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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
メガマウスの章

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第79話 生きた化石の知恵袋


ここは、アクアリス達が暮らしている。オープン前の第三アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。


第三アクアリス水族館 古代水生生物模型展示エリア。


巨大なシーラカンス模型の前。


メガマウスザメとシーラカンスは並んで展示を眺めていた。


静かな時間だった。


古代魚の模型が並ぶ通路には落ち着いた空気が流れている。


メガマウスザメはふと壁際の展示へ視線を向けた。


そこには様々な化石のレプリカが並んでいる。


三葉虫。


アンモナイト。


魚類の顎骨。


古代の海を生きた生物たちの痕跡。


「......これ......全部本物じゃない......よね?」


シーラカンスは頷いた。


「うむ。大半はレプリカじゃな」


「本物は貴重だからの」


「......なるほど......」


メガマウスザメは展示ケースへ近付く。


透明なケースの中には大きなアンモナイトの模型が置かれていた。


渦を巻く殻。


美しい模様。


何千万年も前の海に存在した生物とは思えないほど綺麗だった。


「......不思議......」


「今の海にはいないのに......」


「こうして残ってる......」


シーラカンスは微笑む。


「だから化石は面白いのじゃ」


「生き物は消えても」


「生きた証は残る」


「それを見て後の者たちが学ぶ」


「命は案外消えぬものじゃよ」


メガマウスザメは静かに聞いていた。


シーラカンスの話は難しくない。


けれど心に残る。


長い年月を知る生き物だからこそ言える言葉のように思えた。


その時。


近くに設置されていた大型モニターへ映像が流れ始める。


古代の海の再現映像だった。


巨大な魚たち。


無数のアンモナイト。


見上げるほど巨大な海生爬虫類。


青い海の中を悠々と泳いでいる。


メガマウスザメは目を瞬かせた。


「......大きい......」


「うむ」


「昔の海には巨大な生き物が多かったようじゃな」


「......羨ましい......」


「ん?」


「......私も......大きい方だけど......」


「もっと大きい生き物がいると......少しわくわくする......」


シーラカンスは思わず笑った。


「確かにの」


「巨大生物というのは浪漫じゃ」


「......ろまん......」


「うむ」


二人はしばらく映像を見続ける。


巨大な海。


巨大な命。


今とは違う世界。


だが確かに存在していた世界。


映像が終わる頃にはメガマウスザメの目が少しだけ輝いていた。


「......面白かった......」


「それは良かった」


シーラカンスはゆっくり歩き出す。


展示エリアの奥へ。


そこには進化を解説するパネルが並んでいた。


魚類から様々な生き物へ繋がる系統樹。


海から陸へ。


そして再び海へ戻った生物たち。


メガマウスザメは興味深そうに眺める。


「......生き物って......複雑......」


「うむ」


「じゃがその複雑さが面白い」


「みんな違うからこそ面白いのじゃ」


シーラカンスは展示を指差した。


「見てみるのじゃ」


「この魚も」


「この魚も」


「皆違う」


「しかし全部海から始まっておる」


メガマウスザメは少し驚いた。


「......全部?」


「うむ」


「遠い昔を辿れば皆仲間みたいなものじゃ」


「......そうなんだ......」


その言葉にメガマウスザメは少し考える。


深海魚も。


熱帯魚も。


クラゲも。


タコも。


ペンギンも。


皆どこかで繋がっている。


そう考えると不思議な気持ちになった。


「......アクアリスも......?」


シーラカンスは少し考えてから答える。


「それは分からぬな」


「だが」


「同じ水族館で暮らしておる以上」


「仲間であることは確かじゃろう」


その言葉にメガマウスザメは小さく頷いた。


「......うん......」


穏やかな時間が流れる。


古代生物展示エリアは他の場所より静かだ。


だからこそ落ち着いて話ができる。


しばらく歩いていると。


展示の隅に小さなベンチが置かれているのが見えた。


シーラカンスは腰を下ろす。


「ふぅ」


「......疲れた?」


「いや」


「少し休憩じゃ」


メガマウスザメも隣へ座った。


静かな空間。


聞こえるのは空調の音だけ。


シーラカンスは天井を見上げた。


「のう」


「......?」


「昔の海を想像するのは楽しい」


「じゃが今の海も十分素晴らしいと思わぬか?」


メガマウスザメは少し考えた。


そして答える。


「......うん」


「......みんながいるから......」


「今の海も好き......」


シーラカンスは満足そうに笑った。


「それで良い」


「古代に憧れるのも良い」


「だが今を好きでいることも大切じゃ」


メガマウスザメは静かに頷いた。


古代の海。


現代の海。


どちらも魅力的だった。


展示を見ていたおかげで少しだけ世界が広がった気がする。


その時。


遠くから開館準備をする飼育員たちの声が聞こえてきた。


朝の作業が本格的に始まったらしい。


シーラカンスは立ち上がる。


「さて」


「そろそろ行くかの」


「......うん......」


二人はベンチから立ち上がった。


古代生物たちの模型が並ぶ通路。


その中をゆっくり歩いていく。


生きた化石と呼ばれる魚と。


深海に暮らす珍しいサメ。


少し変わった二人の会話はまだまだ続きそうだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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