誰でもいい
ルイ視点です。
「......わざとだろ」
「ーー必要なことなのよ......きっとね」
「貴女方の過程の未来に私の娘を巻き込まないで貰いたい」
「......だって、賭けてみたくなっちゃったんだもの......仕方無いじゃない」
そう言いながら瞳を伏せて薄く笑う姿は何か事情があるように見えた。アポを寄越してきたとしても、いきなり過ぎる訪問と、レイミアと共に此処に来たことから、大方見定めに来たのだろう。
ーーこれから、誰の、どの国の味方に成るかを......恐らくだか、これからこの世界は割れてしまうかもしれない。それほどの大予言がこの世に下されたのだ。......まぁ、予言なんて当たらないことが多いのだか、今回は限り無く......的中率100%に近いだろう。
何故そう言いきれるかというと、この話はシーキャピタルにいる大予言師の話にまで持っていく必要がある。
シーキャピタルには、私よりも長く生きている、"老人魚"が存命している。恐らく、彼女が世界最古の生命体だと断言できるだろう。そしてその彼女は、永年の知識と経験を持ち、そして何よりも、誰よりもその先見の魔法を操る技量を持っている。
そんな彼女は間違いなく、この世界を一番過去未来共に知り尽くしてる人物だと断言できるだろう。そんな彼女が出す予言は、少なくとも、私が生きてきた間で1度たりとも外したことはなかった。1度たりともだ。その様な人物が今回白き奇跡の預言を出したのだ。この予言は......悔しいが、当たってしまう確率が非常に高いだろう。
「ルイ様も、わかっていらっしゃるのでしょう? あの方の預言は絶対よ」
「絶対なんて存在しませんよ」
「わからないじゃない......絶対があり得ないなら、絶対存在しないなんて言えない......」
「私は言葉遊びをしたいわけでは無いのですがね」
「私だって遊びたい訳じゃないわ......」
「......」
そう、これは遊びじゃ無いのだ......この予言を出した人物が、見習い予言者であればどんなによかったか。
「ーーそう、遊びじゃ無い。でも、巷の子供達がしているゲームみたいに、ここが決まられた運命の箱のなかではない現実だからこそ......私は、その予言を1つだけ......変えることができました」
本当に些細な事なのですがね......そういった彼女の方へ顔を向けると、彼女は先程まで浮かべていたはずの神妙そうな表情を打ち消し、悪戯な顔をしていた。
「どういうことですか」
「さっき、あなたも気がついたでしょうが、私はレイミア様が部屋を出るギリギリ前に予言の話をしましたよね?」
「えぇ、鋭いあの子のことです。きっとなんの話をしているか気づいたでしょうね」
「予言の中のレイミア様は、未来のことを知りもしないわ」
「......つまり、リーザ殿はこう言いたいのですか? 未来を誰かが見て、変えようとしたという予言通りではない展開が起こった時点で、予期されていた、その未来は起こらない......と。」
「私の信じる理屈的にはね」
「......ではなぜ、その予言の真ん中にいるレイミアに態々話したのですか。レイミアに言わなくても、私だけでよかったでしょう」
そう、彼女の理屈では、予言を知り、変えようとする人物は別にレイミアである必要がないのだ。誰かが、そう、それこそ、この星の反対側に住む人間でも良いのだ。そんな誰を選んだっていい話を、なぜ態々レイミアにしたのか。
「だから、言ったじゃないですか」
「......何をですか」
「賭けてみたくなったって」
「......」
「あの子なら......あの方なら、どうにかなると、そう、思ってしまったから......」
そう言って笑う彼女の顔には一点の曇りも無かった。
ああ、私の娘はなぜこうも面倒な者に好かれてしまうのか......そんなことを考えながら、何とか成りそうな気がしてきてしまっている私事態も、大概面倒なのかもしれない。
バタフライ効果って知っていますか?