十六話
はぁ〜っ。
昨日も大変だったな。
昨日も朱鷺田さまからチップ代わりににほっぺにキスを頂いてしまった。
キスされたところが熱を持ったように熱い。
別に好きだというほどではないだろうが、やっぱり可愛くて、天然っぽくて本当に気になる存在だ。
「お兄。何キモい顔してるの?」
弥生はあい変わらず呆れた表情を浮かべている。
笑顔にしてれば天使のように、いや、天使より可愛いのに。
「キモいのは元々だ。俺も弥生みたく、母さんに似たかったな。」
そう、俺はオヤジ似だ。
だから、多分将来はハゲるだろう。
「いや、別に顔のつくりの話じゃないから。なんだかダラシない顔しててバカに見えるよ。」
弥生は長袖Tシャツに短パン姿だが、短パンでから伸びる足は長くて本当に綺麗だ。
‥‥ってまた無意識のうちに目で追っていたのか?別にエロい目で見てはいないと思いたい。
「いや、昨日は忙しくて疲れてるんだ。家の中でくらい気の抜いた顔くらいさせてくれよ。」
俺は抗議の声を上げたが、あっさり躱された。
「どうでもいいけど、早く食べ終わってよ。くだらない話で学校に遅れちゃう。」
そんなこんなで急かされながらも家を出て、無事に学校に着いた。
「おいっ、橋本。聞いたか?転校生が来るらしいぞ。」
教室に入ると、おはようを言う前にトモヤが食い気味で話しかけてくる。
「えっ?こんな中途半端な時期にか?もしかして、前の学校で何か問題起こしたんとかじゃないのか?」
そう、このタイミングで転校なんて、はっきり言っていい予感がしない。
「それは分からないけど女の子らしいぜ。」
どうでもいいが、トモヤ、なぜ小指を立てる?
「でも、ミサミサ以外は興味ないんだろ?」
そう、トモヤはどうせクラスの女なんて興味ないはずだ。レイヤードのミサミサが大好き過ぎるからな。
「いや、転校生とかイベントとしてはおもしろいからな。橋本の好きなゲームみたいに可愛い転校生が来るかもしれないぜ。」
トモヤは何故だかテンション高めだ。
ちなみに本当にゲーム通りなら、既に登校の時に、パンをくわえてぶつかってきていないといけないから、このイベントのフラグは不成立だ。
「みんな、早く席に着いて、着いて。今日は転校生が来たんだからね。」
本当に20代後半なのか疑わしい、小学生にしか見えない女教師が両手をブンブンと振っている。
そう言う仕草が余計に幼く見えるからやめて欲しい。だって頭をナデナデしてあげたくなるから。
平野先生は人気がある先生だ。
リオちゃんとか生徒に下の名前で呼ばれているのはどうかと思うけどな。
「さぁ、入って。」
平野先生の声に応じて、セーラー服姿の女の子が入ってくる。たぶん、急な転校で制服が間に合わなかったんだろう。
そして、教卓の前に来て俺たちの方に向き直った彼女を見て気を失いそうになった。
だって、目の前に黒縁のグルグル眼鏡(漫画でしかみたことのないタイプ)をかけた地味な女の子が立っていたのだから。




