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お化け屋敷のファウスタ  作者: 柚屋志宇
第8章 マークウッドの森の奥

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729話 ドワーフ族の長ルフタ

「では、ドワーフ族の(おさ)ルフタ殿をお呼びします」


 竜人族の長ガルングルンとの対面を終えたファウスタは、次はドワーフ族の長ルフタと対面することになった。


 ハルラエスの部下の吸血鬼に連れられて、すぐにルフタがやって来た。


「ファウスタ様、タニス様、お初にお目にかかります」


 ルフタはとても愛想の良い笑顔で、ファウスタたちに恭しく礼をとった。


「ドワーフ族の長ルフタでございます。お目にかかれて光栄に存じます」


 ルフタは人間の大人よりは少し背が低く、しかし肩幅ががっしりとした頑健な体つきだった。

 ごわごわした鉄錆色の髪で、顔は髭もじゃだったが、人間の中流の紳士のような服装に身を包んでいる。

 小洒落た上着を着て、シャツにはタイを結んでいた。


「ファウスタ・フォーサイスです。お会いできて嬉しく思います」


 ファウスタが挨拶をすると、ルフタはますますの笑顔を浮かべた。


「おお! これはこれは、ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、ファウスタ様にようやくお会いすることができて感激しております。いつも大変お世話になっております」


(お世話に?)


 ルフタのお世話をした覚えがないファウスタは疑問符を飛ばした。


「タニス様にもお会いできて嬉しい限りでございます。タニス様にもいつも大変お世話になっております」


 ルフタはにこにこの笑顔でタニスにも同じような挨拶をした。


「私はお前の……あ、いや、ルフタ殿のお世話をした覚えはありませぬぞ?」


 ルフタの態度があまりに友好的なので、タニスは少し気を抜いてしまったのか、失言をしそうになりながら問いかけた。

 タニスのやや失礼な質問に、ルフタは満面の笑顔で答えた。


「終末竜バハムートと大海獣リヴァイアサンの模型で大変お世話になっております。大変良い仕事をご依頼いただき、ドワーフ村の村民一同、大感謝しております」


「ああ、あの怪獣の模型……。ドワーフ族が作っているのですか?」

「はい。我々が制作しております。模型の制作は、ドワーフ族なら女子供にも出来る仕事でございます。良い内職を得たとドワーフ村の皆が大喜びでございます」


 タニスとルフタの会話を聞いて、ファウスタは思わず驚きの声をあげた。


「怪獣の模型は、ドワーフの皆さんが作っていたのですか!」

「はい。ファウスタ様のおかげさまでございます」


(本物のドワーフが作った模型だったなんて!)


 霊能者ファウスタが監修したという触れ込みで、マグス商会から売り出されている終末竜バハムートと大海獣リヴァイアサンの模型は、本物のドワーフ族が作った模型だった。

 ファウスタも献品で一体ずつ貰って、部屋に飾っている。


(怪獣より、ドワーフが作っていることのほうが凄いことじゃないかしら?!)


 怪獣は模型だが、ドワーフ族は本物の魔物だ。

 本物の魔物が作った模型だということのほうが、偽物の怪獣より凄いことのようにファウスタには思えた。


「さらに追加の注文と、新たに猫妖精(ケットシー)の模型もご依頼いただき、誠に感謝しております」


 ルフタは、商人がお得意様に愛想を良くするようにして言った。


「模型の注文をいただけるのは、すべてファウスタ様のご活躍のおかげでございます。ファウスタ様の人気のおかげさまで大売れしておりますからな。ドワーフ村の者たちも皆、ファウスタ様の大ファンでございます!」


 ルフタはにこにこの笑顔で滑らかに語った。


「怪獣と猫妖精はタニス様のデザインだとお聞きしております。全く素晴らしいセンスをお持ちですな。タニス様のセンスには感服いたしております。さすがは天才の名を欲しいままにした伝説の魔女。センスも抜群ですな。いやあ、素晴らしい!」


(ルフタさんのこれは大人の話術じゃないかしら?)


 調子の良いルフタに、ファウスタは大人の話術の雰囲気を察知した。


「ファウスタ様とタニス様は、古竜(エルダードラゴン)様からご加護をいただいたとお聞きいたしました。心よりお祝い申し上げます」


 ルフタは臣下のように、ファウスタとタニスに恭しく礼を取った。


「ファウスタ様とタニス様をお選びになるとは、古竜様はさすがお目が高い。ドワーフ村一同、お二人が古竜様の加護を得られたことを喜んでおります」


「……ルフタ殿……」


 ルフタの調子の良い語りを、しばらく黙って聞いていたタニスが口を開いた。

 タニスは何かを訝しむように眉根を寄せていた。


「ルフタ殿は、本当に、ルフタ殿でありますか?」

「はい。私めがルフタでございます」

「ルフタ合金を開発したルフタ殿でありますか?」

「おお! ルフタ合金をご存知でいらっしゃるとは、さすがはタニス様でございます」

「当然知っています。私の魔力光線砲(エーテルレイガン)を弾き返した魔力盾(エーテルシールド)は、ルフタ合金でしたからね」

「はっはっは……! いやあ、お恥ずかしい。そんなものを作ったこともありましたなあ」


 ルフタは少しぎこちない大笑いをした。


「戦争は終わりました。今は皆、友人でございます。仲良くいたしましょう。今後ともドワーフ村をぜひぜひよろしくお願いいたします」


「私の魔力光線砲を弾いたことを怒っているわけじゃありません。あれはなかなか興味深い代物でした」

「いやあ、お恥ずかしい。私の開発など、『狂った鍛冶屋』の異名を持つタニス様の足元にもおよびません」

「……」


 タニスは少し不思議そうな顔をして、ルフタに質問した。


「怪獣の模型の制作は、そんなに儲かっているのですか?」

「そりゃあもう! 大儲けです! 今後ともどうぞよろしくお願いいたします!」


(ドワーフ族は儲けているのね。やっぱり大人の話術だわ)


 儲け話が絡んでいることが解り、ファウスタはルフタが大人の話術を駆使していることの確信を得た。

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タニス氏さすがの二つ名
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