第2話 麓洋館殺人事件
*主な登場人物*
<メインキャラクター>
・日裏 零一 25歳 男性
主人公。諮問探偵。
・日隠 雪 19歳 女性
零一の助手。
・蛇塚 晃侍 25歳 男性
警視庁の刑事。階級は、警部補。
・絞結 歩 23歳 女性
ルポライター。
<追記のメインキャラクター>
・日食 皆斗 23歳 男性
零一の助手。
・太陽寺 白夜 34歳 男性
零一の知り合い。準日本四大企業の1つである"太陽寺グループ"の会長。
<事件関係者>
・大安 良太 18歳 男性
西陽高校の3年生。
・国友 引彦 18歳 男性
西陽高校の3年生。準日本四大企業の1つである国友商事の会長の息子。
・島先 勝斗 17歳 男性
故人。西陽高校の生徒。
・島先 負実 16歳 女性
西陽高校の2年生。
・赤口 陰人 17歳 男性
西陽高校の3年生。
・大仏 滅子 17歳 女性
西陽高校の3年生。
☆麓洋館殺人事件☆
(2月14日のバレンタインデーの日の午後5時。"西陽高校"のベランダで、1人の男子生徒が転落死した。そして、この件は、将来の不安による自殺として処理された。しかしこの時、その場にいた全員は、知る由もなかった。この自殺事件が、悲しき連続殺人事件の引き金になっていたことを。)
サイレンサーがついている拳銃を持った人物が映し出される。
* * *
審議館での事件から、3日後のある日。零一の元に、1人の男性が訪れた。
「零一様。お客様です。」
雪がそう言った後、その人物を零一のところへ案内した。
零一は、読んでいた"声高富興の殺害事件"の記事を閉じて、その人物に話しかけた。
「おや、あなたでしたか。それで、今回は、どのようなご用件でこちらに。白夜さん。」
零一の元に訪れた男性の名前は、太陽寺 白夜。太陽寺グループの会長で、零一の知り合いだ。
「あの、すみません。白夜さん?」
白夜に話しかけたのは、皆斗だった。彼は、審議館の後、彼の要望もあり、零一の助手として、働くことになった。
「もしかして、準日本四大企業の1つの太陽寺グループの会長。太陽寺白夜、ご本人ですか?」
「その通りだが、君は?」
「日食皆斗です。今日からですが、師匠、いえ、零一さんの助手をさせていただいています。」
「そうか。この男の助手となると、大変だと思うが、頑張りたまえ。」
「は、はい。」
皆斗は、背筋を伸ばし、両手をしっかりと体にくっつけて、返事をした。その後、零一を見て、
「あ。すみません。話の邪魔をしてしまって、僕は、これで失礼します。」
皆斗が部屋を出ると、零一が話を切り出した。
「それで、ご要件は何ですか?」
「依頼だ。」
「何の依頼ですか?」
「明日、太陽寺グループと同じ準日本四大企業の1つである国友商事の会長・国友 照星氏の息子、国友 引彦氏が、大阪府西陽市にある国友家が所有する山の麓にある洋館で、彼の友人たちとお泊まり会をするらしい。」
「国友?いや、そんなことより。まさか探偵に、その引彦さんの護衛を依頼するというわけではありませんよね?」
「護衛については、おまえの友人の刑事に無理を言ってお願いをしたが、一応は、依頼は、護衛という名目でもある。だが、お前に依頼をしたのは、万が一の時のためだ。」
「万が一の時?それは、どういうことですか?」
「実は2ヶ月前、引彦氏の通っている西陽高校で、彼の友人が自殺するという事件が起こっている。」
「自殺事件?その自殺事件に、引彦さんが関わっていると?」
「それについては、断言できない。これと言って、確証はないからな。だが、万が一という可能性も捨てきれない。だから、あなたに依頼をしに来たんだ。日裏零一。」
「・・・。」
零一は、黙って白夜を見ていた。
「私は、アンタの実力については、信頼している。どうかこの依頼。引き受けて欲しい。」
「・・・。分かりました。お引き受けいたします。」
「・・・。感謝する。依頼料については、後日また連絡をする。では、失礼する。」
白夜は、そう言うと、退出した。
「国友商事、か。」
零一は、そう呟いた。
* * *
翌日の昼前、零一、雪、皆斗の3人は、例の洋館の前に来ていた。零一がチャイムを鳴らそうとすると、1人の男性が近づいて来た。その人物は、国友引彦のようだ。
「あんたが、太陽寺会長が言ってた探偵さんかな?」
「はい。その通りです。」
「太陽寺会長も、余計なことをしてくれるよ。せっかく、仲良しグループだけで、楽しめると思ったのに。ま、とりあえず中に入りな。せっかく来てもらったのに、追い返すのは、流石に失礼だからね。」
引彦は、偉そうに言っていた。
「それじゃ、お客様の案内をお願い。えーと、名前は、まあ、どうでもいいか。あとは頼んだよ。臨時の使用人さん。」
引彦は、そう言うと、洋館の中に入った。そして、眼鏡をかけた男性の使用人らしき人が話しかけた。
「日裏零一様御一行様。今日は、よろしくお願いします。」
「はい。よろしくお願いします。・・・、ん?」
零一は、そう言った。だが、零一、そして、雪は、その使用人の声を聞いて、何か不思議そうな顔をした。そして、その使用人が、2人の顔を見ると、「クスッ。」と、笑ったような顔をした。
「やっぱり、2人なら勘付くと思った。」
「・・・、あ。」
零一と雪は、気が付いた。その声は、女性の声だったということであったが、そのことではない。その声が、知り合いの声だったことに気づいたのだ。そして、使用人が顔を上げて、眼鏡を外すと、
「全く、こんなところで何をしているんだ?歩。」
零一がそう言った。
歩は、零一の顔を見て笑っていた。
「まあ、色々あってね。詳しいことは、中で話すわ。」
歩がそう言うと、4人は、洋館の中に入った。
* * *
4人は、洋館の中を歩いていた。
「それで、なんでお前がここにいるんだ?」
零一が、歩に尋ねた。
「それは、あんたたちが来ることを昨日電話で、晃侍から、聞いたからよ。」
「晃侍から?・・・、それで?」
「それでね。つい、気になって、ここのことを調べたら、臨時の使用人の募集があったから、それに応募して、来ちゃった。と、言うわけ。」
「なるほどな。まあ、そんなことだろうと思った。」
しかし、皆斗は、気になったことがあったのか、歩に直接、尋ねた。
「ところで、歩、さん。なんで、男性用の服を着ているですか?」
歩は、その問いに、笑いながら答えた。
「それはね。ただの趣味よ。」
「え?」
皆斗は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして言った。
「歩ちゃん。男装をすることが趣味なの。」
雪がそう言った。
「そういうこと。実際、ウケは良かったわよ。今日、ここに来ている人たちには、特に。」
「へっへー。そう、なんですか?」
そんな会話をしていると、大広間と書かれたドアの前に着いた。そして、そのドアを開け、部屋の中に入った。中には、引彦を含めた5人の男女が食卓についていて、昼食を食べていた。
引彦を含めた5人は、零一たちを見た。数秒の沈黙が流れたがその中の男性1人が、話を切り出した。
「あのもしかして、皆さんが、引彦の言ってた探偵さんと、そのお連れの方々ですか?」
その人物は、右手を挙げてそう言った。
「あ。私、引彦君の友達で、大安 良太といいます。今日は、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく。」
