事件録は1日1項とは限らない
それからは特に大きなトラブルも起こらずに、パーティ講習は終了。
そこから大体10分位経って、今。
「ごほっ……お゛え、ぐっ」
「なあ!おい!お前!おいおいおいよお!?」
「うわぁぁぁん!!」
「いやね、私も確かにそんなことを言った覚えはあるわよ?でもあれは動揺していたせいというか。いえ嘘ではないのだけれど。催促のつもりもなくというか。深い意味で言った訳ではないんだけど。そんなことを覚えてたのは驚きと言うか、いえでもつまりどういうことなのか気になるのはそうなんだけど。でもそれはそんな意味じゃなくというか」
「手が足りませーん!誰か助けてくださぁーい!」
「是ぞ正しく極上の混沌である。誠最上の器たる者よ、やはり汝こそが我が権能を扱うに相応しい」
俺の目の前には、嗚咽してる人と、下衆い笑顔で叫んでいる人と、号泣してる人と、何か早口でブツブツ話してる人と、助けを求めて必死に叫んでる人と、恍惚の表情でうんうん頷いてるやつが居る訳なのですが。
凄いね。地獄絵図だ。
俺はただ、講習が終わると同時にカイを拉致して、セリナとカイをパーティに誘っただけなんだけど。
どうしてこんな状況になってんのか、因果関係がさっぱりだね。
経緯を思い出してみよう。そうすればこの場に混沌が巻き起こってる理由が何か分かるかもしれない。
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「えー……今回の講義は以上。お疲れ様でした」
と、やたらと疲れた表情でハンネスさんが宣言したと同時に、俺は動き始めた。
軽い足取りでカイに向かって一直線。視線を合わせて、警戒されぬようににっこりと笑ってから話し始める。
「ねえ、これからちょっと暇?」
とはいえ、流石に急に話しかけられて面食らった様子だったけれど、俺の交友的な笑顔に敵意はないと分かってもらえたのか、戸惑いながらもカイは頷いたので、ちょっと付き合って欲しい旨を伝えた所、これも快諾してくれた。
よし、じゃあ、ちょっと行こうか。
と、俺はカイのことを小脇に抱えて訓練場を後にした。
「ちょ!お前!先に説教させろ!ツバサァ!」
「あーばよ、副長のとっつぁ〜ん」
その背後から、副長のおっちゃんのそんな叫び声が聞こえて来たけれど、俺今やりたいことがあるから、また後でね。とそのまま去って行った。
大丈夫。まだ暴走中なのは自覚してるし、これが終わったら概ね暴走は終わると思うから、それまでちょっと待っててね。
ちゃんとありがたくご意見頂戴仕りに戻るから。それまではごめんね。
あ、ハンネスさんにも後でちゃんと俺のせいで普通の講習になんなくてごめんねって謝らないと。あの凄く疲れた表情って、講習中のトラブルが多かったって所もあるだろうけど、後半に俺がずっとにこにこしながらカイとディノを見守ってたことも原因だと思うし。
講習を受ける人達の背後でそうしてたから、一応被害は最低限になっただろうけど、その状況が見える位置に居たハンネスさんからすると、やり辛かっただろうなぁ。
同情する。本当ごめん。可能な限り甘味を奢ります。
副長のおっちゃんにはそれに回復魔法も追加しちゃう。全身もれなく健康体にします。
そんなことを考えながら、三角お目々副長のおっちゃんを引き連れながらギルド内で目的の人物を探す。
大凡の居る場所は把握していたので、直ぐに見つけることが出来ました。
「せーりーなーさーん」
目的の人物であるセリナに手を振りながら挨拶する俺。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!?」
その小脇に抱えられ、状況が把握出来ない混乱と抱えられながら走り回られる恐怖で号泣するカイ。
「せめてカイは離してやれよ!?」
と、至極真っ当なことを言いながら俺を追い掛ける副長のおっちゃん。
これ、大分状況がカオスだな。
はい、皆様。カオスとは、日本語で言うと“混沌”ですよね?
そう、混沌といえば、ヤツです。
「良質な混沌の波動を察知し、我、見参」
はい、黒色ベースにちょこっと金色な箇所が散見する雑な落書きを適当に書いたみたいな謎生物、麒麟もどきですね。
奴がぬるりと唐突に俺の横に現れましたと。
いや、今までは不意の遭遇戦ばかりだった訳ですけども。
今回は俺の暴走の結果こいつが現れた可能性が非常に濃厚でございますので、本件の罪に対して正当な罰が当たったというその因果関係は粛々と受け入れる覚悟でございます。
でも、ちょっとやだなぁって思うのは許して頂きたく候。
「貴方今度は何をしたのよ!?」
そして、俺の声に反応してこちらを見たセリナの第一声がそんな言葉になったのも、ええ、仕方のないことであったと、私めは把握しております。
誠にその通り。
しかし、今度はと言われましても、これまでは別段おかしなことをしようとしていた訳ではなく、非常に偶然の要素が強かった結果の事故に近いものが多かったので、手心を加えて頂きたい所存。
無理かな?無理だよなぁ。




