五月蝿い
暖かくて気持ちのいい微睡みのなか、私は周りが厭に騒がしい事に気付き、そしてそれを少し不快に思い騒がしさから背を向けようと、身動ぎをしようとして体が思うように動かないことに気がついた。
一瞬頭の中が真っ白に成りました。
でも、わたしの体の面積に触れるような感覚はちょこちょこ代わるので、ロープで縛られている訳でも、金縛りにあっているわけでもないと判断した私は即座に目を開けました。
......そう、開けたのですが、目の前に広がっていたのは白いくて固い壁のようなものが視界いっぱいに広がっていたのです。
勿論その間も騒がしさは変わらない。私はその視界いっぱいに広がる白を動かすことができた右手で思いきって押してみた。
白は布製のようなもので、とても柔らかいシルクのような肌触りで、大変触っていて気持ちのよいものだった。
私が布のさわり心地に夢中になっていた間に、いつの間にか周りは静かになっていて、私が気付く頃には私に向かっていくつもの視線を感じました。
私はそろりと布から手を放し、視線へ目を向けるため、顔の向きを変えると、そこには見目麗しい青年が私を見下ろしていたのです。
......見下ろしていた...........
何回も言わなくても伝わるでしょうが、敢えて言わせてもらいますが、青年は、私を、見下ろして、いたのです。
私を抱えた状態で...........
うん......流石にどんなにお馬鹿さんでも気付くでしょうが、いくら低身長胴長の日本人でも、平均でもそこそこの大きさはある上に、私は160㎝は余裕でありましだ、こんなに簡単に抱き上げて見下ろすなんてまず無理なのです。
そこで瞬時に私は自分の体を見回しました。
そしてその視線の先にあったのは、もちもちのパンのような小さく丸い紅葉のような可愛いお手てに、タオル生地の様な布製ローブのようなベビー服に包まれた体。 そして気のせいでなければ、もともと短かった脚がかなり短くなり、短足なんて可愛いレベルを超えた、赤ん坊のような小さなあんよがそこにはありました..........
私は、赤ん坊の、姿を、していた!!
そして、そこからは驚くべきスピードで情報が頭上を飛び交い、話を進めていきました。
私が自分の有り得ない姿に絶句していると、いつの間にか私の周りには人が集まり、口々に話だし私に向かって手を伸ばしたり話しかけたりしてきました。
「! 目が、覚めたのか?」
そう言いながらお兄さんは、少しだけ驚いた後に顔をふわりと綻ばした。イケメソですね。
すると、他の人の声も次から次へと掛けられ始めました。
「おいアシュリー!次は俺だろ!俺にも抱かせろよ!」
そう声を私を抱いている御兄さんに掛けるのが、この中で最年少であろう見た目をしている少年。
「何を言っているんですか貴方は、私が先に決まっているでしょう」
このお兄さんはアシュリーと呼ばれる御兄さんと、あまり歳は変わらなそうです。
「あら駄目よ! 目が覚めたならそろそろご飯を食べさせるんだから、母さんの番よ!」
そう言いながら私を受けとる体制を作る、男の子たちの母であろう美女。
「いや、ミルクなら、父親である私がやるから私に渡せ」
少しだけ、好奇心がにじんだ瞳で腕を伸ばすのが、この中で一番最年長のイケメンさん。
「違う....順番的に、僕.........」
そして、回りの人たちより少しだけぼーっとした感じの少年と青年の間のような年齢であろう少年が、物静かに私の方を見つめながらアシュリーと、呼ばれる青年に話しかける。
これらの他にも、もうすこし、こうたい、早く等と言うことを口々に話始める。
そのせいか、さっきの倍の騒がしさが、いつの間にか私の周りで完成していました。それらを眺めていると、今私を抱っこしているアシュリーと呼ばれる青年が、私の前に指を持ってきて上下左右と指を動かしたため、思わず私は反射的に目で動いている物を追っていたのですが、その事に青年は驚いたような顔をして............
「! ...驚いた、もう視界がはっきりしているのか」
青年が心底驚いたと言うように呟いたその一言で、その場はまたもや静まりかえったのでした.........