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第一話  末位の空

皆さんこんにちは。ぱぽいやです。

人生で初めて書く小説なので、誤字や脱字が見られることがあると思いますが、温かい目で見守ってくれると幸いです。

投稿頻度は不定期になりますので、ご了承ください。

楽しみにしていただけるような小説が書けるように頑張っていきますので、応援の程よろしくお願いいたします。


2XXX年。日本は変わった。


 ある朝突然、八百万の神が目覚めた。いや、正確には「戻ってきた」と言うべきかもしれない。神々はそれぞれの居場所を探し、たどり着いたのが——日本人が代々受け継いできた「苗字」だった。


 山田という苗字には山の神が。渡辺という苗字には川の神が。鬼頭という苗字には鬼神が。それぞれの漢字の意味に従って、それぞれの神が宿った。


 そしてその日から、人間は変わった。


 苗字の神が宿った者たちは、その字義に応じた力を手に入れた。山田の人間は岩を砕き、小川の人間は水を操り、鬼頭の人間は一睨みで相手を地に伏せることができるようになった。人類は超人になった——と、教科書にはそう書いてある。


 でも全員じゃない。


 俺たち佐藤は、違った。



 「佐」は補佐する者の字だ。主役を支える脇役。「藤」は蔓植物、地を這う草だ。どちらも戦いに向かない、力に向かない字。しかも佐藤という苗字は、この国で一番多い。約一千九百万人。一千九百万人に神の力が薄く薄く分散して、一人ひとりに届く霊力はほぼゼロに近い。


 だから俺たちは「末位」だ。


 末位というのは、ランクの名前だ。この国には苗字によってランクが決められている。神位・壱位・弐位・参位・末位の五段階。上のランクほど広い家に住み、いい仕事に就き、いい場所で暮らせる。


 末位は違う。


 住んでいいのは都市の外縁、行政が「末位区」と呼ぶ場所だ。街中はインフラも十分に整備されておらず、くすんだ空気に包まれている。学校の教科書の「将来の職業一覧」には、末位のページだけ空白が多い。清掃、解体、土木——そういう仕事だけが許されている。


 参位以上の区には入れない。許可証がなければ、入口のゲートで止められる。


 「苗字をお見せください」


 ゲートの係員はそう言う。IDカードをかざすと、苗字のランクが光る。末位の青。その瞬間、係員の顔が変わる。


 「末位の方はこちらからお通りいただけません」


 丁寧な言葉で、追い返される。毎回そうだ。


 これが俺たちの日常だ。



 今日もそうだった。


 朝、末位区の路地を歩いていると、後ろから声がかかった。


「おい、佐藤」


 振り返らなくてもわかる。山本 拓也だ。山本は参位の苗字であり、山の神が宿った「山」の字は、足場を固め、岩のような防御を生む。拓也はそれを使って末位区の連中をよく脅していた。


「今日の荷運びまだ終わってないのか。末位がうろうろしてんじゃねえ」


 返事をしなかった。


「聞こえてんのか、佐藤」


 肩を掴まれた。振り払うと、山本の目が細くなった。


「やるか?お前が?佐藤が?」


 周りに人が集まり始めた。参位の連中、末位の人たちもがみんな同じ目をしている。蔑み、というより——最初から人として見ていない目だ。


 山本が右手を持ち上げた。地面がわずかに震えた。「山」の力だ。


「ランクをわきまえろ、末位が」


 地面から小石が浮き上がり、俺の頬をかすめた。痛みより、周りの笑い声の方がずっと鋭かった。


 誰も止めない。


 末位がやられているのは、当たり前の風景だから。



 その日の夜、末位区の端にある空き地で、俺は空を見上げていた。


 星はよく見える。末位区は街灯が少ないから、皮肉なことに夜空だけは綺麗だ。


 隣に人の気配がした。


「また喧嘩か」


 佐藤 蒼。幼馴染だ。俺と同じ苗字、同じ19歳。子どもの頃は一緒に「強くなろう」と言っていた。でも今の蒼の目には、あの頃の光がない。


「喧嘩じゃない。一方的にやられただけだ」


「同じだろ」蒼は地面に座った。「翔、やめとけよ。刃向かっても何も変わらない。俺たちは末位だ。それだけだ」


 俺は何も言わなかった。


 蒼が続ける。


「去年のランク戦、覚えてるか。佐藤の代表が出て、一回戦で秒殺された。みんな笑ってた。それが現実だ。俺たちが何をしても——」


「蒼」


 俺は遮った。


「お前は、このままでいいのか」


 蒼は黙った。


 俺は立ち上がった。夜空を見たまま、ゆっくり息を吸った。


「俺はよくない。このランク、この区画、このルール。全部、誰かが決めたことだろ。神が決めたんじゃない。人間が決めた。だったら、人間が変えられる」


「どうやって」


「頂点に立つ。ランク戦で勝ち上がって、神位に就く。そこにいる奴だけがルールを書き換えられる。だから俺が行く」


 しばらく沈黙があった。


 蒼が小さく笑った。呆れたような、でも少しだけ違う色の笑いだった。


「佐藤が、神位に」


「ああ」


「馬鹿だな、お前」


「知ってる」


 俺は空を見た。星が遠かった。でも見えていた。


 佐藤 翔。末位。


 それが、今日までの俺の全部だ。


 俺たち佐藤の物語は、ここから始まった。

ご覧いただきありがとうございました。初めて書いた小説ということもあり、至らない点も多かったかと思いますが、最後まで読んでいただけたこと、本当に嬉しいです。

これからも引き続き書いていきますので、応援していただけると励みになります。


次話もよろしくお願いいたします。

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