第36話 勇者凌辱しない
ユミコ争奪戦も、世界観ガン無視の銃撃戦に発展。
俺は睡眠呪文を使い、彼女らを眠らせた。
「ああっと、美女四人組、ついに勇者ユウタの魔の手に落ちたぁ!」
ほんと、そのノリの実況、やめてくんないかなぁ。
しかし銀髪女が、むくりと上体を起こす。
「ああっと、勇者マイン、なんと影腹を切っていたあ!
勇者ユウタの魔の手をひとり、かいくぐったぁ!」
え、かげばら?
かげばらって何?
解説のクマガイさん、仕事してよ。
なんか脇腹から血が出てるんですけど、これって切腹?
大丈夫なの、ねえ。
「勇者ユウタ、私達の負けだ。」
銀髪女は、無念そうにそう告げる。
「だから、凌辱するのは、私ひとりにしてくれ。
こいつらは見逃してほしい。」
えー、なんでそうなるの。
そんな気、さらさら無いのに。
つかあんた、お腹大丈夫?
手当しないと、死んじゃわない?
「あんたも、済まなかったぁ!」
銀髪女は、ユミコに向かって叫ぶ。
「男どもの魔の手から守れなくて、済まない!
だから私が凌辱されるのを見て、対策を考えてくれ!」
銀髪女は、バタりと横になる。
「会場の人達よ、よく見るがいい!
敗れ去った者の、惨めな姿を!」
会場中は、一斉にすすり泣く。
凌辱される姿など、誰も見たくないみたい。
うーん、どうすればいーんだ、これ。
と思ってたら、いつの間にかユミコが銀髪女のそばにいる。
「ヒーリングっと。」
ユミコが回復呪文を唱えると、銀髪女の傷が回復する。
「オッハー。」
ユミコが覚醒呪文を唱えると、寝ていた三人がおっきする。
おっきした三人は、上体を起こしてキョロキョロする。
大の字で横になる銀髪女と、そのそばに立つ俺とユミコ。
これで三人は悟る。
「そっか、私達は負けたのね。」
「その女性を、守れなかったのか。くそっ。」
「く、女性の敵を倒せなくて、何が勇者だ…!」
「あ、安心してくれ、」
銀髪女も上体を起こす。
「凌辱されるのは私だけだと、こいつと約束した。」
「な、」
銀髪女の言葉に、三人は驚く。
いや、そんな約束してないけど。
「こいつが、そんな約束守る訳ないでしょ!」
うん、してない約束って、どう守るんだ?
「ちょっといいかなぁ。」
収拾がつかなくなりそうな中、ユミコがにこにこ笑顔で、上体を起こした銀髪女と目線を合わせる様にしゃがみ込む。
あ、やべー。ユミコさん、怒ってらっしゃる。
「さっきから聞いてるとさあ、あなた達って、私と魔王倒しに行く気、あったのかなぁ?」
あ、それ、俺も気になってた。




