43話 陳興道会戦4
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笹本達がベトナム宇宙軍に合流するまでの約2時間の間に大戦果の報告が来る。
ウルシュラが分離させたレーム艦隊は恒星陳興道の極北上空にポツンと構えていた。そんな所に惑星も彗星も無く、眼下に恒星系の惑星達の流れを眺望する事しか出来ない位置取りだ。
しかしそれをレーダーの外側から眺めている集団が居る。今や階級が上がり筆頭揚陸船団長の小島鼎、駆逐艦船団長の大場霙、雄哉のサムライ姉弟。更にスナイパーマムと吟われた狙撃兵、大場霰ママだ。艦数にしたら僅か1000隻程度の分艦隊だ。
「や。ホントに来たよ私の獲物。凄いよ」
「はい。ウルシュラさんが凄いのかはたまたこんな所までやって来るレームさんが逆にスゴいのか分からないレベルですね。で?どれが指揮艦なのか分か……るぞ!僕でも分かります!バカなんじゃないの?」
雄哉の言い様に姉の霙が反応した。
「バカかどうかは分からないけど、保身主義と言うより忠実なる佞臣なんだろうなぁ。部下には態度悪そう。何あの威圧感」
霙が言い出すのも仕方がない。事も有ろうに旗艦が金色な上に装飾が多いのだ。雄哉がバカと疑うのもこれまた仕方がない。
「気持ち悪いから殺るよ?殺るからね?」
「はい。この気持ち悪い生き物は早く駆除しなくてはダメな気がしますから。雄哉は見ちゃダメよ!」
「あれ18禁かなんかかよ」
「18金ならどうしようかしらね!少なくとも有害指定モノよ。感染したらどうする気よ」
姉弟揃って意外と仲が良い。
「小島さんはいつもやるの字面が物騒ね……良いと思うわ」
理由も言い訳も無しに霰もやる気は満々だ。思わずサムズアップしてしまう。それを見てニカっと笑顔を見せる小島が分艦隊に指示を飛ばす。
「じゃあとりあえず10隻ぶち当てるよ。旗艦に突き刺さった揚陸艦から皆テレポーターでお出かけして斬り込み戦に移行してください」
そう小島が伝えるとピックアップした揚陸艦10隻が向きを変え突撃を始める。揚陸艦は本来天体やコロニーに兵員を送り込む為の戦闘艦である。地表やコロニーからの抵抗火器の攻撃に耐える為、前方がとにかく硬く、しかもこの突撃時の速度は準光速に近い。それは正しく彗星のごとくやって来てゴテゴテと装飾したレームの旗艦に突き刺さる。
レームはウルシュラの偽電文を頑なに信じ、極北上空に留まっていた。偽電文の内容はそこに国家連邦政府宇宙軍第6艦隊が巡航速度でやって来るのでそれを殲滅せよという内容らしい。方向の指示まであったので、その方向に鶴翼陣形で待機している。小島たちから見れば尻丸出し状態である。
そして間違いなく第6艦隊はやって来た。巡航速度ではなく準光速で。たった10隻で。そしてまるっきり反対方向から。
後方に放てる武器の少なさと射程がら、10隻中7隻がレームの旗艦に突き刺さり、残り3隻は当たる場所に困って周回した後帰ってきた。7隻の内5隻が艦隊運用区画に当たり区画内にAI歩兵が突入する。
その先頭に居るのはもちろん大場さんのお宅だ。今回霰さんが手にしているのはミニUZIに似た形の無反動サブマシンガンだ。大場さん一家は相手方に大変恐れられている。特に大場雄哉君は小柄なのにカノープスの戦いでは185人の重軽症者を作り、提督のアシモフまでもを顔面陥没までさせているのだ。突入した雄哉を見た敵の兵員は逃げ出す以外の道は無かった。
しかし今回敵方が恐れるべきだったのは霰であっただろう。地味に他流試合が多く、地味にアーチェリーの訓練を繰り返した霰は、無意識で的に当てに行くようにまでなっている。そんな人が放つ無反動サブマシンガンの弾道は無慈悲そのものだ。
「まあ、どこに向けても的に当たるなんてご馳走じゃない?」
マシンガンを2丁構えて横薙ぎに撃てば戦死判定が出て目の前から敵が消えていく。むしろ悲惨なのは腕や腿などに当たって戦死判定が出なかった敵兵だ。艦船のコントロールパネルの脇でうずくまりただ泣き叫んでいる。
「いいBGM流すじゃない?」
「くっそがぁ!死ね!」
やっとの思いで振り上げたハンドガンを霰は蹴り飛ばし、腕を踏みつけて囁く。
「悪いけどこれは試合じゃないのよ。死合なのよ。無いのはルールと情けなの。お分かり?」
思い切り腹の部分を蹴り上げ、敵が吹き飛び反吐を吐いた。それでも銃口は前を向いたまま更なる被害者を作り続けている。
各模様は勿論ハイライトで放送され、第6艦隊の士気高揚に努めているが、霰の行動に関してばかりは見ていた多くがドン引きしている状態だ。
「あのさあ笹本君、この分隊の会話妙に字面がおかしいんだけど翻訳ミスとか有るかい?」
ドン引き映像やら何やらを見て色々チェックしていたウルシュラが笹本に聞いてみる。
「いや。見事な翻訳してるよ。凄いと思う」
「そっか。治さなくていいのか」
「治すべきはあいつらの字面だよ」
一方公国側もこの公国側の呼称カミカゼに対して何も無策で居る訳では無かった。第6艦隊の日本人クルーの呼称衝角戦、斬り込み戦に対し、その艦船の攻撃を行うようになってはいた。しかし7隻もの艦船がカミカゼ、或いは衝角戦を成功させたという事が対応を大幅に遅らせてしまった。
衝撃で多くの艦船コントロールを行う兵員が怪我を負い、死亡判定を得、それでなくても配線やコントロールパネルが損傷し、かなりの数の艦船が行動不能になっていた。
僅かに行動できる艦船が衝突した揚陸艦に攻撃をかけたが、ウルシュラは万一衝突後に撃沈されても師団長やAI歩兵が無事に行き帰り出来るようにテレポーターに使うエネルギーを相手から吸収できる寄生電力システム、更にマイクロ核融合発電機まで搭載して自家発電システムまで搭載していた。
揚陸艦を破壊してもテレポーターゲートが無事なら何体でも軍団を送り込めた。対策は対策に追い付いていなかったのだ。
結論1艦隊5万隻のレーム艦隊はその機能をも十全に機能させることも出来ないまま提督脱出、居残った各員は全員怪我人として海浜幕張の第6艦隊基地に移送されるか死亡判定を経て公国のどこか一ヵ所に送致された。陳興道会戦で2番目に規模が小さい戦闘がここに決着を見たのである。
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