49.踏破者、報告する。
レベッカは意識を取り戻したばかりだったので、一旦ギルドで養生させることになり、俺とエルは領主邸へ向かった。
ギルド内であれば医療班もいるし、そっちの方が安心だろう。
領主への報告を終えたら迎えに行くと約束している。
そして領主邸でティア王女、オスガルド伯爵へ事の顛末を報告した。
2人には今回の首謀者の情報を伝えることについてはサイモンにも了承をもらっている。
なので王女の護衛には席を外してもらっている。
この応接室には今、先の2人と俺とエルの4人しかいない。
「そうですか。ヴァン侯爵が……。確かにヴァン侯爵は第二王子派閥ですし、オスガルド伯爵が協力を断ったことに対する凶行だとすれば筋は通りますわね。」
「しかし、だからといって街を壊滅させかねない手を打ってくるとは……。乱暴が過ぎますな。」
「それだけ王戦に本気だってことだろう。この魔道具が量産化されていれば他の陣営でも同じような被害が出ている可能性もあるな。」
「それについてはギルドの方が早く情報を得られるでしょうが、私の方でも不自然な溢れ出しがあったら報告いたしますわ。」
「ああ、助かる。それで2人に聞きたいことがあるんだが、ヴァン侯爵家の系列で魔道具作りに精通した組織なり個人に心当たりはないか?この魔道具の出所と、それに闇オークションを行っていた犯罪組織を潰したい。」
「……残念ですが、私の方ではなかなか上位貴族の情報は入ってこないですね……王女殿下はいかがですかな?」
「そうですわね……。確かヴァン侯爵の系列の研究所だったと思いますが、昨年王都の魔法学校の魔道具課を過去最速で卒業した天才が入所していたはずです。もしかすると彼かもしれません。」
「研究所ね……。可能性はありそうだな……王都についたら調べてみるか。情報感謝する。」
礼を言って立ち上がろうとしたが、エルがそれを制す。
「主殿、この護衛の旅にレベッカを連れて行く許可も必要ではないか?」
言われて気付く。
そりゃそうだ。
旅路に見ず知らずの人間を連れて行くというのだ。
ティアの許可は必須だな。
「エルお姉さま、私は構いませんわよ?まだ未成年ということであれば、面倒はそちらで見ていただくことにはなりますが……。」
ティアは若干気まずそうにしているが、それは当然の話だ。
彼女が連れている従者は、同行者の身の回りの世話を仕事としているわけではないのだから。
「それは分かっている。エルとメルとリルもいるし、こちら側で何とかなるだろう。」
「そのメンツの中に、自然に私を入れないでほしいのだが?」
横から冷たい視線を感じるが、俺は至ってまじめだ。
ハーフエルフであれば、才能にもよるが魔法系統の可能性は高い。
であれば、教育係はうちではエル一択になるからだ。
「そういうことであれば問題ありませんわ。ただ……。」
「ん?何か問題があるか?」
「いえ……。そう行うわけではないのですが、被害者とはいえ見ず知らずの少女を引き取るとはずいぶんお優しいなと思ってしまいまして。」
あー、それは確かにそう思われても仕方ない。
ただ、優しさで手を差し伸べたわけではない。
「そうだな、ちょっとした気まぐれだと思っておいてくれ。なんというか、身の上話を聞いた時の想い?に共感できるところがあっただけだ。」
「そうですか……。私はてっきり……。」
そう言ってティアは口ごもる。
なにかあるのだろうか?
「ハーフエルフということなら容姿も整っているでしょうし、ジークさんは……幼女趣味なのかなと。」
「俺の評価暴落が止まるところを知らねぇ!!」
この王女さま、頭ピンク過ぎじゃねぇか!!
こんなのが王戦に勝ったりしたらと考えると、この国の未来が心配になってきた……。
さすがに俺でも好みだからって人一人引き取ったりしないぞ!?
「はぁ、なんか疲れたわ。これからその子を迎えに行くんだが、この街にはどれくらい滞在するんだ?」
「そうでした。まだお伝えしていませんでしたわね。今回の一件も一段落したので明後日に出発することにいたしました。」
「明後日ね。了解。じゃあまた何かあれば連絡くれ。」
そう言って今度こそ俺は席を立つ。
エルと共にレベッカを迎えに行くのだった。
◇◇◇◇◇
「ジーク様、お話よろしいでしょうか。」
夜も更け、宿の部屋で寛いでいるところにシルバが声をかけてきた。
なお、レベッカが加わったことで部屋は3部屋(ジーク&シルバ、エル&レベッカ、メル&リル)になっている。
地味に出費も増えてきているのだが、ギルドからの報奨金もあるししばらくは大丈夫だ。
「どうしたんだ?改まって。」
シルバは俺の分の紅茶を置き、失礼しますと言って向かいの席に座る。
「レベッカ殿の過去の話を聞いた時に思い出したことがありまして。」
「ほう?」
「少し前なのですが、ハーフエルフが出品されるオークションがあるとフレンブリード辺境伯に売り込みをかけてきている人物がいました。」
俺はシルバをまっすぐ見据える。
「その人物は?」
「辺境伯家に売り込みをかけてきていた商人で、確かエマゴール商会と言っていたと思います。」
なるほど、奴隷オークションも買い手が集まらなければ値はつかない。
金を持っている、かつ後ろ暗いこともやる貴族のところにはそういう輩も来るのか……。
「関係があるかは確証はありませんが、可能性として覚えておいていただければと。」
「ああ、わかった。これからも何かあれば遠慮なく言ってくれ。」
俺が頷くのを見てシルバは席を立つ。
俺は窓の外、黒が支配し始めた空を眺めながら商会名を脳に刻んでいた。
エマゴール商会、現実にあったら申し訳ございません。
本作の商会とは何の関連もありません。
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