零一は、右手を首元に当てて言った。そして、良太に続いて、その他の人物たちも自己紹介を始めた。
「そういえば、俺様の名前を言ってなかったな。まあ、あんたたちは、知っているだろうが、念のために、自己紹介をしよう。俺は、国友引彦。準日本四大企業の1つである国友商事会長の息子であり、次期後継者でもある。」
「それじゃ、次は私かな?私の名前は、大仏 滅子。今日は、よろしくお願いします。」
「僕は、赤口 陰人。」
「私は、島先 負実。今日は、よろしくお願いしますね。」
全員が自己紹介をし終わると、「ゴーン。ゴーン。」という音が、大型の置き時計から、聞こえた。全員がそれを注目した。
「ああ、その時計。1時間経つと、音がなる仕掛けになっているので、あまり気にしないでください。」
滅子がそう言った後、零一が、スマホの時間を見ると、"13:01"にちょうどなった。
すると、引彦は、
「ご馳走様。使用人。後片付けよろしく。」
と、言うと、大広間を出ていった。それに続いて、良太、滅子、負実、陰人の順番で、大広間を後にした。
歩は、食器の片付けを始めようとした。
「私も手伝う。」
雪がそう言った。
「いいの?雪ちゃん。一応、お客様だけど。」
「別にいいよ。私にできることなんて、これくらいしかないから。」
「そう、ありがとう。」
その後、零一は、自身が泊まる部屋に入った。窓を覗くと、少し遠くではあるが、海が見えていた。
(まぁ、普段は、使用人が寝泊まりする部屋だから。大広間と比べると、粗末な感じではあるが、仕方ないか。)
零一は、そう言いながら、部屋にあった机の引き出しをなんとなく開けた。中には、ハサミやカッターナイフ、タバコやオイルライター、ポールペンに、メモ用紙などが入っていた。
時刻は、午後2時半になった。引彦は、自身の部屋に入って、スマホをいじっていた。どうやら、負実とメッセージのやり取りをしているようだった。
「全く。この女、ほんとバカだよな。"アイツ"の自殺の理由を勝手な思い込みをして、さらには、こんなことをしようとしているんだから。まあ、対して、金も持ってない庶民をいじめるのは、楽しいからこっちとしては、別にいいんだけど。」
すると、ノックの音が聞こえた。
「あん。一体、誰だ?」
引彦は、そう言いながら、移動し、ドアを開けた。
「なんだ。お前か。」
目の前にいた人物に向かって、そう言った次の瞬間、「パンッ。」と言う小さな音が聞こえ、その数秒後、引彦は、その場に倒れそうになったが、ドアにもたれかかった。そして、その人物は、ドアを閉じた。
時刻は、午後6時半になった。歩と雪は、作った夕食を大広間のテーブルの上に並べていた。引彦以外の人たち全員が、食卓に並んでいた。
「引彦さん。遅いですね。」
皆斗がそう言った。
「気にしなくていいですよ。引彦はいつも、夕食は、1人で食べているから。」
良太がそう言った。
「そうなんですか?」
皆斗がそう言った。
「ええ。家でもそうしているって、本人から聞きましたし。それにいつも、午後7時を過ぎたら、緊急時以外を除けば、翌朝になるまでは、ずっと部屋にこもっていると、いうことも聞いてます。その証拠に、さっき、絞結さんが、あいつの部屋の前に、夕食を置いていましたから。」
皆斗と良太がそう話をしていた。その時、零一は、2人の会話を聞きつつ、陰人と同じで、窓の外に見える噴水を見ていて、滅子と負実に関しては、2人ともスマホをいじっていた。すると、
「なんかちょっと、退屈だから。誰か、面白いことしてくれない?」
負実がそう言った。
「あんた、何かしてくれない?」
しかし、誰も反応もしなかったため、負実は、滅子に言った。
「・・・。」
滅子は、無視をした。
「チッ。それじゃあなた、なんかやって。一発芸でもなんでもいいから。」
負実は、舌打ちをしたが、皆斗に矛先を向けていった。
「それじゃ、3、2、1。」
カウントダウンを始めた。皆斗は、焦ったそぶりをした後に、言った。
「えーと。"龍の滝登り"。」
皆斗は、左手を蛇のような形にして、それを上に上げてそう言った。皆斗は、一生懸命だったが、
「つまんな。」
負実がそう言い、
「・・・。」
陰人は、無表情で皆斗を見て、
「えーと、それいうなら、"鯉の滝登り"なんじゃないのかなー?」
良太は、気まずそうにツッコミをし、
「ハァー。」
滅子は、ため息をついた。
「やるんじゃなかった。」
皆斗は、部屋の隅で、うずくまった。
「これ、使いますか?」
皆斗のそんな姿を見て、同情したのか、陰人は、ナプキンを渡した。
「あ、ありがとう。」
皆斗は、それを受け取ると、鼻をかんだ。」
そして、全員が夕食を食べると、各々の部屋に戻った。零一たちは、零一と皆斗、雪と歩という感じで、2人部屋になっていた。
午後9時になった。零一は、皆斗が部屋の風呂に入っている間に、スマホの通話で、晃侍と話していた。
「今どこにいるんだ?」
零一がそう言った。
「まだ、大阪の本庁だよ。急な事件に巻き込まれて、その取り調べがまだ続きそうでな。終わって、そこに着く頃には、早朝になっているよ。」
「そうか。お前もお前で、大変だったんだな。」
「まあ、白夜さんの頼みでもあるから、早朝近くになったとしても、一応は、行くつもりだ。」
「そう、分かった。それじゃ、また明日。」
「ああ、また明日。」
通話が切れた。
(何も起こらないと良いけれど。)
零一は、星見えない曇りの空を見て、そう思った。すでに、事件が起こっていることに気づかず、さらなる惨劇が起ころうとしていることにも気づいていなかった。
時刻は、ちょうど午前0時になった。負実は、就寝しようと布団の中に入ろうとすると、ノックの音が聞こえた。それを見て振り返ると、ドアの隙間から、1枚の紙が投入された。
「何?」
負実は、それを拾って、書かれている文字を見た。そして、部屋を出ると、洋館の外にある噴水近くにやって来た。
「全く、こんな時間に呼び出して、いったい、なんなのよ。しかも、寒いし。」
春とはいえ、4月の半ば頃なので、夜は冷える。しかし、そのことに注意が向いてしまったのか、彼女は、背後に迫る殺意に、気づいていなかった。
その人物の手には、サイレンサーを付けた拳銃を持っていて、それをビニール袋に入れ、その袋の口を白い手袋をした手の手首と一緒に縛っていた。そして、音を立てずに、負実に近づくと、その手にかけていた引き金を引いた。
翌日の午前7半になった。零一たちは、3人を除いて、全員が大広間にいた。
「遅いな。引彦と負実さん。」
良太がそう言った。
「あれ?赤口さんは?」
皆斗がそう言った。
「陰人なら、まだ寝てるんじゃない?アイツ、休日は、いつもお昼まで寝てるから。」
滅子は、窓の外を見ながら、そう言った。そして、下の噴水を見た。
「え?」
滅子は、急に驚いた声を出した。
「俺。引彦を起こして来ます。」
良太は、滅子の様子に気づかず、大広間を出た。
「大仏さん。何か、変なものでも、あったんですか?」
歩がそう言った。
「あっ、あれ。」
滅子が指を刺すと、その先には、噴水に溜まっている水が、赤くなっている光景だった。
「なっ、何あれ?」
雪がそう言った。
それと同時に、良太は、引彦の部屋の前に来ていた。
「おーい。引彦。朝だぞ。起きろ。」
