回想part1
投稿少し遅れました。
僕は妖精一族の中でも歴史の深い一家の生まれだった。
僕の母様も父様も立派な妖精だったけれど、それを嵩に威張ることがなくて、仲間思いの良い妖精だと妖精の里では有名だった。けれど、あるとき僕の住む里にある観光名所、フェアリー・レイクにある国の王女様が観光に来たんだ。それは、今から6年前のお話............
僕の家は観光名所、フェアリー・レイクのすぐ近くにある大きな木上にあった。僕たち妖精は羽があるから階段なんて要らないけれど、希に羽を持たない種族が引っ越して来たりするので、御客さん用に螺旋階段が設置してあった。その階段を登って来るのは、今まで数える程度だったけれど、その日は5人くらいの人やエルフが登ってきたんだ。その人はいきなり来たと思うと、僕にフェアリー・レイクまでの行き方を訪ねてきた。この時母様たちは仕事で家に居なかったので、僕が対処するしかなくて、正直めんどくさくて嫌だったけど、身なり的に偉い人そうだったから僕は道案内をした。ーーけれど、それが間違えだった。あのとき嫌だと言っていれば僕はもしかしたらまだ彼処に居たかもしれない。
道すがら、その子は色々なことを話してくれた。名前はカレンと言うらしい。カレンは名字は秘密と言って教えてくれなかったけれど、多分貴族か王族のどちらかだ。多分ね。そんな彼女に、僕は自分の名字だけを名乗っておいた。いきなり家に来て道案内をしろなんて言う人に、名前を教えるのはちょっと気が引けたんだ。
彼女は僕のそんな思いに気付かずに、フェアリー・レイクに向かって歩き出すと話し出した。
「あのね、私此処に来る前は謂れの無い罰で部屋のなかに閉じ込められていたの。でもやっと部屋の中から出れるようになったけれどいま外がどうなっているかわからないでしょ? だから外の世界を見に来たの」
僕はどっちかって言うとどうでも良かったから適当に流していたのだけれど、その子は聞いてもいないのにどんどん話していく。
「私部屋のなかに閉じ込められる前は竜族の里に行って、素敵な子と両思いに成ったのだけどね? その人のご両親やご家族はその子にとても執着してて私達の仲を認めてくれなかったの。しかも里を訪れることまで禁止されてしまって......私達は仲を引き裂かれちゃったの......」
話を聞いている限りこの子はどうやらちょっと妄想癖があるように見えた。何て言うんだっけ?確か人間の納める国でそう言うお伽噺の本が売られてた気がしたんだけど......う~ん......そのヒロインのことを......え~と......
ーーあ、思い出した。悲劇のヒロインだ! 女の子って小さいときはそう言うのに憧れるって母様が言ってた気がする。きっとこの子もそう言うのに憧れて物語のヒロインと自分を重ねちゃってるのかな? でもこう言うときってストレートに言ったら駄目なんだよね? そう言うときは話を会わせるのが大人だって母様が言ってた。だから僕もそうすることにしたんだ。
「そうなんだ。大変だったんだね」
僕がそう言うと、カレンはパッと顔色を明るくして、「そうなの! わかってくれるのは貴方だけよ! 私、嬉しいわ!」と言って上機嫌に笑った。正直彼女の言葉にそりゃそうだと思ってしまったけれど彼女には言わない方がいいよね。
そのあとも結局最後まで彼女が9割はなして、残りの一割を僕が相槌と言うかたちで会話を成り立たせていた。フェアリーレイクに着くと、僕は用が済んだとばかりに帰ろうとしたけれどカレンに引き留められてしまった。
「ありがとう! 私今日はとっても楽しかったわ! また明日も会いに行っても良いかしら? 私、アリスの事をもっと知りたいし、アリスにも私の事を知ってほしいの! ねぇ、駄目かしら?」
そう言いながら首を傾げる仕種は、きっと世間一般的には愛らしいのだろうが、僕は彼女の言葉に、背筋がゾッとしてそれどころではなかった。
何で、彼女は、僕の名前を、知っているの?......
僕は彼女には名字しか教えていなかった筈だ。なのに彼女は僕の名前を知っていた。と言うことは、彼女は僕の事を最初から知っていて話し掛けて来たの? なんのために? どうして? そんな思考が頭に次々と浮かんでいったが、最後に頭に残ったのは、妖精狩りとストーカーという言葉だった。妖精狩りとは、妖精の羽を使い、薬を作るために、一昔前に起こった、事件だ。今では妖精狩りは禁忌の領域で、妖精の羽を使った薬を所持しているもの、使ったものは、直ちに国に捕らえられ、場合によっては死刑にすらなり得ると言うものだ。でも、正直これは僕で無くても良い筈だ。だって妖精の羽ならどれだって良いのだから。なら、やっぱり彼女はストーカーなのかもしれない。たまにいるのだ。妖精の神秘のオーラにやられ、力の弱いものがストーカー紛いの事件を起こすことは。もしかしたら彼女もそうなのかもしれない。僕はストーカーあったことは無かったか。友人はそのストーカーに誘拐され、助けられたときには、トラウマから2度と家の扉を開かなくなった。僕もそうなるのだろうか? 僕は、彼女に......
ーー嫌だ。 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
僕はこんなところで人生を滅茶苦茶になんてされたくない! 僕はその思いから彼女から逃げるようにその場を去り、家に帰ると扉の鍵を閉め、窓をすべて巡り、鍵がすべて掛かっているかを、確認して回った。けれど、暫くするとドアノブをカチャカチャと、回す音が聞こえる。母様が帰ってきたのかと思って、僕は扉に近付いて鍵を開けようとした。けれど、それは扉をノックする音に止められた。
明らかに低いのだ。扉を叩く音がする位置が。
母様や父様が叩いているなら、大人だし、もっと高い位置から音がなる筈だ。じゃあ、この音は......僕がその音に怖じ気づいていると、ノックを止めるよう制止する声が聞こえた。多分だけれど、さっきカレンに付いていたお着きの一人の声だった筈だ。ーーと言うことは、彼女は、扉の前にいる!!
僕はその事に気がつくと、扉から少しずつ、音をたてないようにそっと慎重にとびらから遠ざかる。すると、扉の向こうからヒステリックな叫び声が聞こえた。
夜にまた投稿します。




