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79話  負けが確定している時の処方箋。笹本にも処方箋

 見つけてくれてありがとうございます


 Twitterから来てくれた皆さん、ようこそお越しくださいました

 3月1日、笹本達第6艦隊が小マゼラン星雲の恒星ガムランから出航した。


 恒星ガムランという主星の名前の由来は、当初ブラジルは恒星全ての名前を付けることが出来ずに困っていたのだそうだ。

 そこで世界から恒星の名前を募集したのだそうだ。

 この恒星の名前はインドネシアのバリ島在住の少年からの手紙から決定した名前だ。

 『僕の住むバリ島では伝統音楽であるガムランを練習します。正直言って楽器の扱いが大変です。正直大変です。辞めたいです。イリアンさんはどう思いますか』

 という手紙が舞い込んでいたのだ。そこに運悪くイリアンという名前の審査員が居て、それを自分宛ての何かと勘違いして通してしまった。

 実はその手紙、月刊ペンフレンズで作ったペンフレンドへの手紙が誤配送され、その後間違えて封切りされたという2回のミスによって投書扱いになってしまった。この偶然の塊を申し訳なく思い、この小マゼラン最大の恒星にガムランという名前を付けたという、頓珍漢(とんちんかん)なお詫びを以って決定した名前だそうだ。

 

 ここから向かうのはオーストラリア有限会社国領である。

 ナオミ・フィッシュバーン船団長は鼻歌交じりにわが国へようこそとか言っている。気楽なものだ。今回は完全な負け戦の為に出撃するというのに。

 笹本達は未だ研修中の第7艦隊を使うことが出来ない。しかし今回は1艦隊で12艦隊を相手にしなければならないのだ。どう考えても勝てる訳が無い。笹本は地味にイラついた。

「ちい。誰かあいつを黙らせろ」

 笹本が小声で呟く。

「許してあげなよ。もし同じ状況でポーランドに来ますよって言うなら、それでも私なんか国家歌って歓迎しちゃうよ」

 ウルシュラが小声で(なだ)める。

「だってもはや万国に英名(とどろ)かす笹本君が居るんだよ」

「どうして僕がそんなになってるんだよ」

 笹本の問いかけにウルシュラが答えた。

「仕方ないよ。笹本君は世界で初めて起こった宇宙会戦を軽やかに快勝して今なお無敗の謀将なんだ。キミは自分をもっと知らなくてはいけないよ」

「シリタクナイヨ」

 笹本はそっぽを向いて答えた。これは本源的には良くない傾向だ『敵を知り己を知れば百戦して危からず』は兵書の基本だ。知りたくないでは済まされない。

 しかし笹本は公国がいい加減笹本の首級を上げるべくこんな大艦隊を差し向けたのも、笹本自身が敵からその艦隊を葬ってやりたいと別の意味で大人気なのも知っている。それだけ知っていれば充分だろう。

「ほぼ世界の宇宙軍士官学校の教科書が改訂されているんだ。要は笹本君の戦場を好例として紹介してるね」


「あまり僕のやり方って誉められるべきでは無いと思うんだよね」

 笹本が持論をぶちかます。

「まあ。誉められたやり方ではないわね」

 エチエンヌのぶった斬りな意見は思いのほか多くの人に響いた。

「聞き捨てなりませんなエチエンヌ中将殿。寡兵よく戦う名将です」

「私も思うぞ。勝てばカーン将軍って言うじゃないか」

「今ある頭数で上手に勝つ。工夫の仕方は良いと思うよ」

 大場忠道、アリーナ、小島(かなめ)が3Dホログラムから笹本の応援に回った。ところでカーン将軍って誰だ?

 

「いえ。うん。誉められないのは参謀長さんではなく、もっと多くの兵員や艦艇を送らない国家連邦政府(こくれん)だと思います」

「本当なら数の暴力こそ正しいのですがね。このままでは数の暴力に制される側ですね」

「これは本当にケンジではなく、この事態に無策だった世界情勢が戒められるべきだよ」

 小鳥遊君が3Dホログラムから。叢雲早苗とサントスが目の前で直接誉められたものではないと言いだしたエチエンヌに補足した。

 

「まあみんな冷静になってくださいね。エチエンヌさんはこう言いたいのさ『もっと頭数を』って。そうでしょ?」

「ええ。本源的にはそうだわ。まあ、ない袖は振れない物かも知れないけど。ついでに何よそのゲーテの遺言みたいな言い方」

 エチエンヌからツッコミが入った。

「まあさ。無い物は無いから今は随分無茶させられているよ。今その頭数だって育成中だし。しかしほっといたら僕にハンドガン1丁渡して言って寄越すかも知れないね『公王の首級をあげてこい』って。射撃命中率、悪いんだよな。本源的には長篠の戦いだって鉄砲が勝敗を決したんじゃない。鉄砲の防御に伏せた槍衾が決したし」

 「え?」

 思わず声を上げたのは銃剣道の達人大場雄哉君だ。3Dホログラムの向こうから急に現れて狼狽(うろた)えている。

「発砲じゃないの?」

「雄哉君はそこを気にしなくて良いよ。現代の戦いは発砲は大事なんだ」

「そそそですよね。ソデスヨネ」

 雄哉君の狼狽えをカバーするのはやはり家族だ。

「そうよ雄哉、私は発砲する武器を選ばなかったばかりにライトシールド2枚掛けなのよ」

「お母さんは撃たなかったら何をしたら良いのかしらね?」

 雄哉をカバーしたのは大場家の姉と母だが、その辺りで笹本は置いておいた。

 

「まあ、僕は誰かのせいになんかしたくはない。本当に無い袖は振れないからね。だから」

「戦えないから守るのですか?」

 秘書官の各務原(かがみはら)若葉が声をかけた。

「各務原さんは司馬懿のその言葉好きなようですね。ただ今回は守っても援軍が来る予定は有りません。このままではジリ貧に全滅でしょう。こんな時は」

 笹本が結論を回答する前にエチエンヌが突っ込んだ。

「また逃げるの?」

「ええ。三十六計逃げるに如かずです。ただその前に」

「ああ。笹本君は一撃位叩き込んで『笹本君ファンクラブ』にしなくてはいけないんだね」

 

 笹本はそんな事を言ったウルシュラに嫌な目を向けたが、その意見に乗ることにした。

「そう。サイリウムの代りにビームやレーザーを。ウチワの代わりにミサイルを振り回して追いかけてくれる素敵なファンクラブを作りに行かなくてはいけないのです」

「まあ!随分物騒なファンクラブなこと!」

 エチエンヌのツッコミももはやここまでくると心地よい。

 

「そうだね。悪寒(おかん)が奔る素敵なファンクラブだね。ところで今日暖房切ってる?」

「ふぇ?艦内はいつだって21℃だよ?知らない訳じゃないだろ?」

「そうか。じゃあ僕がおかしいんだな」

「そうねおかしいわねケンジサン。あなたなんでそんなに鳥肌立てているの?」

 笹本にピトっと触れた叢雲が叫んだ。

「先輩さんなんでそんなに熱が有るんですか?ドクター!」

 そのまま笹本は艦内に設けられた自室に送られ、軍医のドルチドトエン先生からインフルエンザにつき1週間の休養を命令され、外に面会謝絶の札まで下げられたのである。

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 只今連載中

 犢端高校勇者部活動記録   https://ncode.syosetu.com/n0115ie/


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