63.踏破者、王都に着く。
「ここが王都か……。」
「ええ、ここは王都の中でも最外周に位置する平民区ですわね。王都の中にも城壁があり、一つ内側に入ると商業区、更にもう一つ城壁を隔てて貴族区、そして最中心に王城があります。」
「ふむ、確かに街中に城壁が見えるな。」
ラマシュトゥの召喚イベント以降は特に大きな問題もなく、俺たちは王都に到着した。
これで一旦は【指名依頼】は達成となるだろう。
400万ギラを早く受け取りたいところだ。
「では一旦このまま王城へと向かいます。」
「俺達も行く必要があるのか?」
「そうですわね。王族専属騎士としての仕事をお願いする場合には王城まで来ていただく必要もありますし、手続き関係は一度しておいても良いかと。それに、王族専属騎士の身分を証明する装具もお渡ししなければなりませんし。」
そう言われてしまうと、ここでさようならという訳にはいかない。
王城とか興味ないんだがな……。
それに手続きか……。
「ひょっとして各区を隔てている城壁は、通過するのに身分証明が必要だったりするのか?」
「その通りです。ざっくり説明すると、平民は商業区までしか入ることが出来ません。」
「なるほど、そりゃ王族専属騎士の身分証がなけりゃ王城には行けんな。」
その後、護衛隊長のランドールさんから少し詳しく話を聞くと、この区分けはどこに住んでいるかではなく職業で細分化されているようだ。
平民区に住んでいても、王城勤めの騎士職であれば王城の一部まで入ることはできるらしい。
ちなみにランドールさんは平民区に住んでいるとの事。
「落ち着いたら一杯飲みに行きましょう。奢りますよ。」
「そりゃ良い。是非。」
そんな会話をしているうちに商業区に入った。
「商業区には店と呼ばれるものであれば大体の種類のものが入っています。大衆食堂や宿なんかは平民区にもありますが、武器・防具屋なんかはこの区域で調達することになると思います。ハンターギルドもこの商業区にあります。あれですね。」
どうやらハンターギルドは平民区から商業区に入ってすぐの場所にあるようだ。
ハンター達も身分の高い者がいるわけではないのでこの立地なのだろう。
「ちなみに王都のハンターギルドは4つあります。それぞれ立地で東西南北で呼び分けられています。今のは東ハンターギルドですね。」
「4つもあるのか。」
「王都は広いですから。……これはアドバイスですが、西ハンターギルドのマスターはかなり貴族に媚びを売るタイプで、配下のハンターには無茶振りするとの噂があります。利用は控えた方が良いかもしれませんね。」
ギルドマスターが4人も居れば1人くらいそう言う奴がいてもおかしくないな。
「教えてくれて助かる。西には近づかないようにしよう。」
「ええ、その点今の東ハンターギルドなんかはかなり平民寄りのマスターですので人気は高いですね。」
そうしている内にまた城壁を通過し貴族区に入る。
俺とエル、レベッカ(ついでにラマシュトゥも、パズズは鳥姿なのでカウント外)は身分証明を持っていなかったが、ティアから直接王族専属騎士として雇い入れたことを説明し、問題なく入れた。
貴族区は居住区のようで、絢爛豪華な建物が等間隔に並んでいる。
巡回している衛兵の数も多く、治安は良さそうだ。
そしていよいよ王城が近づいてくる。
かなり巨大な建物だ。
ランドール隊長の話だと、中には兵士宿舎や訓練設備と言った騎士用の施設や、王城勤務者が利用できる福利厚生施設もあるようなので、単に城というよりは複合施設の様相が強いらしい。
貴族区へ入った時と同じような説明を行い無事王城内に入る。
広大な庭を抜けるとそこからは徒歩だ。
大半のお供とはここで別れ、ランドール隊長以下数名の騎士と侍女を引き連れて王族居住区を目指す。
ここは王族の誰かに許可を得た者しか入ることが出来ない区域だ。
「ティアじゃないの。巡視から帰ってきたのね?成果はどうだったのかしら。」
ティアの私室を目指す途中でそんな声をかけられる。
ティアはその声の主を見て小さく舌打ちをする。
「オリヴィアお姉様。先ほど戻ったところですわ。多少のアクシデントはありましたが、今回の巡視は問題なく全日程を消化しましたわ。」
オリヴィアお姉様ね。
つまり、この国の第一王女ってわけだ。
オリヴィア王女は背後に2名の女性騎士と侍女を1人引き連れている。
「ふん。フレンブリード辺境伯の件は聞いていますけど、私が聞いているのは日程の件ではなく王戦の件ですわ。まぁ、あなたに協力する諸侯なんてそうそういないでしょうけど。」
そう言う事を直接確認したりするんだな。
それだけ強敵として考えられていないという事なのかもしれないが。
「……ええ、各諸侯の協力は相変わらずですわ。ですが、今回の巡視は大成功ですわ。王族専属騎士を見繕えましたから。」
「王族専属騎士を?ひょっとしてその汚い身なりのハンターさん?かしら。あなたに協力する上位騎士が居ないからって……ふふふ……笑っちゃうわね。」
「ふふふ。笑っていられるのも今のうちですわよお姉様。彼らの力を知らないからそんなことが言えるのですわ。貴族が優秀と言う凝り固まった考えでは仕方ないのかもしれませんが……それこそ笑ってしまいますわね。」
ティアのこの言い様に、今度は額に青筋を浮かべるオリヴィア王女。
「そいつらが優秀だとでも?レクシア。」
オリヴィア王女の後ろに控えていた女性騎士の一人が前へと出てくる。
「オリヴィア王女殿下の王族専属騎士を務めるレクシアだ。ティア王女殿下の王族専属騎士殿、手合わせ願おう。」
レクシアと名乗った女性騎士の視線は真っすぐ俺を見据えている。
え、俺何かしないといけないの?
さっさと王族専属騎士の身分証明品だけもらって帰るつもりだったんだけど。
と言うか興味なさ過ぎてさっきの王女2人の会話も聞き流して欠伸とかしてたんだけど。
「ジーク、手加減してあげてください。出来れば怪我もなしで。」
お、ティアのスイッチが入っているな。
仕方ない、少し揉んでやるか。
第一王女登場です。
別に昔は仲良かった的なエピソードはありません(笑
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