↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/70

57.踏破者、半妖の少女の成長を報告する。

思っていたより遅くなってしまった。

と言うのも、レベッカが調子に乗って魔物を狩りまくっていたせいだ。

時刻は夕暮れ時になってる。

明日は早朝に王女の護衛としてこの街を出発するため、早めに戻ろうと思っていたのだが……。


ハンターギルドの建物内に入り、依頼報告窓口に向かう。

窓口に立っているのはライラさんだ。

顔見知りなのでいいのだが、やけにライラさん率が高い気がする。

まさか24時間窓口業務をしているなんてわけ……ないよな。


「おかえりなさい。首尾はどうでした?」


その言葉に俺が返事を返すより早く、レベッカがライラさんの前へ飛んでいく。


「ライラさん!!ボク!!目が見えるようになりました!!」


ライラさんはレベッカの言葉と赤い瞳に驚く。


「本当に!?でも確かに目の色が……前とは違うわ。まさか目まで見えるようにしてしまうなんて……。」


「それに【魔樹(トレント)】も倒したんだよ!!ボクも戦えるんだ!!」


「【魔樹(トレント)】を!?ちょ、ちょっと待って!?頭の整理が追い付かないわ。」


ライラさんがそう言って頭を抱える。

だがそれも無理もないだろう。

盲目の少女が初依頼(正確には彼女は年齢条件を満たしていないので正式なハンターではないのだが)で目が見えるようになってDランクの魔物を倒したと言っているのだ。

うん、言っていて意味が分からない。


「ふう。ジークさんたちと一緒なんですもんね。何があってもおかしくはないわ。レベッカちゃん、戦えるようになったと言っても油断は禁物よ?戦場では準備の足りていない者、覚悟の足りていない者、そして彼我を見誤った者から死んでいくわ。」


どうやらライラさんは思っていたより切り替えの早い人だった。

「何故」の所はすっ飛ばして「結果」として理解する事にしたようだ。

そしてレベッカへのアドバイスは真に迫っている。

第三者からのこういうアドバイスは助かるな。


「うん、ボク自身はやっぱりまだ弱い。見誤らないようにする。」


レベッカもしっかり自分を見つめられているようだ。

これならとりあえずは連れて行っても安心かな。


「よし、依頼達成報告を頼む。これが討伐証明部位だ。」


俺は革袋をカウンターに置く。中には【小鬼(ゴブリン)】の右耳が50、【原生生物(スライム)】の核が70入っている。

ぎっしりと詰め込まれた革袋の重みで受付カウンターが少し軋む。


「こんなにたくさん……。皆さんで狩ってこられたんですか?」


「いや、全てレベッカが仕留めたものだ。袋に入らない分は捨て置いてきた。しばらくあの平原の脅威度は下がると思うぞ。」


俺の言葉を聞いたライラさんの顔が引きつる。


「はは……。計測してくるので少々お待ちください。」


そのまま彼女はバックヤードへと消えていった。

そして少しすると完璧な営業スマイルを取り戻して帰ってきた。


「【小鬼(ゴブリン)】50体、【原生生物(スライム)】70体の討伐を確認しました。こちらが依頼報酬の36,000ギラです。」


「確かに。あ、そうだ。俺たちは明日の朝ここを発つことになった。ライラさんには世話になったな。ここにもまた立ち寄ることがあったら顔を出すようにするよ。」


「え?」


ライラさんは驚いた顔をしている。


「あ、ライラさんだから話したんだ。このことは他言無用で頼む。」


普通、王族の行動スケジュールなんて知る機会はない。

そんな情報を流出させるという事は襲撃してくれと言っているようなものだからだ。

彼女の驚きはそう言った類のものだと思ってフォローを入れた。


「……驚きました。ジークさん、そういうことはたとえ信頼している相手にも言ってはいけませんよ?というか私がそういう情報を持ってしまったというだけで、だれかに襲われないか怯えて今晩眠ることになってしまいます。」


ライラさんは苦笑交じりに文句を言ってくる。

これは完全にこっちの落ち度だ。

申し訳ない。


「必要なら今晩の護衛を引き受けるが?」


申し訳なさ半分の申し出だったが、これにもライラさんはさらに苦笑する。


「以前の『脱げばそこそこ』でしたか?夜の護衛も変な意味で捉えられるので気を付けた方が良いかと……。」


隣を見ると、エルが半眼で「そら見ろ」と言わんばかりの視線を向けていた。


「ふむ。気を付けることにしよう。」


俺は頭を掻きながらハンターギルドを後にした。





宿ですっかり暗くなった街並みを窓から眺めながら、王都についた後の動き方を考えていた。

そこへ紅茶を入れたシルバがやってくる。

テーブルへ紅茶を置きながら、何か言いたそうな目でこちらを見てきていることに気が付いた。


「何か言いたいことがあるなら言ってくれ。」


俺の言葉に何かを決心したシルバが頷く。


「ジーク様、本日夕方にハンターギルドの前を通りかかったときの話でございます。建屋の中がえらく騒がしく、聞こえた言葉の中にジーク様の名前があったので少し気になってしまいまして……。」


「ほう?調査依頼で上位陣とはある程度の関係性が持てたはずだが……。なにかあったか?」


「それが……。『ジークがライラさんに夜這いをかけるらしい』『なんとしても俺たちのライラさんを守るんだ』『ジーク殺す』というような内容で、多くのハンターが盛り上がっておりました。お心当たりがありますか?」


シルバの問いに俺は目をつむり、上を向く。


「ない。人違いだろう。」


俺は何も聞かなかったことにして今日はもう寝ることにした。


勘違い怖い。

ライラさんは人気者です。

自分の発言が意図しない意味で伝わるのは怖いですよね。

たまにあるのですが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。