対話
私の視界はアリス君の魔法の効果により一瞬眩い光で埋め尽くされたと思うと、瞬く間に城の前に移動していた。私たちがいきなり姿を現したせいか、その場にいたメイドさんや兵士の方々は驚きの表情を顔に貼り付けたまま固まっている。余程驚いたのでしょうね。すみません。
「とーちゃく!」
「アリス君」
「ん? なぁに?」
「アリスくんは--」
私はアリス君になぜイザートに居たのかを聞くためにアリス君に話しかけると、アリス君はそのきれいな瞳を優しく細めると小首をかしげて返事をした。その穏やかないつものアリス君になんとなく緊張が緩むのを感じながら詳細を聞こうとしたとき、今まで固まっていた方々がまるで氷が一気に溶けたかのごとく動き始めた。
「レ、レイミア様?! おぉ...レイミア様、今まで何処に...いえ、今は良いのです。レイミア様、王が執務室にてお待ちです。」
......え
もしかして私が単独で出かけたの結構問題になってます? え? 捜索隊? そんな大事にするつもりは...あ、さーせん......
私が若干反省をしていると、すぐに応接室についてしまった。応接室に着くまでの間、アリス君によってぎゅっと握りしめられていた左手に少し自分から力を加えて扉を三回叩き、入室許可が出ると二人で中に入っていった。
部屋の中には王様と二人の近衛兵とみられる武装した二人の男しかおらず、その男も王様が右手を上げると一礼をして部屋から出て行ってしまう。その際にちょっと不安になってアリス君に目を向けると、アリス君は目を合わせた瞬間部屋から出てしまった。おい、俺は関係ねぇってことですか。王様と二人っきりは流石にきついんですが。え? がんばれって? 無茶振りか。
「--レイミア様、この度は」
「すみませんでした」
必殺、怒られる前に素直に謝る。何か言おうとしているときに遮られた上に謝罪することで怒りに水を挿す作戦です。ちゃんと反省してるんですよー! みたいな。たいていの大人はこれで回避できました! 王様にも聞いてほしいものです。そんな祈りを込めて王様の瞳を真剣に見つめていると王様は一瞬呆気に取られた顔をしたものの、すぐに真剣な表情に戻り言葉を発した。駄目だったか......
「--それは、何に対しての謝罪でしょうか?」
「......あなたの国で勝手を働いてしまったことに対して、それから心配をおかけしたことに」
勝手を働くって何ですかー?! やばいですね。何に対しての謝罪かを聞かれるなんて考えて無かったので即興で作って何も考えずに口から......
つ、詰みました......
「いや、謝罪せねばならないのはこちらのほうです」
「?」
「貴女がこの国に来る際にすべてを完璧にせねばならなかったのにも関わらず、様々な点でボロが発見させてしまった...きっと貴女はこんな不甲斐ない王故に相談ができなかったのでしょう」
え、この人何言っているんでしょうか......ん? もしかして兄たちによる車駄目だし事件と兄へのストーカー事件のことでしょうか? え、そんなこと私に誤ってるんですか? 車の駄目だしはともかく、確かにストーカーは驚きましたがあれは兄の顔面偏差値が恐ろしく高かったからであって、かなり予測不可能な案件だと思うのですが.....まぁ、多少は警備を強めたほうがいいとは思いましたが。それにしても、私たちが来てこの王様にはかなり迷惑をかけてますね。多少なりともフォローしなくては‼
「それは違いますよ。誰であってもすべてを完璧にこなすのは無理です。それに、謝るのは私ではないでしょう。」
私がそういうとハッなり王様は私を見つめ返してきた。そうそう。謝るのはストーカーの被害者である兄二人であり、妹の私ではないのですよ! まぁ、もしかしたらこの場にいないからとりあえず身内に謝罪をしているだけで後でするのかもしれませんが。
私がそんなことを脳内で考えながら王様を見つめていると、しばらうして小さなかすれるような声で王様の口から感謝の言葉が吐き出されたのを聞き、私がどういたしましてと返したことで二人っきりでのお話はお開きとなった。
ちょっと遅くなってしまった......