ドアを叩いていたが、返事がなかった。そして、ドアノブを引っ張るとドアが開いた。
「あれ、開いてる?」
すると次の瞬間、良太は、何かの匂いを感じたのか、鼻を摘んだ。そして、中を見た。
「う、うぁぁぁー。」
良太の悲鳴が洋館の中に響き渡る。
「なっ、何?今の悲鳴。」
皆斗がそう言った。
「俺は、大安のところに行く。歩、お前は、噴水のところに行ってくれ。」
零一は、そう言った後、急いで、引彦の部屋に向かって、大広間を出ていった。
「あ、私(僕)も行きます。」
雪と皆斗は、そう言って、零一について行った。
「私たちも行きましょう。」
歩は、そう言うと、滅子と一緒に、噴水の方に向かった。すると、その途中で、
「はぁー。何かあったんですか?なんか、大きな声が聞こえたんですが?」
陰人が、部屋から出て来た。寝起きなのか、あくびをしていた。
「話は後、あんたも来なさい。」
滅子は、陰人の手を握りしめて、連れて行った。
「なだ、何?」
3人が、洋館から出ると、歩は、人にぶつかった。
「痛っ。」
歩が顔を上げると、それは、晃侍だった。
「さっき、中から悲鳴が聞こえたが、何があったんだ。」
晃侍がそう言った後、歩が言った。
「説明は、後。とりあえず今は、噴水のところまでついて来て。」
その頃、零一たちは、引彦の部屋の前に来ていた。良太は、腰が抜けたのか、床に座り込んでいた。
「大丈夫ですか?良太さん。」
皆斗がそう言った。
「お、俺は、大丈夫。でも、引彦は。」
それを聞いて、零一は、部屋のドアを開けた。するとそこには、ドアのすぐ近くで、血まみれとなって、倒れている国友引彦の姿があった。
零一は、脈を取るために首に手を当てた。
「零一様。引彦さんは?」
雪がそう言った。しかし、零一は、首を横に振った。
「ダメだ。亡くなってから、かなり時間が経過している。」
零一は、引彦の心臓付近を見た。
(凶器は、おそらく、拳銃。心臓を撃ち抜かれているところと、ドア付近で倒れていて、移動した後もないことから、即死で間違いないか。)
零一たちが、引彦の死体を発見している時、晃侍と歩たちは、噴水のところに来ていた。
「なっ、何だこれ?」
晃侍は、噴水の水が赤くなっているのを見て、そう言った。
「まっ、まさかこれ。血じゃないよね?」
滅子がそう言った。
「とりあえず、水を抜いてみましょう。」
歩がそう言うと、陰人は、噴水のブロックを1つ抜き始めた。
「何をしてるの?」
歩がそう言った。
「このブロックを抜くと、噴水の水が抜けるって、引彦が言ってたので。」
陰人が言った。
「私も手伝う。」
滅子は、そう言うと、陰人を手伝った。そして、ブロックを抜くことができた。すると、その隙間から、噴水の水が流れ出した。
歩たちは、水が無くなった噴水を見ると、そこには、島先負実の姿があった。晃侍は、噴水に入って、手首を掴んで、脈を取った。しかし、首を横に振った。
* * *
同日、午前10時半。全員は、大広間に集まっていた。
晃侍が中に入ると、良太が聞いた。
「あの、刑事さん。地元の警察の人たちは、ちゃんと来るんですよね?」
「はい、もちろん。現地の警察とは、連絡が取れて、今こちらに向かって来ています。ですが、山の麓であるため、到着に1時間は、かかるそうです。」
「そっ、そうですか?」
良太は、視線を下に向けた。
「零一、歩、そして、雪ちゃん。こっちに来てくれ。」
晃侍がそう言うと、2人は、大広間を出た。
「で?何か、分かったことはあるか?」
零一がそう聞いた。
「来たばかりで、まだはっきりとしたことは、分からないが、状況的に考えて、外部班の可能性は、高い。」
「なぜ?そう思うのですか?」
雪が、晃侍に尋ねた。
「そう思った理由は、2つある。まず1つ目は、2人を殺害した凶器つまり、拳銃が洋館の中を隅々まで調べても、発見できなかったことだ。」
「なんで、2人を殺害した凶器は、拳銃だって分かったの?」
歩が、晃侍に尋ねた。
「2人の遺体を調べたところ、銃創の痕があった。零一も確認したから、おそらくそれが死因で間違いない。それに、2人とも、心臓を打たれて、即死だった。」
「それで、2つ目は?」
零一が、晃侍に尋ねた。
「2つ目は、洋館の塀の外側と内側にそれぞれ塀を登ろうとした時についたと思われるつま先だけの足跡と、塀の上から地面に着地した時についたと思われる足跡があったことだ。そして、その足跡は、噴水近くに残っていた。おそらく、犯人の目的は、国友引彦氏の殺害で、島先負実は、塀を登って、帰ろうとしたところを殺されたと、現時点では、考えている。」
「なるほど。それで、その足跡は、あの3人のものと一致したのか?」
零一がそう言った。
「あの3人のものとは、一致しなかった。だが、洋館の外で、それと思わしき靴なら、発見した。」
晃侍がそう言った後、雪は、言った。
「それは、本当ですか?」
「もちろんだ。これが、例の靴だ。」
晃侍は、ビニール袋に入れた靴を見せた。
「大きさも、靴の裏も、足跡のものとほぼ同じだった。あくまで、俺の肉眼で見ただけだから、正式な鑑定結果でないから、断定したことは、言えないがな。」
「それで、なんで、歩と雪も一緒に呼んだんだ?」
零一は、晃侍に尋ねた。
「それは、これから、あの3人の事情聴取を行うから、お前たち3人にも同席してほしくてな。何せ、俺は、つい先ほど、ここに来たばかりだから。事件の前の出来事を知っているお前たちがいれば、スムーズにいくからな。」
こうして、事情聴取が始まった。場所は、大広間から1番近い、部屋で行った。
「それでは、名前を伺ってもいいですか?」
晃侍が尋ねた。
「はい。私は、大安良太。西陽高校の3年生です。」
「では、遺体を発見した状況のお話をお聞きしてもよろしいか?」
「はい、大丈夫です。あの時は、引彦君が、朝食に来なかったことに、疑問を抱いて、彼を部屋に呼びに行ったんです。ドアを叩いて声をかけても、返事をしなかったので、おかしいと思って、ドアに手をかけたら、鍵がかかっていなかったので、開けてみたら。そこに。」
良太は、目をつぶってしまった。
「大丈夫です。ありがとう。」
「ああ、すみません。何も役に立たなくて。」
「そんなことは、ありません。あなたは、被害者の1人、引彦さんとは、仲が良かったと聞いておりましたから。どうか、ご自分を責めないでください。」
「・・・。」
晃侍のそのセリフを聞いて、良太は、黙り込んだ。
「何か、気に障ることは、ありましたか?」
「あ、いえ。」
良太は、口を閉ざしたが、その口を開いて、話し始めた。
「実は、私いや、俺は、引彦と、仲が良かった訳じゃないんです。」
「それは、どう言うことですか?」
歩が尋ねた。
「実は、俺たちには、滅子や陰人の他にも、友達がいたんです。」
良太は、スマホを取り出して、1つの写真を見せた。そこには、良太、滅子、陰人、そして、初めて見る男性の顔が写っていた。
「この人物は?」
零一が、尋ねた。
「彼の名前は、島先 勝斗。俺の幼馴染の1人です。」
「島先。もしかして、負実さんの。」
歩がそう言った。
「はい。お兄さんです。」
「それで、彼が、引彦さんと、どう関係があるのですか?」
晃侍がそう言うと、
「彼、自殺したんです。今年の2月14日のバレンタインの日に、放課後の時に、校舎4階の俺たちの教室から、身を投げて。」
