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タイトル未定2026/05/01 00:20

目の前には身長3メートルの巨大なモンスターがいた。ピンク色の体に石のメイスを手に持ち、猪のような顔に牙が生え、毛はなく、下半身は獣の皮で辛うじて覆われていた。領域に踏み込んできた四人の人間を見て苛立ちを露わにし、鼻から荒い息を吐き出した。


「なんなのこれ、なんで人間みたいに立ってるの!」


「オークはモンスター種族の一つです。見た目は醜く恐ろしく、気性が荒くて攻撃的なので気をつけてください。体もとても頑丈ですから」


フェアリスの言葉が終わるや否や、巨大なオークが即座に襲いかかってきた。ワーンは素早く前に踏み出した。オークが石のメイスを振りかぶる間もなく、ワーンは跳躍してオークに向かって飛び込み、胸に渾身の拳を叩き込んだ。内側から圧力が炸裂し、オークの背中に穴が開いた。そのまま崩れ落ち、体は握り拳の半分ほどの魔法石へと変わった。


「拳一発でオークを倒したの!」


フェアリスは冷や汗をかいた。二人の異世界人の実力をどう評価すればいいのか、まったく見当がつかなかった。顔を流れる汗を手で拭い、目の前の光景に体が固まって身動きが取れなかった。


「異世界人、なかなかやるわね」


マリアは無表情でそう呟き、ワーンの傍らを通り過ぎ、奥の扉へと向かってそれを開け、仲間を次の階へと促した。


「早く来て、フェアリス。先に進みましょう」


部屋の奥には下へと続く階段があった。ワーンとホクトが先に降り始め、フェアリスは恐怖を心の奥に押し込めながら正気を取り戻し、震える手で大きな魔法石を拾い上げた。


階段を降りると、一同は驚きを隠せなかった。ダンジョンの様相が一変していた。紫色の水晶が壁に輝く洞窟となっており、そこで待ち受けていたのは直径1メートル、深緑色の巨大なスライムだった。


「あれはポイズンスライムです。Cランクの魔獣ですが、毒を持っているので気をつけてください」


警告を受けたワーンとホクトは距離を取った。スライムたちはぴょんぴょんと跳ね回りながら、緑色の酸性液体を吹きかけてきた。距離があったおかげで酸の速度が落ち、難なく避けることができた。


二人は遠距離攻撃を選んだ。ワーンは「破天鳳拳」でスライムを次々と攻撃し、ホクトは空中で刀を一閃させ、風の刃を放ってスライムを真っ二つに切り裂いた。前の部屋よりも時間はかかったが、全滅させることができた。


「あなたたち二人、本当に凄いわね。これだけ大勢の魔獣を、傷一つ負わずに倒してしまうなんて」


「そんなことないですよ、マリアさん。まだ強い相手には当たっていませんから」


ホクトが短く答えた。一同は洞窟の通路を歩き続け、突き当たりに階段を見つけ、さらに下へと降りた。


次の部屋は七階層目だった。まだ洞窟の広間の中にいると、ワーンは壁の上部の石が放つ光に反射する赤い光点が大量にあるのに気づいた。やがてそれが姿を現した。大猫ほどの大きさのネズミが数十匹、群れをなして一同に向かって突進してきた。


ワーンとホクトは顔が青ざめた。大猫サイズのネズミの群れが自分たちに向かって押し寄せてくる。先頭に立っていたマリアが片手を前に差し伸べた。

「ヘルファイア」


マリアの体に光が宿り、手から炎が噴き出した。炎は洞窟全体に広がり、逃げ場を失った巨大ネズムの群れへと突進した。ほんの数秒で、全ての巨大ネズミが焼き尽くされ、床に魔法石の山だけが残った。


マリアはそのまま歩き続けた。二人の異世界人はマリアの魔法の力を前に口を開けたまま立ち尽くした。我に返るとすぐに後を追い、フェアリスが震える手でドロップアイテムを全て拾い集めるのを待ってから、奥の鉄の扉をくぐった。扉は開いたままになっていた。


「中に冒険者がいるようですね。彼らがボスを倒し、次のリポップを待ちましょう」


「え!再出現するんですか?」


フェアリスは各ダンジョンについて説明した。魔獣が倒されると、ダンジョンによって新たに生成される。早ければ1時間、遅ければ3時間など、ダンジョンによって異なる。


「じゃあ帰り道もまた戦わないといけないの!」


「その必要はないですよ。ボスの部屋には必ず転移魔法陣があって、最上階まで直接戻れますから」


二人の異世界人はこくこくと頷いた。来た道を戦いながら戻らなくて済むと知り、胸を撫で下ろした。そうでなければ、魔獣にやられてしまう前に力尽きていただろう。


ボスルームから男女の悲鳴が轟いた。ワーンとホクトは躊躇なく駆け込んだ。4人の冒険者が危機に瀕していた。全身を鉄の鎧に包んだ青い巨大な怪物がいた。身長は4メートルほど、牛のような顔に湾曲した牙と鋭い角を持ち、鉄の大剣を頭上に掲げ、傷ついた女性魔法使いに振り下ろそうとしていた。


