65.踏破者、拠点を構える。
商業区まで戻ってきた俺とエル、レベッカは東ハンターギルドへ来ていた。
ティアから受けていた【指名依頼】の達成報告の為だ。
「おまたせしたにゃ。依頼達成報告でいいかにゃん?」
受付に居たのは受付台から頭くらいしか出ていない猫人だった。
どう考えても未成年にしか見えない。
というか語尾のにゃとかわざととしか思えない。
「にゃ。お兄さんこのギルド初めてだにゃ?うちのこと子供だと思ってるにゃ?」
「……正直に言おう。そうとしか見えん。」
「そこ認める所じゃにゃいにゃ!!うちはこう見えて28歳にゃ!!」
28!?
ば、ばかな。
この容姿、喋り口調で俺はおろか、あのライラさんより年上だと……!?
因みにライラさんは23歳らしい。
「まぁその辺は慣れて行ってもらうしかにゃいにゃ。早く依頼書とタグを出すにゃ。」
俺は言われた通り依頼書と2人分のタグを受付台に置く。
受付台に置かれたタグの色を見て猫人は大げさに驚く仕草をしている。
「にゃ。お兄さんたちBランクだったのかにゃ!?見た目若そうなのに凄いにゃ。実は意外と歳行ってるのかにゃ?」
「あんたが言うな。さっさと処理してくれ。」
「ちょっと待つにゃ。これ【指名依頼】にゃ。しかも王族から!?お兄さん何者にゃ!?」
いちいちうるさい受付だ。
特に返事もせずに見ていると、猫人は俺の返事など最初から期待していないかのように処理を開始していた。
どうやら賑やかなだけで、こちらがいちいち相手をしなくてもいい様だ。
「達成報酬が100万ギラ、日当が62日間で310万ギラだにゃ。このギルドで用意した依頼じゃにゃいので、ちょっとこの金額はすぐには用意できにゃいにゃ。ちょっと待ってもらう事ににゃるけど良いかにゃ?」
「やむを得まい。」
「では依頼達成処理終了にゃ。報酬は多分2~3日で準備できるにゃ。」
「わかった。しばらくはここで依頼を受けるからまたよろしく頼む。」
ギルドを出ると、そこにはシルバが居た。
「旦那様、お迎えに上がりました。」
「旦那様はやめてくれ、俺はただのいちハンターだ。」
王都に着いたあと、シルバとメル、リルには先行して平民区の宿と空き家を調査してもらっていた。
ハンターギルドで合流する予定としていたが、無事に合流できたようだ。
まさかハンターギルドが4つもあるとは思っていなかったからな。
「今日は宿の方にご案内いたします。拠点にできそうな空き家も何軒かあるそうですので、明日にでも内見いたしましょう。」
流石に仕事が早いな。
拠点とするのにふさわしい物件があると良いのだが……。
「まぁまずは宿だな。皆今日は休んで長旅の疲れを取ろう。」
そうして俺たちは商業区を後にした。
◇◇◇◇◇
「なぁ。」
「はい、どうなさいました?」
「宿はここなのか?」
「……はい。」
「なんか無駄に装飾が凄いうえに、軒先に『王都が誇る高級宿』と書いてるんだが?」
「……。」
いや、そこで黙るなよ。
「……申し訳ありません。メルとリルが宿は自分たちに任せろと言うので任せた結果、このようなことに……。」
「ジーク様ごめんなさい。王都に来たら一度泊まってみたかったんです!!」
「です!!」
「完全に人選ミスじゃねぇか。」
シルバって孫に対して甘くない?
おじいちゃんってそんな感じなの?
俺は祖父って両方他界してたからどんな感じかわからねぇわ。
「ま、借家を見つけるまでの辛抱か。」
こうして王都一日目が終了した。
翌朝、寝ぼけ眼で朝食を取っていると、予定していない訪問者が現れた。
「ランドールさん?」
「ああ、この宿でしたか。お会いできてよかった。」
宿の入り口で辺りを見回していたランドールさんは、こちらに気付くとテーブル脇までやってくる。
そりゃ王都に来たばかりのお上りさんが、こんな派手な宿に泊まっているなんて思わんわな。
飯はうまいからいいけどさ。
「ティア王女殿下からこれをお渡しするように言われていまして。」
そう言いながら封筒をテーブルの上に置く。
「これは?」
「はい、貴族区にある建物の所有権証明書と鍵です。なんでも王族専属騎士としての仕事を依頼させてもらう事もあるし、拠点は貴族区にあった方が良いからこちらで準備したとの事でした。」
俺達は今日平民区の空き家をめぐる予定だったのだが、どうやら先を越されたようだ。
まぁティアからしてみれば自身の護衛が平民区に住んでいるせいで、有事の際に間に合いませんでしたと言うのを避けたいのだろう。
だが、貴族区か……。
ガラじゃないんだけどなぁ……。
「ちなみにこの番地であれば貴族区と商業区を隔てている東門のすぐ近くですね。東ハンターギルドへはアクセスいいと思いますよ。」
「そう言う事なら素直に受け取っておくよ。宿代が浮くのも助かるしな。」
一応、ここまでの護衛の依頼料が手に入ればなんとかなる感じではあったが、心もとなかったのも事実だ。
遅れて朝食を取りに来たエル達にも事情を説明し、今日のうちに引越しをすることにした。
生活するうえで足りない物は、現地確認後、シルバ達に任せることにする。
そうして宿をチェックアウトし、訪れた先には豪華とまでは言わないものの、立派な屋敷が建っていた。
「ここをティアが購入したのか?貰っていいものなのか判断がつかんな。」
屋敷を前にぽつりと漏らす。
「構わないと思いますよ。ティア王女がここに住んでほしいと用意したものですし。」
ここまで案内をしてくれたランドールさんは頷いている。
「とりあえず中に入ろうか。」
そう言って敷地内に入った瞬間だった。
ガチャ
隣の屋敷から人が出てきたのだ。
お、挨拶しておくべきか。
そう思って顔を向けた先には、レクシアが居た。
「!?お、お前は!?」
もうさっそくこの屋敷には住みたくないと思ってしまった。
というかティアはお隣さん把握してなかったのかよ!!
この後レクシアさんは無言で屋敷内に戻っていったそうです。
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