主人公、アクセルベタ踏み
まぁたトラブルかい。今まさにディノ少年がやらかしたばかりでしょうに。
そんな矢継ぎ早に続けなくてもええでしょうよ。
なんてことを思いながら、騒動の中心地に目を向けた。
そこに広がっていたのは、少年Aに押し倒される少年Bという光景だった。
おっと、背景は薔薇の花か?
……て、んな訳あるかーいってことで、ちょいと観察してみる。
少年Aが少年Bにタックルして、2人共倒れ込んだって感じだろうね、あれ、体勢的に。
なるほど、喧嘩だ。助太刀は必要かい?
てか、少年Aはさっきディノ少年に役立たずって言われてたフードの少年じゃん。
さっきに続いて今も君ですかい。もしや君、トラブルメイカーですか?
俺もそうらしいのよ。お仲間だね。
「お前達、何をしている!」
そんなこんな、現状を観察していると、ハンネスさんの叱責の声が飛ぶ。
それに即座に反応したのは、押し倒されている少年Bの方だった。
「ハンネス先生!俺何もしてないのに、コイツがいきなり!」
と、つまり手は出してないけど、口は憎たらしい程に出したと自白する弁明の言葉が。
いや、少年Bや、それ、虐めっ子が虐めてた奴にやり返された時の典型的な台詞だと思うの。
ほら、見てみ?あーたの腹の上で、ボロボロに泣きながら唸ってるフードの少年。尋常じゃない泣きっぷりぞ。
ちょっと言い方が悪いかもしれんけど、あれ、完全に激昂した虐められっ子だもの。
どう見ても何かしとるじゃん。
あーあーあー、ほら、あーたがそんなこと言うから、フードの少年が興奮しちゃって。
あ、ハンネスさん。引き離します?おっけ、俺も手伝う。
副長のおっちゃんも、それと他の大人もわちゃわちゃと集まって、2人を引き離す。
ほーら、暴れない、暴れない。
そんな感じで、フードの少年を落ち着かせようとしてた所、少年Bが大袈裟に叫び始めた。
「ったくさぁ!これだから黒髪はさぁ!」
おいよい、少年Bよ、そう煽るのはおやめなさいよ。
あーららら、ほら、フードの少年が丸まっちゃったもの。亀さんになっちゃったもの。
こりゃあ、落ち着くまで時間掛かるぞぉ。
「何もされていない人間がああなることは早々ないが、本当に何もしていない、と?」
フードの少年がこんな状態だからか、少年Bを隔離しながらの事情聴取が先に始まっていた。
ハンネスさんの質問に、少年Bは酷く不快そうな顔。
「はぁー?何その質問、ボーリョクされたのはこっちなんですけど?俺ヒガイシャだよ?」
すっげぇじゃん。シンプルに悪ガキの言い方じゃん。ちょっとあーし、あーたの将来が心配になっちゃうんだけど。
いいかい、B。暴力ってのは、いくつか種類があってだね?言葉の暴力ってやつも、しっかり暴力にカテゴライズされるもんなんだよ?
いや、実際に物理的に暴力を振るっちゃったフードの少年もいけないけど、そんな一方的にどっちが悪いって話にはできないかんね?
わっかるかなー?わっかんねぇだろうなー?
「ねえ、ハンネス先生!あんな危ないやつクビにしてよ!ボーリョクするんだぜ!?」
そんなことを思ってる間も、Bのまだ声変わりの始まっていない甲高い声が、止まらない止まらない。ロマンティック並みに止まらないんじゃないのあれ。
いやいや、Bよ、そんなにヘイトを稼ごうとしなくて平気だから。もう充分やってるよお主。
理屈だと喧嘩両成敗が妥当だってのは分かるけど、俺、あれ聞いてたらフードの少年に同情しちゃうもん。Bの方が悪い気がしてくるもん。
すっげぇなぁ。こんなに人の言動って、印象にギャップを生み出すもんなんだなぁって、ちょっと感心するもん。
「ねぇ、そこな少年や。あんなこと言われとるけど」
そんなことを思いながら、俺は先程、ディノ少年と副長のおっちゃんの会話の中で、カイと呼ばれていた、このフードの少年に声を掛ける。
ついでに肩を組んだら、その瞬間に痙攣したんかって位強くカイの肩が跳ねた。ちょーびっくり。擬音にすると、ビクゥッ!て感じだった。
んで、カイに話し掛けた俺を、目を見開いて凝視する大人達。え、そんなに見つめないでよ。恥ずかしいじゃん。
でも、副長のおっちゃんだけ、お前次は何をやらかすつもりだって顔してるのは、俺怒ってもいいかもしれなくない?
いや、分かる。貴方達の言いたいことは、概ね理解しているつもりですよ?ええ。
今この状況、カイが落ち着くのを、待つ時間だって。
ちゃんと話せる所まで落ち着かせて、何があったか、どうしてこんなことをしたのか、そこら辺をちゃーんと聞く所だったじゃんって思ってるんだよね?
うんうん、そうだと思う。確かに、それが常識的な対応だろうさ。
いや、でもごめん。分かってる。空気読まんくて悪いとは思ってる。でも本当ごめん。
駄目なんだ、俺。
悪い癖だって分かってる。だからもっかい謝る。
本当、悪いと思ってる。
でも、この暴走機関車のこと、俺じゃあ止められないんだ。
だって、俺ってば、このカイって黒髪の少年に対して、並々ならぬ興味を抱いてしまったんだ。
今すぐに話が聞きたくなって、しょうがなくなっちゃったんだ。