彼女の顔は恐怖で真っ白になり、今にも気を失いそうだった。座り込んだ場所の周りには液体が広がっていた。ホクトはギリギリのところでその攻撃を剣で受け止めたが、怪物の怪力に体がずるずると押し下げられた。


「ホクトさん、気をつけて!あれはミノタウルスです。Bランクの魔獣で、かなり強いですよ!」


ワーンはホクトの肩を踏み台にして跳躍し、後ろから現れた。拳が光を帯び、渾身の力でその顔に叩き込んだ。だがミノタウルスは片手でその攻撃を受け止めた。それでも拳の威力は十分強く、怪物は数歩後退した。


「フェアリス、あの人たちを外に逃がして!」


ワーンが命じたが、すぐに息をのんだ。ホクトの刀が自分に向かって振り下ろされてきたのだ。ワーンは間一髪で躱した。


「何するの、ホクト!何考えてるの!」


「ちょっと!私の肩を踏み台にしたわね!」


フェアリスは最悪のタイミングで頭を抱えた。二人は自分たちの戦いの最中に口喧嘩を始めていた。深く息を吸い込んで勇気を振り絞った。


「二人ともちょっと止まって!後ろの奴を先に気にしなさい!」


フェアリスが叫んだ。ミノタウルスがゆっくりと向き直り、轟音のような咆哮を放った。フェアリスは近くに転移魔法陣があるのに気づいた。傷ついた4人を急いで魔法陣まで引きずり、魔力を込めて起動させた。眩い光が溢れ、4人の冒険者の姿が消えた。


ダンジョンの入り口に、4人の冒険者が現れた。今や多くの冒険者がこの新しいダンジョンに集まっており、その情報を収集してモンスター、階層数、危険度を告知するためのギルドの職員も待機していた。


冒険者たちは急いで怪我人を助け、治療を施した。


「Cランクの冒険者パーティがこんな有様に!いったい何があったんだ」


治療が施されて状態が落ち着くと、皆が口々に尋ねた。中で何があったのか、なぜこれほどの重傷を負ったのかを。


「ボスルームにミノタウルスがいたのか?」


「はあ!?ほぼAランク相当のBランク魔獣がいたって!?」


冒険者たちは興奮して詰め寄った。なぜ全員生きて戻れたのか尋ねると、彼らはワーンたちが助けに来てくれたこと、そしてミノタウルスを吹き飛ばしたことを語った。


「鎧も魔道具も身につけていない女性たちがいたのか。いったい何者だ?どのランクの冒険者なんだ?」


誰にも答えられなかった。冒険者たちはただ祈るばかりだった。彼女たちがこの新ダンジョンを最初に攻略し、無事に戻ってくることを。


「気をつけてください、魔法が使えます!」


フェアリスが叫んで警告した。ワーンとホクトは4メートルの巨体を見上げた。全身鉄の鎧に包まれ、大剣を手にし、しかもワーンの攻撃を受け止めるほど素早い。その赤い瞳は不気味だった。再び咆哮を上げると烈風が起こり、全員の髪が激しくなびいた。


剣の切っ先をワーンに向け、雷撃魔法を放った。彼女は間一髪で躱し、床が大きく抉れた。回避されたと見るや、ミノタウルスは雷撃を連続で放ち続けた。二人の異世界人は必死に走って躱した。フェアリスに流れ弾が当たらないよう、彼女の近くには逃げ込まないよう気をつけながら。


攻撃が外れ続けると、巨獣は怒りで大地が揺れるほどの咆哮を上げた。その眼が赤く輝き、片手を前に差し伸べると、巨大な火球が掌の上に現れた。


「あれはファイアボールの魔法です!直撃したら即死の可能性があります、全員気をつけて!」


二人の異世界人は慎重に構えてミノタウルスの攻撃に備えたが、その標的はフェアリスへと変わった。


金髪碧眼の少女は動けずに立ち尽くしていた。目を見開き、魔獣が自分に向けて放とうとしている魔法から逃げられなかった。


火球が巨獣の手から放たれ、猛烈な速さでフェアリスに迫った。ワーンがフェアリスの背後に現れ、両腕を脇の下に差し込んで彼女を抱き寄せ、魔法の一撃から引き離した。爆発音が轟き、二人はギリギリのところで難を逃れた。


「終わらせるわ」


ホクトはミノタウルスの隙をついて背後に忍び寄り、高く跳躍して刀をその首筋に渾身の力で振り下ろした。


「何よこれ!」


刀は首に届かなかった。白いオーラの光が現れ、刃がオークキングの肌に触れるのを阻んだ。


「バリアの魔法で体が守られてる!」


フェアリスが叫んだ。巨大な魔獣が振り返り、宙に浮いていたホクトに向かって裏拳を叩き込んだ。女剣士は刀を上げてその一撃を受け止めたが、凄まじい力に体がボスルームの壁まで吹き飛ばされた。


