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お化け屋敷のファウスタ  作者: 柚屋志宇
第8章 マークウッドの森の奥

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731話 盟主代理と族長たちの入場

 ――カラン、カラン。


 再び鐘の音が鳴った。

 そして進行役なのか、吸血鬼ギルド本部長のハルラエスが、少し声を張り上げて言った。


「皆様、どうぞご起立ください」


 ――ガタ、ガタン。


 それまで席についていた魔物たちは一斉に起立した。


(ティムさんたちが来るのね)


 ティムたちが入場するときに起立するようにと教えられているファウスタも起立した。


 しばしの静寂の後。

 笛や弦楽器や太鼓の音がした。


 ――キキィー、ピロロロ……。

 ――トン、トトン、トン。

 ――ポロン、ポロン。


 魔物の音楽団が不思議な雰囲気の曲を奏で始めた。


(ティムさん?!)


 大きく開かれた大扉の向こうから、悠然と歩いて来るティムの姿が見えた。


 ティムは宝石がついた黄金細工の厳つい王冠をかぶり、豪華な刺繍で埋め尽くされた中世風のチュニックを着て、首回りには昔の王様のように厚みのある円盤状の襞襟(ひだえり)を着けていた。

 そしてファウスタの頸飾より数段豪華な黄金の頸飾に古竜(エルダードラゴン)の加護の水晶をぶら下げ、長く引きずるようなマントを羽織っていた。


(ティムさんが王様みたい)


 いつも髪がボサボサでくたくたのボロ服を着ているティムが、今日は髪をきちんと整えて頭に王冠を乗せ、生まれ変わったように豪華な衣装を纏っていた。


(あの王冠が、ティムさんのおうちに転がされていたのよね……)


 古竜の巣で、ティムが王冠を空き家に転がしていたという話を聞いていたファウスタは、実際にティムの王冠を見て震えた。

 王冠は黄金で宝石がついている。


(あんな高価そうなものをおうちに転がしておくなんて……)


 大広間の中央に敷かれている深紅の絨毯の上を、最奥の壇上を目指してティムが歩いて行く。


 ティムが背筋を伸ばして、ふらふらせずに真っ直ぐ歩いている姿に、ファウスタは奇妙な感動を覚えた。


(ティムさんがちゃんとしている)


 王者のごとき出で立ちのティムの両脇には、長身の男と、細身の少年が一歩下がって付き従っていた。


 細身の少年は、灰金髪(アッシュブロンド)に人形のような整った顔立ち。

 ファウスタが良く知るユースティスだ。

 ユースティスもまた豪奢な衣装を纏っていたが、彼はファンテイジ家で小姓(ペイジボーイ)の仕事をしているときも煌びやかな衣装をしばしば着用していたので、ファウスタはあまり違和感を覚えなかった。


(でもいつもより豪華な服ね)


 今日のユースティスは、いつもより重そうな豪華な服に加えて、ガウンのような分厚いマントを羽織り、古竜の加護の水晶をつけた黄金の頸飾を着け、ベルトには繊細な装飾のある剣を吊るしていた。


(剣が使えるのかしら。ユースティスさんは何でも出来るから剣も使えるのかも? ……何と戦うのかしら?)


 そしてティムに付き従う、もう一人の長身の男……。


(アルカードさん?!)


 それは黒髪の壮年の男だった。

 やはり昔風の豪奢な衣装で、マントを羽織り、帯剣している。

 その威風堂々とした所作や雰囲気はファンテイジ家の家令アルカードのものだった。


 ファウスタがアルカードに会った当初、白髪の老家令アルカードに重なって視えていた黒髪の男性の姿だ。


(アルカードさんが白髪のお爺さんじゃなくて、おじさんなのだわ)


 ファウスタに歴史学の素養があったら、もう少し違った感想を持ったかもしれない。

 だがファウスタは最近見学した王立博物館で何となく自国の歴史を知ったのみで、他国の過去の歴史などまったく知らなかった。


 亡国ルクステラの最後の王である少年のことも、かつて竜公(ドラキュリア)の通称で呼ばれたヴァラヒアの大公のこともファウスタは知らない。


(長いマント……)


 ファウスタの席をティムたち一行が通り過ぎて行く。

 ティムの長いマントの裾を、後に付き従っている二人の小姓の少年が持っていた。


 その後に冠をかぶった五名の魔物が続いていた。

 五名の魔物の冠は、ティムの王冠よりは簡素だが、やはり黄金で、それぞれ形が違った。


 冠をかぶった五名の魔物のうち二名は、ファウスタが前日に会った竜人(ドラゴニュート)族の長ガルングルンと、ドワーフ族の長ルフタだった。


 残りの三名は。

 おそらくエルフ族の、金髪にすらりとした長身の中年くらいの男性。

 おそらく狼人(ライカンスロープ)族の、銀色の毛の狼の頭を持つ長身の年齢不詳の女性。

 そしておそらくゴブリン族の緑色がかった皮膚の小柄な年老いた男性。


(ガルングルンさんとルフタさんと一緒で、冠をかぶっているから、あの魔物たちはきっとみんな族長なのよね)


 ティムたちと族長たち一行は、大広間の最奥にある壇上に登った。


 ティムたちが中央に陣取り、族長たちは左右に分かれた。


 楽団が演奏している音楽が終わる。

 しん、と会場が静まり返った。


「皆、よく集まってくれた」


 ティムが尊大な態度で声を発した。


「吸血鬼ギルドの新しいギルド長を紹介する」


 ティムがそう言うと、ティムよりやや後ろに控えていたユースティスが、一歩前に出てティムと並んだ。


 会場中の視線がティムに並んだユースティスに集まる。


「彼が二代目の吸血鬼ギルド長……」


 ティムがユースティスを紹介した。


「エゼルワルド・ユースティス・エステルヴァインだ」


(長い名前なのだわ)


 ファウスタはユースティスの本当の名前を聞いたが、『ユースティス』の部分以外は耳をすり抜けてすぐに忘れた。

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― 新着の感想 ―
713話 眼鏡を失くした不便 で古龍に対してユースティスがフルネームで自己紹介しているところをファウスタは聞いているので、今話が初めてではないと思います!
もうちょい他に感想ないんかーい!
知識?教養?があればフルネームを聞いてもしかしてとなるシチュエーションを素朴にスルーするファウスタw
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