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50.踏破者、半妖の少女を鍛える(1)

朝、支度をして朝食を食べに行くと、そこでは既にエルたち女性組の4人が食事をとっていた。

俺は特に何も考えずにその席に近づいていく。


「おはよう。」


「「「おはようございます。」」」


宿のおかみさんに朝食を頼んで席に着くと、正面に座るエルと目が合う。

何というか、すごく疲れた目をしている。


「エル?どうかしたのか?」


俺が尋ねると、なぜかレベッカが気まずそうに顔を俯かせる。

返事を返してきたのはそのレベッカだった。


「ボクがちょっと夜眠れなくて……エルさんに一緒に寝てもらったんです。おかげでボクはよく眠れたんですけど、無意識に抱き着いてしまっていたみたいで、エルさんがあまり寝れなかったみたいなんです。」


「なんだそんなことか。エルなら大丈夫だ。しっかり眠れてよかった。」


俺がそう返すとエルが半眼で睨んでくる。

だが口までは出さないようだ。


「……ありがとうございます。」


レベッカは少し安心したように、エルに向けて微笑む。

さすがに13歳の女の子、それも過酷な環境で育ち、知らない場所・人の中に放り出されたようなものだ。

表向きは大丈夫そうに見えて、ストレスはかかっているだろう。

そういう意味ではエルは一緒にいて安心する側に居るということで、これはいい傾向だ。

エルもそれは分かっているんだろう。


そんなことを考えているうちに、シルバが朝食を持ってきて俺の前にトレーを置く。


「全員揃ったな。今後のスケジュールだが、明日ここを発つ。シルバたちは出立の準備と買い出しを頼む。レベッカの分の衣類も忘れずに。」


「承知しました。」


「レベッカちゃん、後で採寸させてね~。」


「エルとレベッカは俺と一緒にギルドへ行って、今日一日で処理できそうな簡単な依頼を受ける。レベッカに戦闘のイロハを教え込むぞ。」


「うむ。」「はい。頑張ります。」


その後つつがなく食事を終え、レベッカの採寸が終わった後でギルドへと移動した。

もう朝一というわけではないので、人もまばらになっているようだ。

依頼掲示板に残っている依頼も割のいいものはないだろう。

だが、俺達には関係ない。


「簡単な依頼……こんなのでいいか。」


俺は掲示板から依頼書を一枚剥ぎ取る。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

【南の草原地帯の魔物の間引き】

依頼内容:コウナード南の平原に出没している低級魔物の討伐

依頼主:ハンターギルド

依頼達成条件:【小鬼(ゴブリン)】【原生生物(スライム)】の討伐(上限なし)

報酬:各魔物10体討伐につき3,000ギラ

備考:稀に【毒性原生生物(ポイズンスライム)】が出現するため回復薬の携帯を推奨。

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


依頼書を受付へ持っていく。

今日の受付嬢はライラさんだった。


「ジークさんこんにちは。依頼受付ですか?」


「ええ、これをお願いします。」


「確認いたします……?かなり低ランクの依頼ですがよろしいですか?」


「ええ、今日はレベッカの実戦訓練も兼ねていますので。」


ライラさんは俺の背後に視線を動かす。


「成程。受付しますので少々お待ちください。」


どうやら受付してくれるようだ。

この辺り事情を知っているライラさんが受付で良かった。


「はい、受付終了です。お気をつけて。」


「ありがとう。」


依頼書とタグを受け取り、エルとレベッカの所へ行く。

そして皆でギルドを後にした。




◇◇◇◇◇




「よし、この辺りでいいだろう。」


依頼のあった平原に来た俺たちは適当な丘の上で足を止める。

遠目にゴブリンたちが居るのも見える。

非常に見晴らしのいい場所だった。


「ここなら私の【探索(サーチ)】も必要なさそうだな。」


「いや、そうでもない。【蠕虫(ワーム)】なんかは地面下から来るからな。外で油断できるところはないぞ。」


「む。理解した。」


「さて。レベッカだが、さっそく戦えるように鍛えて行こう。」


「はい!!」


「まず君の才能だが、【弓術】と【召喚術】の二重適性だ。」


【才能】についてはエル曰く神が与えた【呪い(カース)】らしい。

だが、その【呪い(カース)】も全員に、一つだけ与えられるものではないことは【無才】の俺が証明している。

そして彼女もまたその例外の一つの形だろう。


人族の間では15歳になると鑑定が出来るという通説があるが、その実、生まれた時から才能は与えられており、エルの【解析(アナライズ)】なら15歳未満でもそれを調べることが出来るらしい。

レベッカについては呪いの治療の際に【解析(アナライズ)】を使用しており、有する【才能】もその時に判明していたということを宿でエルから聞いている。

魔法の適性はありそうだとは思っていたが、武技関係の才能もあるとはいい方向に予想外だった。


「二重適性ですか…?」


「そう。そしてまず【召喚術】の才を活かしていくぞ。まずは【単眼翼幻獣(フロートアイ)】を召喚し協力を得ることを優先する。」


【召喚術】と言うのは異界から【幻獣】を召喚し、戦わせたり、戦闘や生活をサポートさせる魔法の一種である。

ただし、召喚獣の協力を得るには【召喚】に成功し、【契約】を交わす必要がある。


【単眼翼幻獣(フロートアイ)】は目に口と羽が生えた見た目は少しグロテスクな幻獣だ。

その瞳を使った幻術を得意としているが、召喚獣の中では弱い部類に入り、あまり人気はない。

だが、その能力の一つに『契約者に【遠視】の能力を与える』というものがある。

視力のないレベッカの目になる能力というわけだ。


召喚術は呼び出したい幻獣ごとに異なる魔法陣を描き、その魔法陣に魔力を通すことで発現する。

【召喚】に成功するかどうかは術者の魔力量と練度によるらしい。


「【単眼翼幻獣(フロートアイ)】の召喚魔法陣はこれだ。」


そう言って俺はレベッカに一枚の紙を渡す。

昨日ギルドの書物庫で調べた魔法陣を、指で触って分かるように、陣が描かれている部分を盛り上がらせたものだ。


「さあ、早速やってみよう。」

フロートアイは某RPGの黄色いあいつを思い浮かべてもらえればイメージ沸きやすいかと思います。


もう少し読んでみてもいいと思っていただけましたら評価、ブックマークよろしくお願いします!!

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