軽い気持ちやった結果がこれだよ
ガルドボアの素材を回収して、さあそれでは村長に報告をする為に村に引き返そうとした所で、セリナが思い出したように口を開いた。
「あ、ねえ、ツバサ。まだ魔力には余裕はある?」
魔力と言われて、思い当たるのはオドのことだ。
詳しく話すとべらぼうに長くなっちゃうので一言で纏めると、オドとは内的エネルギー……ゲームで言う所のMPである。
厳密には違うんだけど、まあ魔法を発動させるのに必要って意味では同じようなものかな。
で、多分だけど響き的にそれを魔力って呼んでるっぽいので、その解釈で答えてみる。
「魔法だったら、まだまだ発動出来るよん」
「なら、ちょっともう一回探知魔法をお願いしてもいい?」
「おん。何を調べる?」
セリナの反応を見るに、当たってたみたいだ。
そのことに満足しながら詳しく話を聞いてみると、どうやら今回の依頼について、アフターケアを万全にしようと思ってるらしい。
今ミルデンの森では魔物が活性化している真っ最中。レッサードラゴンなる魔物が暴れてるせいで、魔物の分布がしっちゃかめっちゃかになっているそうな。
今回のガルドボアもそれが原因で森の外に出て来ちゃったんじゃないか。と、セリナは言っていた。
だったら、他の魔物もここら辺に移動して来てる可能性もあるだろうとのことで、周辺の調査をして、今後畑を荒らす可能性のある魔物が居ないか調べておきたいそうだ。
おーきーどーきー。
そういうことならちゃちゃっと調べてしんぜよう。
反動のない範囲で感知距離を広げて、広範囲ソナーをどん。
……緑の匂いが沢山。おや、人の気配。キョロキョロしてる。森を調べてるのかな?確か今日の依頼に調査依頼があったしそれだろう。
そこはスルーして、他に大きな生き物の反応は……うん、小動物ばっかだなぁ。あ、糞の臭い拾っちゃった。くちゃい。
これは我慢して、変な音も特になし。
およ、小鬼。元気に走り回ってるね。昨日見た小鬼も走ってたけど、趣味かな?
いや、昨日のやつは俺から逃げてたから趣味ではないんだろうけどさ。
なのでコレもスルーしようと思ったけど、よくよく考えたら、こいつらも畑荒らすし人を襲うな。一旦確認の為にセリナの方を振り返る。
「ゴブリンは居たけど、問題は?」
「ゴブリンは何処にでもいるから、関係ないわね」
「りょ」
成る程。あいつら何処にでも居るのか。どんだけ個体数多いんだ……。
気を取り直して、もう一周。
特に大きい生き物は発見できず。でも、ちょっと気になるものがあった。
コレは……ちょっと、相談した方が良いかもしれない。
「もしかしてだけど」
「うん?何か居たの?」
「居なかった。けど、居た跡っぽいのが」
「何が居たの?」
「えとね……レッサードラゴン」
「え?」
昨日よりも更に森の浅い場所に見覚えのある爪の痕やら足跡やらを発見。
どうやら話題沸騰中の意中のお方が、まさかまさかのいらっしゃい。
事件のかほりがして来ました。
「昨日見つけた場所より、浅いね」
「…………」
セリナが無言で天を仰いだ。
ちょっと風が強いから畑の様子を見に行ったら、お腹を空かせた熊と鉢合わせたみたいなもんだからね。分かる。
思ってたのと違う方向でやばいことがあった訳で。
俺なんかもう、今すぐふかふかのベッドに横になりたい気持ち。
昨日の今日で、これですよ。
てか、繰り返しになるけれど、2日目だ。
あたくし、ここに来てからまだ2日しか経ってない訳。
盛りだくさん過ぎる。イベントが、じゃなく、ハプニングが。
あー……異世界ライフは刺激的でたのしーぜ。くそぅ。心休まる暇がない。一週間後には人類滅亡してるんじゃないかね、これ。
少なくともレッサードラゴンとやらとは、確実に顔見知りになってる予感はする。
「調査しに、行く?」
「…………行かない訳にも、いかないわ」
「だよねー」
セリナは苦虫を三十匹位口に含んだみたいな顔で、唸るように口を開く。
お気持ち、お察します。俺も多分同じ気持ちだ。
出来ることならスルーしたいけど、それが出来ないから辛い訳で。
こうして俺達は、ゾンビのような足取りでそれらしき場所へ向かう。
悲しいことに、調べたらちゃんとレッサードラゴンの痕跡でした。ちくしょうめ。
昨日見つけた物より古い痕跡だったということは、随分前から森の入り口付近で活動してるっぽいというオマケ情報付き。そんな有り難くないオマケいらないです。
でも、もう付近に居ないっぽいことと、一度も森の外に出てないってことは数少ない朗報かもしれない。
しかし森から出ちゃった時の対策とか、村人の避難勧告やら諸々の判断をギルドに仰がなくちゃいけないのは事実な訳で。急いで街へ帰る。
副長のおっちゃんの胃が、無事であることを祈る。




