から顔を出すと村とは全然違う景色が見えた。いろいろな商店がたくさんあり、一つ一つの家がめっちゃ豪華で別の世界に来たみたいだ。しかし向かっている方と反対を見ると雲まで届く安心感をもたらす塔が見えた。

 村…ではなかった、町の中央を通り過ぎたぐらいになった。やはり冒険者は重要な職業らしい、ここらへんは冒険者用のお店しかなかった。剣を売り場や術本売り場などがあった。それから少しして馬車が止まった。


「着きました」


 その言葉を待っていた、重い荷物を持ってすぐに下りた。


「どんだけすごい場所なんだ?」

「目の前に」


 馬車の人が教えてくれた。目の前にすごくでかくきれいな建物があったが大きすぎて壁としか認識できなかった。


「まさかこの建物?」


 嬉しそうに聞くと馬車の人がこくりとうなずいた、と同時に歓声を上げた。入口まで案内されそこから出てきた人に個室まで案内された。かなりきれいな部屋であり合宿するにはちょうどいい部屋だった。


「とりあえず12時までお一人でお待ちください」


 と言われきれいな部屋に一人残された。今は10時30分、慣れろってことか。

 合宿みたいなものと言われていたが一人部屋らしい。一人用だとするとかなり広い、いや広すぎる。取り合えず荷物を片付けた。昔財草から入手した麻袋に荷物をすべて入れていたのでぐちゃぐちゃにならずにすぐできた。あまりにも早く終わてしまったので部屋を観察した。リビングにキッチン、トイレに風呂、一人で住むにちょうどいいぐらいの広さと設備だった。術本を応用して作られている便利な製品がたくさんあり面白い発見もあった。しかしほかにやることがなく暇を持て余していた。

 やっと12時になり部屋のチャイムが鳴った。急いでドアを開けると案内してくれた人がいた。


「これから授業の話があるのでついてきてください」

「はい!」


 これからのことが楽しみなのか暇が終わったからなのか生き生きとした返事をしてしまった。ついていくと300席ほど用意されている部屋に案内された。真ん中を取り囲うような半円にだんだんと席があった。俺は真ん中より少し下の右側に案内された。と同時に疑問に思ったことがあり質問をした。


「こんなに人数がいるんですか?」

「もちろんいらっしゃいますよ。本当に勉強したい人や親に行けって言われただけの人など様々」


 思っていたより戦争のようだ…ミヤカは大丈夫かなと少し心配してしまった。

 だがすぐに(今は自分のことだけ考えろ、どうせ俺のほうが頭悪いし…)と首を横に振り考えを切り替えた。

 それから続々と人が集まりやはり満員になった。それから先生の話が始まった。倍率がどうのこうの授業ではどうのこうのと普通のことを話していた、しかしここは地獄だという言葉がどうにも耳に残ってしまった。それが終わったら教科書などが配られ自室に返された。7時まで待機だと。あと3時間何をしろと…

 暇すぎて教科書を見てみるとそれは教科書ではなかった。


「あ、明日までの宿題!?明日までに出さなかったものは失格処分?」


 少なくとも50ページはあった、アラフさんのところでは1日100ページ1問間違えたら山1週だったからかなり余裕だが初日でこれはかなり厳しくないか?

 とぶつぶつ言っていたがアラフさんのおかげでかなり余裕に解けてしまった、超鬼畜アラフ式特訓は伊達(だて)じゃなかった。すると時間になりチャイムが鳴り案内人が食堂まで案内してくれた。大体の人が友達を作れず一人で食べており、メニューを見てみると何種類もあり1週間で食べきるには難しいほどだった。


「何にいたしますか?」

「じゃあ、骨付き肉セットを…ドリンクはオレンジで」


 初めてにしては我ながらうまく注文できた。数分して料理が出され席に着いた。よく見ると、いやよく見なくてもバカおいしそうだ。これが無料とかありえねぇだろ…学費を払ってくれた親に感謝だな。

 手を合わせ食事を開始した。骨の部分を持ち、きれいな焦げ目がついているブリブリな肉にかじりついた、と同時に口内が天国に行ってしまった。何度もこのうまさを感じるために飲み物で口の中をリセットしようとしたらまたもやオレンジジュースのせいで口が天国の天国に行ってしまった。これはやばいと思い、俺は黙々と食べそっこー部屋に帰った。(のち)に知ったがあの食堂は冒険者のための酒場らしく今の時間は俺たちの貸し切りだが普通に飲み食いできるらしい。帰ってもなお口の中が天国に行っていたが風呂に入り速攻寝る準備をした。布団は敷くタイプで少し硬かったが重さといい、風通しの良さも相まって即寝てしまった。


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