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62.護衛隊長、回想する(3)

ジーク殿達が調査に赴いている間、ティア王女殿下は街の視察を行う事になっていた。

街に着いた日の翌日は休養に当て、翌々日から街を見て回る予定である。

とはいってもオスガルド伯爵直下の街で問題が起こるようなことはない。

我々も護衛として付きはするが、警戒体制を布くほどでもない。


実際視察はつつがなく進む。

オスガルド伯爵を見た領民が声をかけて来て農作物のおすそ分け等を渡してくれる様など、貴族と平民の垣根を低くしようとしている王女殿下が目指している一つの形であろうと思う。


そして商業通りを通っている時だった。

一人の女性に声をかけられた。


「領主様、昨日はハンターの紹介ありがとうございました。」


話を聞くに彼女はハンターギルドに所属する職員で、ジーク殿達の調査参加について礼を言っているという事だった。


「二つ名持ちのAランクハンターを全く寄せ付けない強さを持った彼らが加われば、調査の成功率は大きく上がるはずです。このお礼はまたギルドより。」


そう言って一礼をして去っていく彼女。

一方、私は軽い衝撃を受けていた。

Aランクハンターと言えば、騎士団でも上位騎士と遜色ない戦闘力を有すると評されている。

それを圧倒するなど、称号持ちの最上位騎士と同等以上という事になる。


もし彼を王女殿下の陣営に引き込めれば、他の陣営に対抗できるレベルにまで戦力強化が出来るかもしれない。

この時点ではまだそんな風に思っていた。




その翌日には更に信じられないような内容の報を受ける。

オスガルド伯爵の元を訪問してきたのはコウナードのハンターギルドのマスター、サイモン殿だ。

随分と線の細い方だったが、そのオーラは強者のそれという不思議な感覚を受ける。


彼が言うには、先日の調査で溢れ出しが確認され、その原因の排除に成功したということだった。

それをジーク殿が中心になって成し遂げたとのこと。

溢れ出し自体の原因は取り除けたが、すでに外を徘徊している高ランク魔物の間引きの為もうしばしジーク殿に依頼できないかスケジュールの確認に来たというのが彼が訪問してきた理由だった。


王女殿下からの二つ返事でジーク殿の間引き参加が決まると、サイモン殿は明らかに安堵していた。

なんでもAランク魔物の【単眼悪魔(サイクロプス)】が複数体確認されているだけでなく、Sランクの変異種もおり、ジーク殿達がそれを全て討伐しているという事と、ジーク殿が居なければ現状のコウナードのハンターメンバーでは間引きが困難であったという実情が分かってきた。


更に後日に魔物の間引きの結果として【単眼悪魔(サイクロプス)】【上級悪魔(グレーターデーモン)】を30体近く駆逐したという連絡を受けた。

この時にはもうすでにジーク殿の強さと言うのが全く我々の想像の範囲外であったという事を認識し始めていた。

だが、それでもまだ私は彼の強さの一端しか覗いていなかったという事が後日分かる。


護衛隊にレベッカ殿が加わり(盲目で魔道具の媒体となっていた彼女が一日で視力を回復しDランク魔物を単独討伐できるようになったとか、ちょっと意味が分からなくて理解できなかったので彼女についての事は早口で割愛)、道すがら再びジーク殿と交渉を開始する。

私は護衛の任についているので交渉の席には同席していないが、王女殿下とは前日まで入念に計画を立てていた。

これまでの話の中で、シルバ殿を不問とした王女殿下の決断に彼が感謝している節が見受けられている。

その謝意に付け込めば名前を借りるくらいはできるかもしれない。

彼らはそう遠くないうちにSランクハンターになるだろうし、その名を使えるだけでも抑止力にはなる。

後は長距離の旅路の際などに助力いただければ御の字と思っていた。


なので王女殿下から名前貸しで合意したことと、彼の側からも護衛を派遣するという話が出た時には驚いた。

誰の事かは分からなかったが、彼が護衛として任命するからには相当の猛者なのだろう。

その予想は当たってはいたのだが、完全に予想外だった。


「ま、魔神……。」


ジーク殿が呼び出したその異形は、自身の事を【夜の魔神(ラマシュトゥ)】と名乗った。

魔神と言えば、人族に対しての神のように、魔族の信仰の対象となっている存在だ。

魔族をはるかに凌駕する戦闘力を有し、人族では対処のしようもない存在。


だが、その彼女を彼は圧倒した。

魔神の爪での一撃をうければ爪の方が砕け、ジーク殿が拳を振るえば魔神が吹っ飛んでいく。

途中乱入してきた【魔熊(グリズリー)】が魔神の一睨みで四散しているので彼女が弱いわけではない。

いや、睨んで四散ってどういう事!?


ともかくジーク殿は魔神を屈服させて眷属化したのだ。

そしてその彼女を護衛として王女殿下に付けるとの事。


魔神が一柱護衛に付くって……。


「ちゃんと俺の眷属にしたから反乱したりはないから安心しろ。馬車の上に居るのも魔神なんだが、離れた場所に居ても魔神同士で念話できるらしいから通信手段としても使えるぞ。」


なんと既に護衛隊にも魔神が一柱紛れ込んでいたらしい。


流石の王女殿下もジーク殿の少し後ろで片膝をつき首を垂れている少女姿の魔神に声が出ない。

しかも何故か無駄にフリルの多い可愛らしい服を着用している……。

先ほどまで激しい肉弾戦を繰り広げていた人物と同一人物に見えない……。


そして時刻は今に至る。

3話分も回想してしまった。


「主の命により貴女の護衛の任に付きますラマシュトゥです。以後お見知りおきを。」


魔神の方から声をかけられ、王女殿下も我に返り言葉を返す。


「え、ええ、こちらこそよろしくお願いしますわ。詳しいことはそこのランドールに聞いてください。」


無茶ぶりが過ぎる!!

ティア王女は困ったらランドールというルートを確立していますね!!

頑張れランドールさん!!

ランドールさん回想は終わりましたので、次回より本編進みます。

もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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