歪んだ心
まだまだ続くレイン視点
何か今まで出てきたキャラで一番闇が深い気がする......アレ?
私が王の執務室へ行くと、扉の前に居る従者二人が、「王が中で御待ちしている」 と言って扉を開けた。挨拶と礼をした後に中に入ると、王は私に話しかけてきた。
「そろそろ『アレ』が旅行に行きたがる頃だと思っておった。次は何処だ? フェアリー・レイクか?」
王様は呆れたように、そして、何処か疲れたように、私に聞いた。
「......王よ、カレン様は今回の御忍びでの御旅行での行き先は、ーー竜人族の住まう里、即ち、竜族の里を希望しております。」
「なに? 彼処は入国検査も厳しい、身分を隠しての入国はできぬぞ? 」
ーーやはり、王族と言えど、竜族の里のお忍び旅行は難しいらしい。
「はい、存じております。ですので、王族がアポなし訪問するわけにはいきませんので、陛下に訪問する際の手紙を書いて戴きたく存じます」
「ふむ......それは良いが、その手紙はどのように届けるのだ? 馬車では時間が掛かり過ぎる上に、途中からは徒歩になるぞ」
......これは、言ってもいいのだろうか?.....いや、言わない方が良いのだろうが、陛下に嘘の報告をするわけにはいかない、ここの頂点はカレン様ではなく、陛下なのだから。
「.........カレン様は、私に届けさせるよう仰せつかっております」
流石に馬鹿正直に飛んでいくなんて言えるわけがないので、濁して伝えたのだが、陛下にはお見通しのようだった。
「......御主、またしてもあやつに.........いや、すまない、私が親としての教育を誤ったばっかりに、あのような性格の娘に育ってしまった。お前には掛けなくても良い物を掛けてしまっておるようだな......」
「そんなこと......!」
ない、なんて、私には嘘でも言えなかった。いや、言いたくなかったのだ。
「よい、事実だ。しかし、今回はまた無茶を言ったようだな......御主の魔力では足りぬ上に、あの距離と高度を飛べば、魔力の枯渇だけなら良いが、下手をすれば体を壊すぞ」
そんなこと、言われなくてもわかっている。でも、どうしようもない事なのだ。きっと今回陛下によって飛ぶことを免れたとしても、次は免れないだろう。ならば、早いか遅いかの違いだ。
「.........」
部屋に沈黙が広がる。その時、部屋にノック音が響いた。
「第一皇子 ゲインです。父上に御話がございます」
「...入れ」
「失礼します」
陛下が入室許可を出すと、この国の第一皇子である、ゲイン様が入ってきた、ゲイン様は部屋にいる私を見ると目をまるくされた。
「すみません、御話中でしたか」
「いや、構わない、それでどうした」
陛下が、ゲイン様が執務室に訪ねられたわけを聞くと、ゲイン様は私をちらりと見たあと話始めた。
「いえ、学園の長期休暇がもうすぐ始まるので、今年はまだ行ったことの無い国に、社会研学のために向かいたいと思いまして、その入国保証書と族長へ今回の訪問の主旨の書かれた手紙を書いて欲しいのです。」
「うむ、様々な価値観を見て、己の世界を広げるのは良いことだ。して、どの国へ行くのだ?」
「はい、何度か食事の席で私が予てより何時か赴きたいと話していた、竜族の里です」
「なんと! 御主もそこへ行きたいと申すか」
「はい、あの...なにか問題でもあるのでしょうか?...確かに竜族の里は入国検査は厳しいですが今から入国願いを族長の下へ届け、許可を得れば王族でも国を騒がすことなく、穏便に入国できるはずですが......」
「あぁ、いや...そうでは無いのだか......ふむ、そうか、......なら」
陛下は何かをぶつぶついいながら考え事をしはじめた。
「「?」」
「レイン、どうにかなるかもしれない。...ちょっと待ちなさい」
陛下はそう言うと、陛下からみて、右側の本棚の一番下、右側から2列目にある緋色の知識と書いてある本を開き、中から細い何かを取り出した。
「それは?......」
「これは王族専用の特別製の魔術道具でな、魔力が貯蓄されている加工済み六角水晶をチェーンに通すと、このチェーンを通じて、水晶の魔力が体内に移動される。」
聞いたことがある。これは王の重要事項の伝達を行う場合に使う魔力補助道具だった筈だ、そんなものを私に渡そうと言うのだろうか? だがそれは私に渡して良いものではない。第一、皇女の旅行の手紙を渡すなんて大した物ではない。
私がそんなことを考えていると、陛下はいたずらっ子のような顔で薄く笑った。
「レイン、時期皇子の教育は、未来の国を創る事に繋がる。だから、今回の連絡事項は未来の国の為だ。レイン、それをお前が届けなさい。」
そんな話を一気にした後に、陛下は「ついでにカレンも付いていくと言うこともな」と言った。
不覚にも、泣きそうだった。カレン様にもこの人のような優しい親がいることに嫉妬した。普通なら此処で感謝したり、感動などをするのだろう。けれど、私の歪みきった心は嫉妬に走ってしまっていた。
......あぁ、優しく聡明な皇子も事情を察して微笑んでいる。嫌だ、これ以上見たくない!これ以上此処に居たら、自分とこの人たちとの違いを比べてしまう......私の汚さをこれ以上浮き上がらせないでくれ!!
その思いをグッと飲み込み手紙と補助道具をもらい受け、私は城を飛び立った。
ーーその時、私がどのような気持ちで空を舞っていたかなんて、誰も知らない............
すみません明日は遠足なのでもしかしたら投稿ができないかもしれません......
できたらします