「それは、また。」
晃侍がそう言った。零一は、白夜の話を思い出して、良太に尋ねた。
「もしかして、その自殺に、引彦さんが関わっていると思っているんですか?」
「分かりません。ですが、少なくとも、俺は、そう思っています。」
「私は、大仏滅子。良太と同じ西陽高校の3年生よ。それで、聞きたいことでもあるの?」
「それでは、遺体を発見した時について、教えてくれませんか?」
零一が尋ねた。
「遺体発見時?そんなの、そこにいる刑事さんや使用人の絞結さんに聞いた方が早いんじゃない?」
「まぁ、一応。確認みたいなものですから。」
晃侍がそう言った。
「まぁ、そうね。強いていうなら、偶々、窓の外を覗いていたら、噴水の水が赤くなっているのに気づいて、その後は、まぁ、探偵さんたちが知っている通りよ。」
「なるほど。ありがとうございます。」
晃侍がそう言うと、零一は、さらに話を続けた。
「それで、話は変わりますが、島先勝斗さんについて、聞いてもよろしいですか?」
「え?」
零一は、スマホを画面に、先ほど良太の見せてくれた写真を見せた。滅子は、それ見て、驚いた顔をした。
「あんた。それどこで?」
「先程。良太さんに、写真を送信してもらったんです。」
滅子は、それを聞くと、目を逸らさて、誤魔化したように言った。
「本当に、酷いことをするわよね。この事件の犯人は、引彦をドアの近くで殺して、負実さんに至っては、殺した上に、服に石を入れられて、沈められたんだから。」
「僕は、赤口陰人です。」
「それでは、赤口さん。遺体を発見した時の状況について話してくれませんか?」
零一が、尋ねた。
「すみません。僕が話したところで、きっと同じことしか分からないと思います。」
「そうですか。では、この島先勝斗さんについてなら、何か知っていることを話してくれませんか?」
零一は、滅子に見せた写真を見せた。
「・・・。」
陰人は、黙り込んだが、話した。
「懐かしいな。4人で、気球に乗った頃のこと。」
「気球?」
歩がそう言った。
「ええ。良太の父親が、気球を体験することができる場所で働いていて、昔、僕たちを無料で乗せてくれて、飛ばしてくれたことがあって、あの時は、本当に楽しかったな。白くて、大きな風船みたいなバルーンが、バーナーで燃える火をつけた途端に飛んで、風を利用して高い空を飛んでいたあの時の光景は、今でも忘れられない。」
陰人は、楽しそうな顔をしていった。
「それは、きっと、忘れられない思い出になったんでしょうね。」
歩は、そう言った。
「そうですね。勝斗なんか、その時の白い雲の景色がどうしても忘れなくて、いつの間にか、好きな色も白色になって。本当に、いい思い出だったよ。これからも、みんな仲良く学生生活を楽しめるはずだった。」
陰人は、笑って言っていたけれど、急に顔つきが変わった。
「そう、引彦。あいつさえ、同じ高校にいなかったら。今日は、あいつの誕生日を祝えてたかもしれないのに。」
陰人は、スマホを握り、それを見ながら、そう言った。
「やっぱり、勝斗さんの自殺に、引彦さんは、関わっていたんですか?」
零一がそう言うと、陰人は、冷静になった。
「いえ。それは、知りません。それに、僕からは、これ以上、話すことはありません。失礼します。」
陰人は、そう言うと、部屋を出ていった。
「とりあえず、事情聴取は、終わったけれど、何か分かったことはある?」
歩がそう聞くと、零一と晃侍は、何かを考えていた。すると、
「少し、席を離れる。」
晃侍は、そう言うと、部屋を出た。歩は、その姿を追いかけた。零一と雪は、遅れて出た。すると、
「あ、師匠。こっちに来てください。」
皆斗の声が聞こえて、振り向くと、土で汚れた大きな袋を持っていた。
「皆斗。何を持っているんだ?」
零一が、そう言うと、皆斗は、袋の中のものを見せた。
「少しでも、役に立ちたくて、洋館の周りを詳しく調べていたら、何かを掘って、それを土で隠したような跡を見つけたので、掘ってみたら、こんなのが出てきました。」
「こっ、これは。」
零一と雪は、同時に言った。その大きな袋の中には、昨日の夕食の残飯や、大量の"水素"と、書かれたスプレー缶が入っていた。
すると、零一は、
「なあ、雪。確かこの洋館は、海が近くに見えていたよな?」
「え。た、確かに、海は、見えましたが。」
「それじゃ、調べてくれ、この洋館から、海までの距離を。」
「はっ、はい。」
雪は、急いで、スマホを取り出して、調べた。
「分かりました。ですが、細かい距離までは、判定することはできませんでした。」
「それは別に大丈夫だ。それで、結果は。」
「はい。この洋館から、近くにある海までの距離は、1km未満です。」
「なるほどな。ありがとう。雪。」
時刻は、正午前。その頃、晃侍は、洋館の中で、誰かを探していらようだった。そして、陰人を見つけた。
「君。赤口君で、あってたっけ。」
「はい。何でしょうか?」
陰人は、返事をした後、操作していたスマホの電源を切ろうとした。
しかし、晃侍は、陰人から、スマホを奪った。
「やっぱり。君がそうするんじゃないかと、思ったよ。」
取り上げたスマホには、引彦に対する誹謗中傷がいくつも書かれていて、送信する手間であった。
「なんで。何で、邪魔したんだよ。」
陰人は、怒鳴ったような声で言った。
「それは。」
晃侍が何かを言おうとすると、
「あんたも。学校の連中と同じなんだな。国友商事からの圧力で、都合の悪いことを揉み消そうとしているんだろ。」
「違う。俺は。」
「言い訳なんて、聞きたくない。そのせいで、勝斗は、死んだんだ。自殺したんだ。いや、殺されたんだ。引彦のいじめの事を揉み消す代わりに、"将来の不安"って、適当な理由で、自殺として処理して。だから僕は、引彦のやったこと、学校の連中がやったことをネットに流して、制裁してやるんだ。だから、返せよ。」
陰人は、晃侍に襲いかかった。しかし、晃侍はそれを避けた結果、陰人は、床に思いっきり、転倒してしまった。
「うっ。うっ。」
陰人は、両手を目に当てて、泣いていた。
晃侍は、彼にそっと近づいた。
「赤口君。僕が、君を止めたのは、君が恨んでいる彼らとは、違う理由だ。」
「・・・え?」
「君は、これをネットに投稿しようとした。でも、ここに書かれていることは、いわば誹謗中傷だ。」
「それが、どうしたっていうんだ。あんな奴らに、対して、何思おうと、僕の勝手だろ。」
「確かに、その通りだ。何を思おうと、それは君の自由だ。でもそれを、そのまま投稿しようとすることは、いけないことだ。これだけは、例え、どんな人間に対してであろうと、やっては、いけない。それくらい、高校生の君になら、すでに分かっていることだろ。」
「ウッ。」
「そして、これだけは、どうしても伝えたい。俺は、君を加害者には、したくなかった。だからこそ、こんな強行手段を取ってでも。止めたんだ。」
「え?」
「だからもう、こんなバカことは、辞めると、約束して欲しい。」
晃侍は、スマホの画面そのままにして、それを陰人に向けて、渡しながらそう言った。
「グスッ。はい。」
陰人は、目の涙を拭くと、スマホを受け取った。そして、晃侍の目の前で、その文章を全て、削除した。
「ごめんなさい。酷いこと言ってしまって。」
「別に謝らなくても、いいですよ。それより、早く、大広間に戻って、大人しく待機していてください。」
