第17話 勇者墓から銀の笛を持ち去る
ついにユーズルの遺体と対面した俺。
後はこいつの持つ銀の笛をゲットするだけなのだが、ミイラ化したユーズルの指が食い込んでいて、なかなかはがれない。
俺が銀の笛を引きはがそうと悪戦苦闘してる最中にも、呼び寄せられた魔物が襲ってくる。
魔物を七匹くらい倒した頃、ようやく銀の笛をゲット出来た。
銀の笛には、ミイラ化したユーズルの体液が固まったモノが、こびりついている。
すげーばっちい。
あまり触れていたくはないが、俺はこれを持ち帰らなければならない。
救いなのは、臭いはそんなにしないって事だな。
俺はユーズルの玄室を見渡す。
宝箱のひとつでもないかと思ったが、そんなもん、どこにも無かった。
てっきりユーズルの幽霊でも現れるかと思ったが、そんな事もなかった。
彼の魂は、成仏出来たのだろうか。
操りきれなくなった魔物に殺されたと聞くが。
それにしても、誰がこのダンジョンを作ったのだろうか。
銀の笛を握りしめてミイラ化した、ユーズルの遺体。
これはユーズルの死後、誰も彼に近づけなかったのだろう。
ならばこのダンジョンは、こうなる事を予見したユーズルが、魔物を操って作らせたのだろうか。
まだ魔物を操れるうちに。
そう思うと、ユーズルの事をあわれに思えてくる。
銀の笛のおかげで、伝説の吟遊詩人になれたユーズル。
だけど彼には、こんな末路しかなかったのだ。
そんな事を思いながら、俺はユーズルの玄室を後にした。
銀の笛にこびり付いた汚物を、壁にこすりつけながら落としてみる。
帰り道は、魔物と遭遇しなかった。
銀の笛をユーズルの遺体から取り上げた事で、魔物の召喚が止まったのだろう。
すでに召喚されてる魔物もいるはずだが、そいつらとは動線の都合で、遭遇しなかったのだろう。
俺は墓の出口までたどり着く。
俺は扉の前でしゃがみ込む。
宝箱から鎖かたびらをゲットしてきたので、その鎖かたびらに銀の笛をこすりつける。
銀の笛にこびり付いた汚物を、なんとか取れないかと、悪戦苦闘。
ほとんどの汚物は落とせたので、俺は立ち上がり、鎖かたびらを蹴り飛ばす。
汚物を押しつけられた鎖かたびらは、たいまつの灯りの届かない暗闇に消える。
俺は墓から外に出る。
久しぶりに見る陽の光は、まぶしかった。
「あんちゃん、生きてたのか。」
墓守のおっさんが、出てきた俺を見てびっくりする。
結構な時間潜ってたんで、死んだと思われたのだろう。
「ええ、まあ。」
俺は疲れた笑顔を、おっさんに向ける。
「やくそうでも食えば回復するから、しっかり休めよな。」
おっさんは心配そうな顔で、俺にアドバイスする。
俺は疲れた笑顔でうなずきながら、その場を離れる。
俺は建物の北側の長細い通路で、辺りを見渡す。
誰も居ない事を確認すると、転移の翼を空に放る。
俺はユーズルの墓のあるカワゴエの村から、オオミヤ城へ転移する。