ホクトは体を翻して足で壁を蹴り、全力で魔獣へと突進した。刀でその首を狙ったが、やはり白いバリアを破ることはできなかった。


「くっ、まったく効かない!」


巨大な魔獣はホクトに向かって剣を振るい続けたが、その大剣は一度も彼女に触れることができなかった。攻勢に立ったと思い込み、矢継ぎ早に攻撃を繰り出し続けた。


「動きは遅いのに、攻撃が一切通らない……」


ワーンはホクトを助けに行きたかったが、動けなかった。フェアリスから離れれば、魔法が彼女の命を奪いかねない。


「もう一度攻撃して。バリアを壊してあげる」


長い間静かに戦いを見守っていたマリアが口を開いた。ホクトは視線を合わせて無言で応えた。ホクトはミノタウルスを部屋の隅へと誘い込み、攻撃させ続けた。一方ワーンはフェアリスへの流れ弾に細心の注意を払った。


マリアはミノタウルスに指を向けた。指先から白い光の筋が迸り、その体へと向かった。


「アンカバー」


Bランクの魔獣の体にマリアの魔法が当たった瞬間、体を包んでいた白いバリアがガラスのように砕け散った。まるで水の入ったコップが床に落ちたような、硝子の割れる音が響き渡った。


「今よ、ホクト!」


ワーンが叫んだ。固唾を飲んで見守っていたフェアリスは目を疑って、思わず手で目を擦った。ホクトの体が薄れていき、一人から二人へ、二人から三人へ、三人から四人へと増えて、ミノタウルスを取り囲んでいくように見えた。


巨大な怪物は混乱して左右を見渡したが、どれが本物のホクトなのか判断できなかった。それだけしか考える間もなかった。その首が体から落ちた。本物のホクトは背後に立っており、全力で首に刀を振り下ろしていた。


フェアリスは口を開けたまま、ミノタウルスの首がダンジョンの床を転がるのを見つめた。濃い青の血が長く尾を引いた。


体が徐々に消えていき、古びた木の宝箱が現れた。


ワーンは顔をほころばせて歩み寄り、中には大量の金貨があるだろうと胸を弾ませながら蓋を開けた。中身を見た瞬間、笑みが消えた。


「何これ、命がけだったのに、服しか入ってないじゃない!」


持ち上げてみると、フェアリスが着ているのと似た魔法使いのローブだった。改めて見ると、生地はかなり上質だった。ワーンはフェアリスに当ててみると、ちょうど彼女のサイズに合いそうだった。


「あなたの服、ボロボロじゃない。これに着替えたら?」


ホクトもワーンと同じ意見だった。フェアリスの服は確かに古くてくたびれていた。フェアリスは顔を真っ赤にした。二人に自分の服がみすぼらしいと言われて、恥ずかしさで消え入りそうだった。


「売った方がよくないですか?ダンジョンのボスドロップだから、高値がつく魔法のローブかもしれませんよ」


二人の異世界人は首を横に振った。すぐに着替えるよう強制するつもりはなかった。フェアリスは断りきれずに受け取った。ワーンとホクトは恥ずかしげもなく彼女に背を向けた。


フェアリスが準備完了の合図を送ると、二人は振り返って新しい魔法のローブを眺めた。純白の色がフェアリスにとてもよく似合っていた。

壁が動く音がして、ボスルームの奥に隙間が生まれた。さらに下の階へと続く通路が現れた。


「まだ先があるの?」


「もう十分よ。上に戻りましょう」


マリアが制した。先に進むことには同意できなかった。


「ミノタウルス一体相手でもあの有様だったで

しょう。下に行けばもっと強い相手が待っているはず。もっと準備を整えてからまた来ればいいわ」


全員がマリアの言葉に頷いた。先に進まないことに決めた。フェアリスは全員を魔法陣に誘導し、魔力を込めて起動させた。ダンジョンの入り口に出ると、冒険者たちが歓声を上げた。入っていた時よりも大勢の人が集まっていた。


「ごきげんよう。私はこの王国のギルドの職員です。このダンジョンについて少しお伺いしてもよろしいですか」


フェアリスは魔獣の種類やドロップ品を順序立てて説明した。外で待っていた冒険者たちは、フェアリス、ワーン、ホクト、そしてマリアに強い関心を示し、様々な質問を浴びせてきた。


「あなたたちは何ランクの冒険者なんですか?ミノタウルスを倒したなんて」


「私たちはまだ冒険者じゃないんです。登録しにエールの街に向かっているところで」


一斉に驚きの声が上がった。このままでは根掘り葉掘り聞かれ続けると察して、フェアリスは丁寧に挨拶をして別れを告げた。


「では旅を続けましょう」


一行はエールの街へと旅を再開した。最後尾を歩くフェアリスはマリアの後ろ姿から目を離せなかった。マリアが魔法を使う様子を見て、心に疑問が芽生えていた。他の人間と、何かが違う。

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