「はい。あ、その前に、思い出したことがあります。」
「思い出したこと?」
「はい。深夜の1時頃に、寝ようと思って、電気を消したんです。そしたら、窓の外に小さな赤色の明かりらしきものが上に上がっているのを見たんです。それも、複数の。これが、事件に関係あるかは、分かりませんが、一応、伝えておこうかと。それでは。」
陰人は、そう言った後、大広間に戻っていった。
「相変わらず、優しいわね。晃侍さん。」
歩がそう言った。
「別に、たいしたことはしてないよ。俺は、ただ。自分のした過ちを彼にして欲しくなかっただけだから。」
「過ちって?」
「そういえば、話したことなかったな。実は、高校生の頃、家の事情や学校でのいじめがあって、そのストレスを成績優秀で、スポーツ万能で、いつも周りから、人気で、嫉妬していた零一に対して、つい、ネットに陰口を書いてしまったんだ。」
歩は、黙って聞いていた。
「でもある時、零一が、その投稿を見つけて、それを見て、落ち込んでいる姿を見たんだ。そしたら、俺。急に、自責の念に駆られて、あいつに、自分のやったことを正直に話したんだ。その後に、あいつに、殴られる。下手したら、学校中にそのことをバラされることになるって、急にまた、怖くなって、でも、自分の責任だと、覚悟していたら、あいつが話し出した。そしたら、思いもよらないことを言われたんだ。」
「それで、零一さんは、その時、なっていったの?」
「あいつ、笑顔の顔をして、"正直に話くれて、ありがとう。"って、言ったんだ。」
歩も少し驚いた顔をした。
「それからかな。あいつと毎日、話すようになったのは。そしてある時、あいつが、指紋探偵になろうとしていることを聞いて、俺は、あいつを支えるため、そして、俺みたいな間違ったことをした奴をしっかりと更生させるために、刑事になろうって、思ったんだ。」
「そう、だったんだね。」
「だから俺は、たいしたことはしてないって、言ったんだ。俺は、優しい人間じゃないから。」
晃侍は、視線を下にした。しかし、歩の一声で、視線は、戻った。
「何言ってるの?」
「え?」
「確かに、あなたが、零一さんにしたことは、最低な行動だけど。あなたは、そのことを正直に話した。最悪、学校に居られなかなら可能性もあったのに。」
「でもそれは。」
「言い訳は、聞きたくない。あなたは、自分を優しくないって、言っていたけれど、優しくない人間ならば、なぜ、そのことを隠そうとしなかったの?」
「そ、それは。」
「それは、あなたが優しい人間だったから、でしょ。」
歩は、微笑みながら、そう言った。晃侍は、その顔を見て、言葉が出なくなった。
「それに、そんな優しいあなたがいたからこそ。小学生の頃、趣味の男装がきっかけで、いじめを受けていた私が、高校生活で、そのことを隠して、苦しんでいた時に、"大丈夫。正直に言えば、必ず1人は、君自身のことを分かってくれる。"って言って、背中を押してくれたからこそ、私は、クラスの人たちと、その趣味を通して、仲良くなれたんだから。だから、自分に対して、あまり悪印象を持たないで。」
晃侍は、鼻息で、「フン。」とし言いながら、笑顔になって、歩に言った。
「ありがとう。歩。」
そして、そんな甘酸っぱい空気をしている時に、零一たちがやって来た。
2人は、驚いたが、何事もなかったように、零一たちの方を向いた。
「どうした、零一。」
晃侍がそう言った。
「犯人と、凶器を隠した方法が分かった。そして、歩。1つ確認したいことがある。昨日の夕食、余ったりは、しなかったか?」
零一がそう言った。
「いいや。全く、余ることはなかったわ。それがどうしたの?」
「ありがとう。それを聞けただけで、十分だ。」
「それより、零一。犯人と、凶器を隠した方法が分かったっていうのは、本当なのか?」
晃侍がそう言った。
「まだ確定してないこともあるが、おそらく、間違いはない。」
「実は、凶器を隠した方法と関係があるかは、分からないが、赤口君から、気になる証言が出たんだ。」
晃侍は、先程、陰人から聞いたことを話した。
「やっぱり犯人は、そういう方法で、凶器を隠していたんだ。」
零一が言った。
「そんなやり方で、凶器を隠していたなんて。」
歩が言った。
「だがしかし、犯人や凶器の隠し方が分かっても、肝心の決定的な証拠がない。」
零一が言った。
「確かに、そうなんだよな。」
晃侍は、困ったような声で言った。
「だが、この方法を使えば、犯人のボロを出せるかもしれない。」
「え?」
晃侍と歩が言った。
「そのためには、警察の協力が必要だ。」
* * *
同日、午後1時前。全員は、大広間に集まっていた。
「皆さん。お待たせしました。今から、この事件の真相をお話しします。」
零一がそう言った。
「探偵さん。誰が犯人か、分かったんですか?」
良太がそう言った。
「それで、師匠。誰が犯人なんですか?」
皆斗がそう言った。そして、零一は、言った。
「それは、君だ。大仏滅子さん。」
「え?」
滅子は、驚いた。
「滅子。君が。」
良太は、そう言って、席を立ち、陰人は、驚いた顔をして、滅子を見ていた。
「ちょっと、待ってよ。何で私なのよ。まだ、外部犯の仕業っていう線も残っているでしょ。」
「確かに、洋館の周りにある塀の一部の外側と内側には、塀を登ったり、その上から着地したりしたような足跡があった。それらは、主に、噴水近くで目撃されていて、犯人の物と思われる靴も発見されている。」
晃侍がそう言った。
「ほらね。犯人は、やっぱり、外部の人間。きっと、引彦を殺しに来た奴が、引彦を殺し終わった後の帰りに、偶然、噴水の近くにいた負実さんに見つかって、その口封じで殺された。これが、事件の真相よ。」
「確かに、外部犯説を説明するには、かなりの信憑性がある。しかし、洋館近くから、靴が見つからなければ、私も、外部犯説を信じていたでしょう。」
自信満々に言っていた滅子に、零一は、冷静な感じでそう言った。
「は?どういうことよ。どう考えたって、外部犯の仕業以外にありえないじゃない。」
「言いましたよね。館近くから、犯人のものと思われる靴が見つかったと。おかしいですよね。犯人が、わざわざ、靴を履き替えるなんて。」
「そ、それがどうしたって言うのよ。犯人が、犯行の時だけ、靴を履き替えて、犯行後に、元の靴に履き替えた。ただ、それだけのことかもしれないじゃない。」
「確かに、それだけの可能性もある。だけどこれは、内部の人間が、外部班の仕業に見せかけるために、その靴を使って、足跡を偽装したと、いう可能性もありえるですよ。」
「う。」
滅子は、零一の反論に、何も言い返せなかった。しかし、
「そう。だったら、認めてあげましょう。内部にいた人間にも、犯行が可能だったことは。でも、だとしたら、犯人は、凶器の拳銃をどこに隠したのかしら。そこの刑事さんは、拳銃を隠せそうな場所は、隅々まで、探したそうじゃない。まぁ、1人だったから、見逃したところもあると思うけれど。凶器の拳銃なんで、この中にいる誰も所持していなかったじゃない。」
滅子は、少し開き直った感じで言った。しかし、零一は、冷静に話を続けた。
「もちろん。その方法も分かっていますよ。」
「え?」
「では、その方法を話しましょう。犯人は、空に飛ばしたんですよ。凶器の拳銃を。」
「ウッ。」
滅子は、さらに驚いた顔をした。
