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お化け屋敷のファウスタ  作者: 柚屋志宇
第6章 大占い師と予言の詩

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575話 一連の怪奇現象について

「大蛇ですか……」


 ラヴィニアは深く思案するようにして目を伏せ、難しそうに眉を少し歪めた。


「ファウスタ様がおっしゃるのであれば、大蛇がいるのでしょうね……」

「タレイアン公爵夫人の大蛇だけじゃないわ」


 オクタヴィアもまた考えるような顔をして言った。


「ファウスタは即位記念祭の日に王族の霊視をして、他にも色々と視ているの。アイザック王子殿下は真っ黒で、アントニア王女殿下は黒い霧を纏っていたわ。ファウスタに描いてもらった絵があるのだけれど……」


 オクタヴィアは少し残念そうに小さく笑った。


「こういう話になるのならファウスタが描いた絵を用意しておけば良かったわ」

「拝見させていただけますの?」

「ええ、もちろんよ。でもファウスタが描いた絵はすべて父が買い取ったので、父に借りなければならないの。明日以降であればご用意できるわ。明日以降で、またうちにいらっしゃれる日はあるかしら?」

「明日でもよろしいのですか?」

「もちろんよ。ラヴィニアさんのご予定さえよろしければ、いつでもかまわなくてよ。私は作法学校へは行っていないから時間には融通が利くの」


 オクタヴィアは悪びれずに言った。


「私も、作法学校を退学いたしましたので時間はたっぷりあります」


 ラヴィニアは苦笑した。


「新年まで予定はガラ空きです」






「私は祖母から王家の話を聞いて、今年の、警視庁の怪火ミステリー・ファイヤー事件に始まる一連の怪奇現象は繋がっているのではないかと思いましたの。オクタヴィアさんからファウスタ様の秘密を教えていただいて、さらに確信いたしました」


 ラヴィニアは事件を推理する探偵のように、知的な眼差しでオクタヴィアに語った。


「ファウスタ様の出身のラシニア孤児院は、寄付金横領事件で話題になった王立孤児院です。タレイアン公爵夫人が理事を務めていらっしゃいました」

「そうね。横領の真犯人ドスト男爵はまだ逮捕されていないけれど……」


 オクタヴィアは知らなかったが、ラシニア孤児院の寄付金が横領されていることに気付いたのはオクタヴィアの母マークウッド辺境伯夫人ヴァネッサであり、横領を女王に知らせたのは父マークウッド辺境伯だった。


 そしてヴァネッサがラシニア孤児院での横領に気付くきっかけを作ったのは、守護霊ティムに見出されてファンテイジ家のメイドとなったファウスタだ。

 ファウスタの肉料理への渇望が、出身のラシニア孤児院への疑惑を生み、料理人ハミル夫人と侍女ヘンリエタがそれをヴァネッサに伝えたことが発端だった。


 さらに、オクタヴィアがファウスタとの関係を盤石にするためにジゼルとピコを取り込もうと企んだがゆえに、この屋敷に来たピコが、従僕だった吸血鬼ダミアンに付き添われてラシニア孤児院元院長ジュード・カニングに会いに行ったことで、ダミアンが事件の真相を知り、それが警視庁の怪火事件と後の天罰報知の発行に繋がったことなどオクタヴィアは夢にも知らなかった。


「運営費を横領されていた孤児院にいらして、貧しい暮らしをなさっていたファウスタ様も、いわばタレイアン公爵家の被害者の一人です。全くの無関係ではありません」

「たしかに関係あるといえば、あるわね。ラシニア孤児院の院長が逮捕されたことにファウスタはショックを受けていたわ」

「オクタヴィアさんは、ラシニア孤児院の院長だったジュード・カニング氏の暗殺未遂事件があったことはご存知ですか?」

「天罰報知で読んだわ」

「そうです。天罰報知で報じられていました」


 ラヴィニアは少し瞑想的な表情をした。


「私は、トトメス氏の幽霊が我が家に現れたことを知っていて、そのときにはもう祖母から王家の話も聞いておりました。ですから……あの新聞、天罰報知を見て、ぞっとしましたの」


 少し歪んだ微笑を浮かべてラヴィニアは言った。


「王配殿下とトトメス氏が事故死された当時は、ちょうど、警視総監がグロス男爵に交代した頃だったのです」

「そうなの?!」


 新聞『天罰報知』に掲載されていた記事は、警視庁の不正を暴くものだった。

 当時の警視総監グロス男爵が、新世紀派という宗教団体から違法な接待を受けていたことが大々的に暴かれていた。


 そして内務大臣と王都知事は、警視総監だったグロス男爵に不信任を出した。

 事件の調査を怠り王都民の信頼を裏切っているという理由での不信任であったが、天罰報知により警視庁を糾弾する世論が高まったことがその背景にある。


「グロス男爵が二十年も警視総監だったと知って……。二十年前といえばちょうど王太子殿下のご成婚がありましたから、もしやと思い、調べましたの。王配殿下が薨去なさる少し前にグロス男爵は警視総監に就任していました」

「……今、ぞっとしたわ……」


 オクタヴィアは寒気を覚えたように両手で自分の肩をさすった。


「トトメスの幽霊に、天罰報知に、グロス男爵の失脚……。なんだか、繋がっているみたいに思えて来たわ……」

「ファウスタ様もです。ラシニア孤児院出身でいらっしゃるなら無関係ではありませんわ」

「ねえ、ラヴィニアさんは『王冠の歌』ってご存知?」


 唐突に顔をあげてそう言ったオクタヴィアに、ラヴィニアは少しだけ戸惑うようにして答えた。


「いいえ……」

「ファウスタの部屋にトトメスの幽霊が現れて、その歌を歌っていたらしいのだけれど……」

「トトメス氏の幽霊が?」

「ええ、そう。でもその歌、子供たちの間で今とても流行っているんですって。歌の歌詞が凄いの。三人の王族が消える未来が暗示されてるとしか思えない歌詞なのよ」

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新世紀派ってのは結局何者なんじゃろなあ……?ワクワクすっぞ!
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