閑話 即位から25年後のアルサ
☆☆☆日本2010年代、某大学政治同好会
ある国で、軍人がクーデターを起こし、政権の中核にいました。
その軍人は革新的思想の持ち主でした。
民主化を行い。
農地改革も行い。地主を解体しましたが、急進的な改革は混乱を招き。
各地で武装ゲリラが、出没するようになりました。
その軍人は、自ら作った民主主義の制度により失脚し、少し混乱した後、新たなカリスマが生まれました。
しかし、最初の方こそ世界でも歓迎されましたが、
その人物は、現代のヒトラーと言われるようになりました。
憲法裁判所を停止し、ジェノサイドは、貧困解決のための避妊手術として名を変え、半ば強制的に行いました。国連や日本も支援しました。当時は分からなかったのです。
貧困層は、ある特定の民族に多かったのです。
形を変えたジェノサイドとも言われています。
この一連の動きは、20世紀末から、21世紀に掛けて行われました。
ナチス的なものは、決して、遠い過去のものではないのです。
「貴女ね。そんな話は、マスコミで報道されていないわよ」
・・・そう、この話は、海外のマスコミでは報道される。日本のマスコミでは全く報道されない。
「それよりも、日本のヒトラーはどうするのよ。知子は、デモに参加するの?」
・・・あの国で、指導者をヒトラーと言ったら、逮捕状無しで、射殺されるまであるのに、
「しないです。申し訳ありません」
「チィ、何だよ。全く、これからは、若者の時代だ!」
「そうよ。国会前でデモを起こすわよ!」
実を言うと、
私は幼少の頃、あの国にいた。父の仕事の関係で、母と一緒に行った。
最後、政権末期、治安が悪くなって、帰国する前に、首都で強盗にあった。
「(おい、お前ら、日系人か?金を出せ!)」
銃だ。初めて見た。驚きだ。何も感じない。あまりに現実味がない。
父さんと母さんは?
やはり、呆然としている。
その時、痩せたお爺さんが飛び出てきた。
「(おい!お前ら何をやってんだよ!こんな小さな子がいるのに、恥ずかしくないのか?戦士の誇りはどこにいったのだ!)」
「(だってよ)」
「(いいから、お前ら、逃げろ!)」
「ヒィ、有難うございます!」
言葉は、通じないが、目線や仕草から分かった。
あのお爺さんは、強盗に向かって、体を張り守ってくれている。
腕が、まるで、大リーガーの観客のように動く。
あっちに行けということだ。
その後、日本に戻った。
日本では、あの国の事を調べても、良いことしか報道されていない。
だから、我家では、海外のテレビをネットで見るようになった。
「あのお爺さん。無事かしら」
「ああ、ああいう勇気のある人もいるのだな」
``今日の特集は、ナチスがどうやって政権を取ったかです``
「また、ナチス特集だね」
欧米人は、ナチスが好きかと思えるほど、このテレビチャンネルでは、ナチス特集が行われている。
彼らにとっても、遠い過去ではないようだ。
私は、貧困を解消する方法に興味を持つようになった。
昭和初期の青森の菊池さん。この人は徴兵で、外の世界を見て、自分の村の貧しさを実感し、共済組合を立ち上げ。政府に経済更生村として、表彰までされた。
その時、コミンフォルムは、ルイセンコ農法を実証しようとしていた。
あの悪名高き。餓死者を沢山出した農法だ。スターリンのお気に入りと言うだけで採用された農法で、進化論に共産主義の思想を入れたものだ。
作物を密集して植えれば、植物は、資本主義的な競争を行わずに、仲良く栄養を分け与え。少ない栄養でも育つように進化するとか言うトンデモ説だ。
思想はだめだ。革新も保守も信用できない。
いつか。あの国に行ったときに役に立つかもしれない。
コンチネンタル航空の立ち直り。
日本の庄屋の経営方法、
などなど、
日本の商社に就職し、いつか、あのときの恩返しを出来たらと思っていたら、
事故に遭い。
☆☆☆ジムザー王宮
「気がついたら、この世界に転生していたみたいなの」
「母上、転生者だったのですね。父上はご存じだったのですか?」
「ああ、教えてもらったさ。結婚を申し込んだ後だが、少しも後悔していない」
「私は、正しく政治を行ってきたつもりだけど、どうしても、見落としや、偏りもあるものなのよ。
人は、自分が絶対に正しいと思うと、残酷になれるみたいね。だから、少し、間違いがあるかもと思うのよ」
「はい、分かりました・・・でも、母上の治世は、緩やかな経済曲線を描いていますよ」
「それでも、取りこぼした人たちがいるのかもしれない。だいたい、25年が限界かもね。だから、譲位します!」
「母上」
「陛下・・・」
「母上、本音は?」
「フフフ、ハインツと、ベッキーとで、生活防衛ギルドを、王国全土に広げるわ。民はある程度、豊かになったわ。昔は、労務の供出だったけど、今度は、安い会費で、運営できるようにしたいの。でも、その前に、一月ほど、ハインツと旅行します」
この世界の善良な民を守ろうと決意するアルサであった。
この後、世界に先駆け。生命保険ギルドが誕生することになる。
最後までお読み頂き有難うございました。