「その証拠に、皆斗が見つけてくれた物の中に、それが可能な物がありました。それは、このスプレー缶です。」
零一は、"水素"と書かれているスプレー缶を見せた。
「もしかして、気球ですか?」
陰人が言った。
「いや、気球よりかは、かなり小さい物。風船だ。犯人は、水素を入れた大量の風船を使うことで、凶器の拳銃を近くにある海まで、運んで落としたのさ。」
「はは、何を言ってるの?大量の風船?確かに、それなら、運べるだろうけれど、海まで運んだ後は、そんな大量の風船。一気に、割れるはずないでしょ。」
滅子は、反論した。
「確かに、一度に風船を全て割るのは、不可能だ。しかし、風船と凶器の間に、糸を結び、その間に、火をつけたタバコを結んでいたとしたら、可能ですよ。それに、タバコだけなら、ここの使用人が使ったままにしていたのが、ありましたし、おそらく、他の部屋にも、きっと、使ったまま、置かれているのが、あったはずです。」
「ウッ。」
滅子の反論は、止まった。
「うーん。でも、そんな簡単に、うまく海まで運べるのでしょうか?」
皆斗がそう言った。
「もちろん。可能だよ。夜間に陸から海に吹く"陸風"を利用すればね。」
「陸風。確かに、昔、学校で習いましたね。でも、途中で、タバコの火が消えて、凶器が海に辿り着くまでに、落下したり、風の影響で、消えたりする可能性もありますよね。」
「もちろん。その2つの問題も解明済みだ。タバコの火が途中で消えたとしても、風船と一緒に複数つけておけば、その問題は、解決できる。その証拠に、その時の明かりを赤口君が、目撃している。そうだよね。」
「は、はい。間違いありません。」
「そして、海に着く前に、凶器が落下してしまうという点だが、タバコが、何もせず、自然に燃え尽きるのが、およそ10分で、陸風の風速は、最低でも秒速2mとして、それを使って計算すると、10分を600秒にして、距離は、速さと時間をかけて、求めることができるから、2×600で、1200mつまり、1.2kmは、最低でも、可能である。そして、この洋館から、近くの海までの距離は、1km未満となるから、現実的には、可能であることになる。さらに、風速は、あくまでも、最低で求めているから、速さがもっと早ければ、早い時間に、海の上に辿り着くことができて、仮に、タバコの燃えるスピードが少し早かったとしても、問題はない。」
「クッ。」
滅子は、歯を食いばしっていた。
「そして、このトリックを解明することで、犯人が行った2つの不可解な行動も、説明できるんですよ。」
「2つの不可解な行動?1つは、島先負実の遺体を噴水に沈めたことだということだと分かるが、もう1つの不可解な行動というのは、何だ?」
晃侍がそう言った。
「それは、昨日夕食の残飯が、複数の水素のスプレーと共に、この袋に捨てられていたことだ。」
「ちょっと、待って。それは、おかしいわ。だって、昨日の夕食は、余りなんて1つも出なかったわ。」
歩がそう言った。
「確かに、一見すると、余りがなかったように見える。しかし、見えないところでは、そうじゃなかった可能性は、あるだろ?」
「見えないところ?・・・あ、まさか。」
雪がそう言うと、
「そう。1人だけ、夕食を食べなかったいや、食べることができなかった人物がいる。それは、引彦さんだ。」
「確かに、それなら、説明がつきますが、犯人は、何で、そんな意味の分からないことをしたんですか?」
良太が言った。
「確かに、これだけ見たら、犯人の意図は、分からない。しかし、引彦さんはいつも、午後7時過ぎになると、緊急時以外を除けば、翌日の朝になるまで、ずっと部屋にこもっていることと、もう1つの不可解な行動である負実さんの遺体を噴水に沈めたことを踏まえて考えると、その謎は、解ける。」
「そうか。遺体の発見を遅らせるためということか。」
晃侍がそう言った。
「その通り。引彦さんは、午後7時を過ぎると、緊急時以外を除くと、翌日の朝まで、出てこないという習慣をしていた。犯人にとっては、先程説明したトリックを使う上で、凶器を隠滅する時は、夜しかも、誰もが寝静まった深夜の時間でないといけない。その証拠に、陰人が、電気を消した後に、例の明かりを目撃している。そんな中で、引彦君が、部屋にこもって、出てこなくなるのは、かなり深刻な問題となったはずだ。そして、犯人としては、引彦君をなるべく早く殺す必要があつた。」
「だからこそ、夕食前に殺害しなければならなくなり、もし、殺害後の部屋の前に置かれた夕食に、何も手をつけていなかった場合、それに不審を持たれて、死体を夜になる前に、遺体を発見される可能性がある。だから、夕食をその袋に捨てる必要があった。それに、負実さんの遺体も、噴水の中に沈めておけば、発見を遅らせる時間稼ぎにはなるという訳ね。」
雪がそう言った。
「そう言うことだ。それでは、滅子さん。何か、反論は、ありますか?」
零一は、滅子に尋ねた。
「反論はあるか、ですって。そんなの。ある。ある、ある。あるに決まっているでしょ。あんたたちの言っていることには、何の証拠もないじゃない。私が犯人だという証拠も、そのトリックが使われた証拠も。仮に、その通りに、凶器を隠滅するトリックが使われたとしましょう。私以外にも、可能じゃない。それでも、私を犯人だと言うのなら、出してみなさいよ。私を犯人だと断定する決定的な証拠を。」
(やっぱり、そう言ってきたか。それじゃ、作戦を実行するか。)
零一は、歩に向かって、頭を縦に振った。歩は、それを見ると、ポケットに手を入れて、スマホを操作した。
(分かった。言われた通りに、するわよ。)
すると、晃侍のスマホが鳴った。晃侍は、それに出た。
「はい。蛇塚です。はい。はい。あ、見つかりましたか。はい、それでは。」
晃侍は、通話を切った。
「どうだった。晃侍。」
「お前が言ってた物。発見されたそうだ。」
「そうか。」
「は?何、何の話よ。」
「大仏さん。先程の電話は、例のトリックの使われた風船が、見つかったという報告ですよ。」
「はは。だから、何?その風船に、私の痕跡でも残ってたというの。」
「いや。残っていないだろうね。君の反応からして。」
「そう、なら。私の犯行だってことには、ならないわよね。」
「確かに、それはそうですね。」
「じゃ、認めるのね。全ては、机上の空論だったていうことを。」
「そうですね。どうやら、そのようです。ですが、最後に、確認したいことがあります。構いませんよね。」
「ええ。構わないわ。それで、確認したいことって。」
滅子は、安心ているのか、余裕そうな顔をして言った。
「それは、引彦さんの遺体と、負実さんの遺体についての確認です。確か、引彦さんの遺体は、ドアのすぐ近くで、負実さんの遺体は、噴水に沈められていたということであっていますよね?」
「ええ。間違いないわ。それで、それがどうしたの?」
「そうですよね。事情聴取の際に言っていたことと、矛盾がないか、確かめたかったかったんですよ。」
零一も、なぜか、余裕そうな顔で話した。そして、言った。
「それでは、確認します。なぜ、知っていたんですか?引彦さんの遺体が、ドアの近くにあったことを。」
「・・・え?」
滅子は、急な問いに驚いたのか、血の気の引いた顔をして言った。
「どうして、知っていたんですか?」
零一は、容赦なく、追求した。
