「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまでした。」
店を出たところでペコリと頭を下げる。
「どういたしまして。」
レジのところでお財布を出そうとしたらそっと止めるような仕草をしてから「先に外で待ってて。」と言われ、そのままご馳走になることに。申し訳ない気持ちもあるけど、ここで無理にこちらからお金を払ってしまうのも却って失礼になりそうだから。せめてお礼にお茶でもご馳走しなくちゃね。
「さて、どこか行きたいところは?」
「そうね。どうしようか?」
アイスを半分こして食べてから、ちょっと気持ちがほぐれた気がする。私も原田君も敬語がほんの少しだけ緩んできた。
「近くのショッピングモールでプラプラしようか?」
「はい!」
ショッピングモールに着くと、かわいい雑貨屋さんやアクセサリーショップに目が行く。あ。でも男の人にはつまらないわよね。
「ここ、入ってみようか?」
「いいの?こういう店、平気?」
私がキョロキョロしていたら、雑貨屋さんの前で原田君が言った。
「妹で慣れてるから大丈夫だよ。」
あ。妹さんがいるんだ。
「妹さん、何歳?」
「大学二年生。楓花さんの一つ下。」
なるほどね。兄妹の仲が良いみたいね。
「かーわい~!」
思わずクッキーの道具を手にする。動物の型もかわいいけど、陶器製のクッキースタンプがこれまた可愛くて、思わず声をあげてしまった私。持ち手がウサギでスタンプはクラウンなの。クラウンの模様の入った丸いクッキーなんて、想像するだけでもワクワクしちゃう。
「お菓子作ったりするの?」
「うん。たまに。」
「じゃあ、今度焼いてきて。」
ん?今度?
言うが早いか、原田君は私の手からそのスタンプを奪い取り、レジに向かう。
「プレゼントさせて。」
そして原田君は可愛い袋に入ったそれを私に差し出した。
「え?そんな…。」
「今度クッキー焼いてくれればいいから。」
いやいや、見ず知らずに毛が生えた程度の相手からこんな風にいただくワケには。お昼ご飯だってご馳走になってるし。
「いや、でも…。」
「じゃあ、お願いってことで。」
控えめだか強引だかわからない人だなあ。