39. 喋る猫
〜〜大悟〜〜
大悟達は新宿駅に到着し、そこから少し歩いて、今はトロッコの前にいる。
「な、なんだいこれは?」
勇巳達はトロッコをまじまじと見つめていた。
「いいから乗って乗って」
大悟は、勇巳達を半ば強引にトロッコに乗せた。
ガタン。
「うお、なんだ? 動き出したぞ」
「凄いな、これは」
トロッコは大悟の魔力を得て、動き出す。
そして、行き止まりまで来るとトロッコはそのまま浮き上がり、上昇していった。
「うお、浮いたぞ」
「全く、なんでもありだな」
上昇したトロッコが展望台に着くとドアが開く。
2人は、その光景を見て言葉を失った。
「……」
「……」
「2人共、そんな所に突っ立ってないで早くそこのソファーに座ってくれ」
「あ、あー、すまない」
勇巳と優希は正気に戻ると、大悟が指差したソファーに座った。
3人がソファーに座ると、エリが紅茶を入れて持ってきてくれた。
「どうぞ、紅茶です」
「ありがとう」×3
大悟達は紅茶を1口すすった。
「それで、考えがあるって言ってたけど?」
勇巳は早速本題に入る。
「あぁ、それね。これだよ」
大悟は空間収納から異世界の食材を取り出し、勇巳達の前に置いた。
「これは?」
「これは異世界の食べ物だよ」
「え?」
勇巳と優希は驚いて目が点になる。
「実は、異世界の食材を食べると、この世界の人間でも異世界の力を得る事ができるんだ。勿論、練習は必要だけど」
「つまり、これを食べれば僕達も大悟さんのように強くなれると?」
「いいえ、それは不可能です」
突然、エリが会話に入ってきた。
「御主人様の強さは神にも匹敵します。普通の者が異世界の力を手に入れたからと言って、御主人様と同等の強さを得る事など、天地がひっくり返っても不可能です」
苦笑いをする大悟。
「ま、まぁー、別にみんなを守れる強さを得れればいい訳で。俺になる必要はないよ」
「そ、そーですね。みんなを守る事ができるなら」
「うん。それじゃあ今からこの食材を食べて貰うんだけど、これを一口でも食べたらもう後戻りはできないよ。普通の人間では無くなるんだ。構わないか?」
勇巳と優希は、お互いに目を合わせ頷く。
そして、2人は大悟に向かって
「構わない」
と声を揃えて言い、食材を手に掴んで口に放り込んだ。
ムシャ、ムシャ、ムシャ、ゴクッ!
2人は異世界の食材を飲み込む。
「と、とくに変わった様子は」
「そ、そうだね」
「まだ適性が生まれただけだよ。これから特訓しないと。だからエリとユリ、彼等に闘気、魔力の高め方を教えてやってくれ」
「分かりました。それではこちらへ」
「あ、はい」×2
エリは勇巳達を練習場に案内する。
誰も居なくなったリビングで、大悟はお茶を飲んで寛いでいた。
すると入り口のドアが開き、エビスが現れる。
「ただいまでござる。おや、大悟殿。もう帰ってたでござるか。丁度良かったでござるよ」
「ん、どうした?」
「実は、拙者にも動物の部下が出来たでござる」
「へー、良かったじゃないか」
「それで、その内の4匹に異世界の食材を食べさせようと思ってるでござるよ」
「え、大丈夫なの?」
「大丈夫でござる。動物は人と違って、自身が認めたリーダーを裏切るような事は決して無いでござるよ。勿論、何かあった時の責任は全て拙者が取るでござる」
耳が痛くなる話だな
「そうか。エビスがそこまで言うんだ、信用しよう」
「忝いでござる」
「ただ、俺に一度合わせてくれ」
「ふふ、そう言うと思って、実はこのビルの近くまで連れてきたでござるよ」
エビスは、したり顔をして笑う。
「ちょっと待ってるでござる」
エビスは、そう言うと走って部屋を出ていってしまった。
それから数分してエビスは、ネズ丸、ネズ吉、猫太郎、犬次郎を引き連れて戻ってきた。
「彼等でござる」
動物達は部屋に入ると、硬直した。
「ん、どうしたでござる?」
実は動物達はここに来る前、エビスから「これから合う大悟殿は、拙者の主ウサ。拙者が何百匹いようと話にならない程、偉大な力を持ったお方なので決して粗相のないようにするでウサよ」と言われていた。
それを聞いた動物達は恐怖で体を震せる。
そして、大悟の姿を見た瞬間、恐怖はMAXに達し、体が硬直してしまったのだ。
緊張してんのかな?
大悟は猫太郎を持ち上げ、抱っこした。
猫太郎は、そのまま硬直して動かない。
「大人しい猫だな、ほれ、これ食うか?」
そう言って大悟は異世界の食材を取り出して、猫太郎の口の前に出す。
猫太郎は鼻をヒクヒクさせ、恐る恐る口に含んだ。
すると、あまりの美味しさに猫太郎は食材にかぶりつき、ムシャムシャと食べ始めた。
「うお、急に元気になったな。あははっ」
「お、美味しい」
「え?」
「美味しい、美味しい、ムシャムシャ」
「エビス、猫が喋ったぞ」
「何を言ってるでござるか。人語を喋る動物など我々のいた世界には、いっぱい居たでござるよ。きっと猫太郎は異世界の食材を食べて、言語スキルが身に付いたでござるな」
なるほど
大悟は鑑定を使い、猫太郎のステータスを覗く。
すると、言語スキルLv1が身についていた。
「本当だ。ついてる」
「で、ござろう」
「これはいいな」
大悟は他の動物にも同じ様に抱っこして、異世界の食材を食べさせていった。
「全員、言語スキルLv1が付いてるな。言語スキルは喋っていれば勝手にレベルが上るから、出来る限り人語で喋っていこうな」
動物達は大悟の言葉に頷く。
「それじゃあ、闘気と魔力の練習なんだけど。今、機械室は美香達が、練習場はエリ達が使ってるから、ここを使っていいよエビス」
「大悟殿はどうするでござるか?」
「部屋で武器とかの製作をしてるよ。なんかあったら声かけて」
「了解でござる」
そうして大悟は部屋に行き、エビス達は特訓を開始した。
部屋に篭る事2時間。
「んんんー、疲れたぁー。少し休憩するか」
大悟は、紅茶でも飲もうとリビングに移動する。
「あ、大悟さん」
「終わったでござるか?」
「お茶頂いてるよ」
リビングには、全員が集合していた。
「エリ、俺にもお茶頂戴」
「はい」
「それで、皆どんな感じ?」
最初に美香が喋り出す。
「美沙が闘気を使えるようになったわよ。私達はまだだけど」
「凄いじゃないか美沙」
「ふふん」
美沙がドヤ顔をする。
次にエビス。
「動物達には闘気、魔力の上げ方を一通り教えたでござる。後は、自分達で頑張るでござるよ。闘気、魔力を扱えるようになったら、またここで特訓するでござる」
最後に勇巳。
「僕達も同じだね。この特訓なら自分達の拠点に戻っても出来るから、大悟さんに挨拶して帰ろうと思ったんだけど、今日はもう遅いから泊まってけって言われてね」
「いいんじゃないか。それじゃあ今日は鍋パーティーにでもするか」
「鍋でござるか。うひょー」
「鍋、好き」
「やったぁー、鍋だぁー」
「何鍋にするの? ねぇー何鍋?」
こうして大悟達は鍋パーティーを楽しみ、その後、大悟が作った臨時の布団をリビングに敷き詰め、皆一緒に就寝した。
まるで修学旅行だな