「そ、それは、探偵さんたちの話を聞いて、そうじゃないかと、思ったからで。」
「そうですか。でも私はこれまで、引彦君が、部屋の前で亡くなっていたということしか、言っていませんよ。」
「だったら、そう思い込んだだけのことですよ。偶然、言ったことがたまたま正解することなんて、よくあるでしょ。」
「いや、あなたは、知っていたんだ。引彦さんが、ドアを開けてすぐに、拳銃で撃たれて、殺されたことを。」
零一は、先程よりかは、力強い声で言った。
「ただ、違うって言ってるでしょ。」
滅子も同様だ。
「それに、さっきから言ってるでしょ。証拠を出しなさいって。それがないなら、私は、何も言いません。」
「もちろん。証拠は、ありますよ。」
「はぁ。そんなハッタリ、通用するもんか。」
「それは、どうでしょう?では、お聞きします。なぜあなたは、"あんな風船"を使って、犯行に及んだのですか?」
「さっきから、何を言ってるか、分からないわね。」
「いいや。あなたは、知っているはずだ。そうでなければ、"あんな風船"を使う理由はない。」
「知らない。知らない。知らない。」
「いい加減。答えてください。どうして、"あんな風船"を使って、犯行に及んだのですか?」
「うるさい。うるさい。うるさい。うるさい。さっきから、知らないって、言っているでしょ。それとも何、私が、"大量の白い風船"を使って、犯行に及んだ証拠でも、あるの。あるんだったら、出してみなさいよ。」
滅子がそう言うと、少し静かになった。
「な、何よ。この沈黙は?」
そして、零一が言った。
「大仏さん。最後に、確認させてください。どうして、犯行に使われた風船の色が、"白"だと、知っているのですか?」
「・・・あ。あぁぁ。」
滅子は、体から力が抜けたのか、その場で足を崩した。
「滅子。本当に君が、あの2人を?」
良太がそう言った。
「ええ。そうよ。私が、あの2人を殺したのよ。」
「どう、して。」
陰人が言った。
「どうして?どうしても知りたいのなら、教えてあげる。私のもう1つの殺人のことと、一緒に。」
滅子がそう言うと、場の雰囲気は、さらに、緊張感に包まれた。
「もう1人?それは、一体、誰のこと何だ。」
零一が聞いた。
「ふふ。探偵さんや刑事さんたちも知っているでしょ。島先勝斗、私たちのもう1人の友人のことよ。」
「もうここにいる全員が、気づいていると思うけど、勝斗は、引彦のいじめにあっていたの。最初は、別の子がいじめを受けていて、それを庇ったのが、勝斗だったの。そしたら、引彦の反感を買って、目をつけられた。ここまでだったら、よくある話。そして、いじられる、次のターゲットになるのが、怖くて、いつの間にか、私は、彼と距離を取るようなった。」
「でも、それじゃいけないって、思った。そして、2ヶ月前の、2月14日のバレンタインの日。私は、手作りチョコを勝斗に渡そうとした。これまでの自分を壊して、勝斗の味方になる。そう思って、いたけれど、中々、話をかけることができず、気付けば、放課後になっていて、時間も午後5時前になっていた。あいつの下駄箱に、チョコを入れて帰ろうとして、カバンの中を除いたら、体操着を忘れていることに気づいて、戻ったの。そしたら、勝斗が引彦たちにいじめられているのを見た。暴力や悪口を言われるとか、そんなんじゃなかった。あいつは、勝斗を奴隷のように命令して、それに叛いたら、暴力を振るわれ、さらには、カッターナイフで、体を切られていた。私は、黙って、それを見ていることしかできなかった。」
「そして、それが終わるまで、隠れていると、引彦たちが、帰っていくのが見えた。私は、教室の中に入った。勝斗は、かなり暗い顔をしながら、悪口が書かれた机を見ていた。そして、私が、大丈夫?って、話しかけたら。」
「大丈夫?これを見て、そんなふうに思える?」
「そ、それは。」
「そう言えば、僕からも聞きたいことがあるんだ。何で、誰も助けてくれないの?」
「私は、その問いに答えようと、考えた。だけど、私には、その答えは、思いつくことができなかった。」
「きっと、それを見て、勝斗は、理解したんだろね。あの後に、あんなことを言うなんて、あの時の私は、想像もしてなかったから。」
「やっぱり、そうなんだ。引彦の親が、怖いから、みんなあいつの味方をするだ。あいつの取り巻きも、先生も、そして、滅子も。」
「違う。私は、"友達"として、助けになろうとして。」
「何が違う。何が、"友達"だ。いつも、いつも、遠くから、見ているだけじゃないか。さっきもそうだ。僕がいじめられていることに、気づきながら、何もしてくれなかった。それのどこが友達なんだ。」
「その時の私は、彼の怒鳴り声に驚いて、聞いているしかなかった。」
「それに、何が助けになろうとしただ。相談に乗ってくれた良太や、引彦のいじめの証拠を集めて、訴えようって、提案してくれた陰人の方が、よっぽど、助けになってくれた。だけど、滅子は違う。お前は、あいつらと同じで、俺を遠くから見て見ぬふりをしている傍観者という名のいじめをしている加害者いや、ただのクズ野郎だ。そんな奴は、もう、"友達"じゃない。」
「勝斗の心は、限界だった。だけど、私は、あの時、そのことに気づかず、つい、言ってしまったの。」
「そう。そうか。なら私からも、言わせてもらう。あんたなんか、あんたなんか。もう"友達"でも何でもない。あんたが苦しんでいるか、いなかろうが、もう関係ない。それに、そんな人苦しいんだったら、"勝手に、死ねばいい。"だって、私は、もう、赤の他人なんだから。」
「私は、しばらく、放心状態になった。それは、きっと勝斗も同じだとその時は、思って、ここから、どう謝るかを頭の中で考えていた。そしたら、『ドスン。』って、何かが落ちる音が聞こえた。周りを見たら、勝斗がいなくて、空いている窓の下を覗いたら、あいつが、花壇にある"白いレンガ"に頭をぶつけて、血を流していた。そして、そこには、1人の女子生徒がいた。それは、負実だった。その時に、目を合わせてしまった。」
「それからよ、本当の地獄が始まったのは。ただでさえ、勝斗が死んで、その原因が私にあると思っていただけでも、おかしくなりそうなのに、負実は、そのことを黙っている代わりに、私をパシリに使ったの。皮肉にも、勝斗を追い詰めた原因のことを、あいつの妹がやっているんだから。だけど、それでも、負実が私に抱いていたドロドロとした感情は、なくなることはなかった。さらには、引彦と手を組んで、さらに、復讐をしようとした。だから私は、そうされる前にやってやったの。私を追い詰めたあの2人に、先に、復讐をしようって。」
全員が、滅子の話を聞いて、黙り込んでしまった。
「それで、凶器の拳銃は、どうやって、手に入れたんだ。普通の高校生が、あれを入手することは、かなり難しいはずだから。」
滅子は、零一のその問いを聞くと、何かを思い出したような感じの顔をした。
「ああ、そうだ。そうだった。あの2人を殺そうって、初めて思ったのは、あの時だけど、その引き金になったのは、あの人にあってからだ。」
「あの人?あの人って、一体?」
晃侍がそう言った。
「さぁ、詳しいことは、知らないは、あの2人に対しての恨み辛みを、裏垢で呟いている時に出会ったの。本名は、知らないけれど、アカウント名は、『カミ』って、書いてあったね。」
(カ、カミ!)
