表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/23

**県警での取り調べ

「佐藤太郎、取り調べだ。出ろ」


**台第五住宅の惨劇の翌朝。


**県警本部内の留置所に片桐と工藤が現れた。

ここに留置されているのは藤太だ。


「保久、それと片桐さんか?俺はお前たちの命を救ったのに、なんでこんなところに放り込んだんだよ」


「いいから取調室に来い。話はそれからだ」片桐が答える。



殺風景な取調室に座らされた藤太の前に、机を挟んで片桐と工藤が着席した。


「佐藤太郎、お前に命を助けられたのは事実だ。それは感謝している。しかし事はそう単純じゃないんだよな」片桐は説明する。


「あの狼男と吸血女の夫婦な、あいつらあれでも人間としての身分があるんだよ。夫は松原清、妻は同妙子。76歳と73歳の老夫婦だ」


「ふーん。そんな歳には見えなかったけどな」


「やつらは不老不死だからな。しかし表向きこういうことは世間に公表できない。するとお前のしたことは殺人なんだよ。正当防衛が成立する可能性は高いが、それにしても手続きはややこしい」


「じゃあ、俺はどうなるんだ?」


「それは上の判断を仰がなきゃならん。しかしその前にお前には聞きたいことが山ほどある。手始めにお前は何者だ?なんで人狼を凌ぐほどの力を持っている?そしてどうしてあの現場にあらわれた?」


「話してもいいが、警察に理解できる内容じゃないと思うぞ」


片桐は工藤と顔を見合わせて目で頷き合った。


「お前も薄々は気づいていると思うが、俺たちは所轄の警察官じゃない。警察庁直轄の公安特務機関だ。通常の警察の手に余る、超常的な事件が専門だ。Xファイルとか見てたか?あれの日本版だと思ってくれ」


「なるほど」


「だから、普通の警察官の頭では理解できない不可思議な内容の話でも、ある程度は理解できると思うよ」


「ふーん。そういうなら詳しく話すけどね」


1時間ほどかけて藤太はこれまでのあらましを洗いざらい話した。

その内容を工藤保久が無言でノートパソコンに打ち込む。


話を聞き終わった片桐は取調室の天井を見上げながら言った。


「うーむ・・にわかには信じがたい話だが辻褄は合うな。するとお前は俵藤太という平安時代の武将の生まれ変わりで、ウチの工藤は賀茂保久という陰陽師(おんみょうじ)の生まれ変わりってことか。工藤、お前にその記憶はあるか?」


「いえ、私に前世記憶はありません。しかしこの男には何か覚えがあるような気がする。そして私に生まれながらの霊視能力があるのは事実です。そのせいで子供のころはずいぶん親に心配かけました」

工藤が答えた。


「まあ、とにかく話は分かった。この取り調べの内容は我々の本部長である高橋警視正が今読んでいるはずだ。部長は夕方ごろにはここに到着してお前の身の振り方を決めてくれるだろう。それまではまた留置所でくつろいでいてくれ」


「おいおい、またあそこに放り込むのか?」


「少しの時間だ。我慢しろ」

言うと片桐は所轄の警察官を取調室に呼んだ。


「佐藤太郎を留置所に連行してくれ」



「兄ちゃん、あんた何をしてここにブチ込まれたんだ?」

留置所に一緒に放り込まれている、ヤクザ風の初老の男が藤太に尋ねる。


「殺人だそうだ」


「コロシか。誰をどうやってバラしたんだ?」


「バケモノを刀でぶった切った」


「何、長ドスで斬ったのか?兄ちゃん、どこの組のもんだ?」


そこに警官がやってきた。


「佐藤太郎、出ろ」


留置所を後にする藤太の背後からヤクザ者が声を掛ける。


「長い努めになるな。ご苦労様です」



留置所を出たあと通されたのは、今度は取調室ではなく立派な応接室のような部屋であった。


部屋には高価そうなスーツを着た40代前半くらいの、いかにも精悍な風貌の背の高い男が立っていた。

その傍らには片桐と工藤も立っている。


「君が佐藤太郎君か、そこに掛けたまえ」


男は藤太にそう言うと、自らもソファーに腰を降ろした。片桐、工藤は立ったままだ。

藤太は男の向かいの席に座る。


「私は警察庁直轄公安部長の高橋忠(たかはしただし)警視正だ。君の調書はすべて読んだ」


「それはどうも」藤太は無表情で応じる。


「俵藤太=藤原秀郷の生まれ変わりだって?片桐君、知っているか?俵藤太を」


片桐は直立したまま答える。


「いえ、知りません」


「不勉強だな。あの平将門を討伐した武将だ。近江の国を脅かした三上山の大ムカデを退治し、その他にも当時の鬼や妖魔を退治した、まさに妖魔退治のエキスパートだよ」


高橋の説明を聞いて藤太はかなり気を良くした。


「よく知っているな。それで俺の身柄はどうなるんだ?高橋さん」


「それなんだが・・・」高橋は藤太に向き直った。


「**台第五住宅の事件はあまりに派手すぎてね、隠ぺい工作に手間取りそうなんだ。あの夫婦はちょうど全共闘世代だから極左過激派の犯行ということで片付けようと思うが、目撃者も多数居るので始末しなきゃいけない」


「おい、始末ってまさか殺すのか?」


「いやいや、我々はこれでも警察だよ。民間人を殺すなんて出来ない。とりあえず彼らには入院してもらう。そこで少々記憶をいじらせてもらってから退院させることになるだろう。そして君の身柄だが・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