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44話  陳興道会戦5

 見つけてくれてありがとうございます

 小島(かなめ)と血の気多めの仲間達がレーム艦隊をもぬけの殻にしているその頃、羅針盤座α陳興道(チャン・フン・ダオ)の会戦において、最も小さな衝突が起こっていた。

 グェン提督が率いているベトナム宇宙軍急造パトロール艦隊に対し、笹本達から逃げたテプラー艦隊が対峙し出したのだ。

 単独逃げ出したテプラーは、あちこちのまだ片付いてない艦船を拾い集め、50隻程の陣容に回復していた。しかしながら集合の合図に反応した艦船だからと言って無傷な艦船である保証はない。実際見てみれば煙が上がっている艦や、何ヵ所も武装や設備が吹き飛んでいる艦も多い。

 一方グェン提督が率いているベトナム宇宙軍急造パトロール艦隊は艦数は200隻、テスト運用が済んだだけの新造艦に廃棄間近の旧型艦とバリエーションが豊か過ぎるが、幸い壊れてはいない。養成所学生23人と義勇兵15人。そして第6艦隊から提督と共に来たベトナム出身者1名。合計40名の艦隊だ。

 

「提督、テプラーはやる気です」

 秘書官兼参謀兼副提督兼リーダーの第6艦隊から来た者が報告する。

「仕方ないだろうね。何せ第6艦隊のエンブレムは私が持っているのだから。よく見つけたものだよははは」

「笑ってる場合ですか?どこまで戦えるか分からないんですよ」

「大丈夫だよ」


 そう相方の肩を軽く叩いて立ち上がり、全艦マイクを繋いだ。

「諸君、目の前に居るのはテプラー艦隊の成れの果てだ。運悪く私が持っている国家連邦政府(こくれん)宇宙軍第6艦隊のエンブレム『赤地に黄色のS』目掛けてやって来たに違いない。逃げても追われるだろう。だからあれと一戦交えよう。諸君達の愛国心と義勇の誓いに期待する」

 方や満身創痍の50隻。方や博物館入りしそうな200隻。勝敗の行方はちょっと怪しい。

「あ。無線です。テプラーからです」

 わざわざ3Dホログラム入りで無線をかけてくるとは恐れ入り、グェン提督が応対した。

 テプラー提督は先の会戦のおりにかなり重度の負傷を負っていた。左目に何かが突き刺さり、(プリーツ)の少ないスカートは一部焼けていて、太ももに当てたメディカルパッチが朱に染まっている。

「酷い怪我じゃないですか。降伏したら医者を呼びますよ」

「クソが!無敗の私に土を付けた第6の提督をこの場で仕留めさせて貰うぞ。多少スッキリするだろうよ」

「その怪我で?」

 と、問いを送る前に無線は切れた。

「斉射まであとどのくらいだい?」

「相手は5分後、こちらはその30秒後です」

 旧型艦はどうしても射程が短いようだ。

「よろしい。各艦散開、1キロ以上3キロ以内に散らばっていこう。敵が斉射したら旗艦から離れるように回避しなさい」

 これは提督自らが囮になると言っている布陣だ。

「危険です。ここで提督が撃ち取られたらこの艦隊は瓦解します」

「大丈夫だよ」

 グェン提督は珍しく顔が本気だ。第6から回されたリーダーは囮なら私がやりますとか他の艦船への退避などあれやこれやと献策するが、何故か取り合わない。彼我の艦映が前照灯などで判別が出来るようになった頃、グェン提督は独り言を呟いた。


「サントス君、君の回避は佳く見て理解はしているつもりだよ」

 50隻の内半数位から斉射が来る。ここでグェン提督が叫ぶ。

「左舷スラスター全開!」

 旗艦が単独右側に移動する。予想通り斉射の狙いは旗艦一択であり、散開していた為スムーズな回避が出来た。

「被害は?」

「奇跡的にありません」

「それは重畳。サントス君の技、見て盗めたかな?全艦集合しながら前進、戦艦巡洋艦は斉射の準備を。駆逐艦は連装ロケットミサイルの準備急げ」

 旧型の駆逐艦にはナハトドンナーミサイルは搭載していない。威力は弱く速度も遅いが、その為追尾機能が有るミサイルだ。先程まで散開していた艦隊が再集結し、連装ロケットミサイルの射程に入ってからグェン提督が指示を飛ばす。

「斉射!続いて連装ロケットミサイルも放て」

 義勇兵と学生だらけのこの艦隊でもやれるものはやれるものだ。充分に上手くなった第6艦隊とは違い動きもたどたどしく集結時に少々接触事故も有ったが満身創痍の50隻が相手ならこれでも戦える。しかし突撃にかなりの自信を持っているテプラーはそれでも突っ込んでくる。みるみる近づく敵艦に更なる指示を出す。

「電磁レーザー及び機関砲放て。近づけるな」

 思い出したかのように電磁レーザーや機関砲を放つ各艦。ここら辺も戦い慣れていないが仕方がない。ちなみに機関砲というのも現在の艦船には搭載されていない旧式兵器だ。単純に40センチの砲弾を放つ物理兵器なのだが、各国で射出手段は随分違う。電磁加速方式や圧縮空気射出等が有るが、威力以上に厄介なのが、これ自体がスペースデブリ発生装置なのである。使われなくなるのも当然だと言えるだろう。

今回そのような環境に関する綺麗事を言っている余裕はない。これらの攻撃に元々半壊していた各艦船が軋みと悲鳴を上げるように崩壊していった。

 武装の影響で爆発炎上ではなく静かに艦船がコントロールアウトしていくのだ。ここで再びテプラーが自艦のみを反転させて逃げ出した。突撃に一過言有りそうな感じの性格はしているが退路は確保したがる性格なようだ。

「逃げますよ」

「うん。しかしもう遅い」

 反転中に機関砲という名のデブリを何発も貰い、更に行動が鈍くなりついには照準器も故障した旗艦は周囲に全く配慮出来ていなかった。その他の急増パトロール艦隊に逃げ道を絶たれ撃沈した。

「あ!手柄攫われた、良いんですか?」

「構わんよ。皆の勝利だ」

「しかし提督も充分戦えるではありませんか」

「私が戦えてる理由は若い第6艦隊の皆から技を盗み見ている程度だからだ。私ではサントス君のようには躱せないし、叢雲君のように苛烈にもやれない。笹本君のような用兵は……あれは逆立ちしても無理だな。戦うには中途半端すぎるよ。皆に頼られても困ってしまうからな。若い者達に運営はお任せしておきたいのだよ」

 そう言って紙コップにドリンクサーバーからジャスミン茶を注ぎ一息入れたグェン提督。

「ああ。無線が来ましたよ。第6艦隊から」

「ああ。出よう」

「提督、そちらで戦闘が発生したと聞きましたがご無事……なようで安心しました」

「おお笹本君かね。私なら大丈夫だ。そちらも随分やっているみたいじゃないか」

「お陰様で。とにかく提督が無事で安堵しています」

 これで陳興道(チャン・フン・ダオ)会戦は折り返しを迎える。長い戦いはまだ続いている。

 読んでくれてありがとうございます

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 最近Twitter始めました@kokochu539です。フォロー返しは今の所100%です。是非宜しくお願いします

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