零一、雪、晃侍、歩は、同時にそう頭の中で言った。
「その、人物は、何を話して来たんだ。」
零一が言った。
「そうね。最初は、"それなら、実際に、殺してしまったら、どうですか?"ていう感じで、話していたかな。そして、そんな話をしたのも忘れていた時、1人暮らしをしているアパートの前に、謎の宛先不明の郵便物らしき段ボールが置いてあって、すぐに、警察に呼ぼうかと思ったけど。"君の悩みを解決させてあげる。カミ。"という文が目に入ったから、開けて見たら、拳銃とサイレンサーに、ビニール袋や白い手袋、輪ゴム、そして、"これを使うかは、あなた次第です。"と、書かれた紙が入っていた。そして、それがきっかけで、私の心の中に悪魔が宿ったの。そして、拳銃を握って、確信した。私の意見も聞かず、勝手に早とちりした負実も、全ての元凶でありながら、のうのうと、何事もなかったかのように生きている引彦も必ず、殺すってね。」
滅子は、笑いながら、言っていた。その目のハイライトは、なくなっていた。そして、
「私から、話すことは、これで、以上よ。ところでみんな、私に同情してくれたよね?してくれたよね?してくれたよね?」
誰も何も言えなかった。滅子は、それを見て、さらに言った。
「ねぇ、良太。陰人。あなたたちなら、私に同情してくれるよね?ねぇ。」
2人は、目を逸らした。
「何で、誰も同情してくれないの?何で、私ばかり、こんな目にあうの?何で、こんなことになったの?何で、私は、人を殺さなきゃいけなくなったの?何で、私は、あの時、あんなことを言ったの?私は、助けになりたかっただけなに。」
「何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で何で?何で?何で?何で?何で?何で?」
「じゃぁ、一体。私は、どうすれば良かったのよ。何をしたら、正解だったのよ。何をしたら、正しかったのよ。誰か、誰か教えてよ。」
滅子は、発狂した。そして、隠し持っていた。果物ナイフを取り出した。
「もう、どうでもいい。」
それを自身の首に突き刺した。しかし、それは、零一が、ナイフの刃を掴んだことで、阻止された。
「まだ答えてなかったですね。あなたの問い。確かに、何をしたら良かったのか。どうしら、正解だったのか。そんなことは、誰にも分からないことだ。」
零一の手からは、血が垂れていた。それでも、続けた。
「でも、少なくとも、あなたが行ったこの殺人とあの時、勝斗くんに言った言葉、そして、自分自身を殺そうとしていることは、どんな理由があれ、間違ったことだ。」
「うっ、うぁぁぁぁぁーん。」
零一の言葉を聞いて、滅子は、握っていた果物ナイフから、手を離した。そして、床に、倒れ泣き崩れていた。
そして数分後、到着した警察によって、大仏滅子は、連行されていった。
滅子が連行されて、少し時間が経って、良太と陰人は、話していた。
「探偵さんに、刑事さん。最後に1つだけ、俺たちの推理を聞いてくれませんか?」
良太が、零一にそう言った。
「滅子は、凶器を隠滅するために、白い風船を飛ばしたって。言ってましたよね?」
「確かに、私が導き出した推理では、そうでしたね。」
「でも、それだけが理由じゃないと、思うんです。」
陰人がそう言った。
「どうして、そう思うんだい?」
晃侍が言った後、陰人が続いて言った。
「今日の取り調べで、言ったことですが。今日、あいつの誕生日なんです。」
「それに、あいつ、勝斗は、本当に、白い色が好きだったんです。あの時、気球で見た雲の景色が忘れられなくて、好きな色をさらに変えるほどに。死ぬ時だって、"白いレンガ"に向かって、自ら。」
良太がそう言った。
「それで、僕たち思ったんだ。犯行に使った"大量の白い風船"は。」
「滅子が、あの世にいる勝斗に向けて飛ばした。誕生日プレゼントだったんじゃないかなって。」
(ああ。きっと、そうだよ。)
零一と晃侍は、2人同時にそう思った。
そして、良太と陰人は、警視庁で取り調べを受けるために、パトカーに乗って、先に山を降りた。
「零一様。手の怪我は、大丈夫ですか?」
雪は、包帯が巻かれた零一の手を触って、聞いた。
「ああ。大丈夫だよ。」
「それにしても、零一さん。無茶をするわね。」
歩がそう言った。
「ほんと。急に、ナイフを手を掴んだ時は、本当に、びっくりしたんですから。」
皆斗がそう言った。
「心配かけて、ごめんな。」
(まぁ、大仏さんを助けたかったのは、そうなんだけれど、彼女の話を聞いていた、つい、自分と重なてしまって、同情してしまったていうのもあったんだけどな。)
拳銃と、頭から血を流して倒れている人物が映った。
零一は、そう思いながら、さっきのセリフを言った。
すると次の瞬間、スマホが鳴った。零一は、スマホを取り出すと、画面には、太陽寺白夜と、表示されていた。
「もしもし。太陽寺さん。」
零一が出ると、
「たっ、探偵。大変なことが起こった。」
「大変なこと?」
「ああ、大変なことだ。つい先程、爆破事件が発生して、1人が死亡した。そして、この爆破は、まだ続くらしい。」
「何?それは、本当ですか?」
「それは、間違いない。実際に、"プロジェクトを中止しない、お前らが悪い。だから私は、実力行使で阻止する。私を止めたければ、捕まえてみろ。酒呑童子。"という予告状まで、届いている。」
零一たちは、少し緊張感を持って、聞いていた。
「だからこそ、お前に依頼をしたい。頼めるか?」
「・・・。ああ、もちろん。その依頼、引き受ける。」




