27. エリとユリ
よし、俺も向かうか。由紀無事でいてくれよ
〜〜由紀〜〜
由紀が居なくなる1時間前、由紀はトイレを探して歩き回っていた。
「えっと、トイレはどこだろぉ? あ、案内図発見」
由紀は案内図でトイレの位置を確認し、無事トイレを見つける。
「ふぅー、スッキリスッキリ。でも拠点のトイレ使ってると、外のトイレ使いづらく感じるなぁー。臭いし汚いし、拠点のトイレ持ち歩きたいぐらいだよ」
そんな不満を言いながら、由紀は大悟の元に戻ろうと歩いていた。
すると突然、由紀は後ろから数人の男に押さえつけられ、手足を縛られ、口を塞がれた。
「むぅー、むぅー、むぅ」
「よう、久し振りだな」
縛られた由紀の前に現れたのは『ウラン』グループの奴等で以前、美香達を奴隷にしようとしてた男だった。
「むぅー、むぅー」
「おっと、お喋りは後だ。あの野郎がいつ現れるか分かんねぇーからな。場所を移動させてもらう」
男達は由紀を担ぎ上げると、急いで図書館から出て行った。
由紀を担いだまま1時間程移動すると、男達は適当なビルを見つけ、感染者に気を付けながらビルの中に入っていった。
「ここまでくれば安心だろう」
そう言って男は由紀の口を塞いでた布をとる。
「ぷはぁー。な、なんで貴方が?」
震える声で問いかける。
「俺達はなぁー、あの野郎のせいでボスに殺されそうになったんだよ。お前達を連れて来なかった罰でな」
男はニヤニヤしながら話を続ける。
「しかし、お前も運が悪いな。俺達が図書館を通りかかったタイミングで声を出すなんて。ボスから逃げる為にこんなところまで来たが、逆に俺達は運がいい。お前を人質にしてあの野郎をぶち殺せるんだからな」
「貴方なん、ゲホッ」
由紀は喋ろうとした瞬間、お腹を強く蹴られた。
「貴方じゃねぇ。俺の事は武様と呼べ、今日からお前の主人になるんだからなぁ」
この男の名前は三浦 武、歳は今年で35歳である。
「……」
由紀は声が出せないでいた。お腹の痛みと恐怖によって
「なぁー、この女やっちゃっていいんだろ?」
「お前ズルいぞ、こう言うのはジャンケンだろ」
「全員でやっちゃえばいいんじゃね」
「お前天才だな」
武の横でアホ集団が騒ぎ出す。
「お前ら静かにしろ、まだこのビルのチェックが済んでねぇんだ。遊ぶのはちゃんと安全を確認してからだ。なぁーにこの女は逃げられねぇよ、お楽しみは後にとっとこうぜ」
「へへへっ」
不気味に笑う男達
「助けて、助けて、誰か。お姉ちゃん、美沙……大悟さん」
由紀は、蹲って願う事しか出来なかった。
〜〜エリ、ユリ〜〜
エリは索敵を使い、人の反応を追っていた。
「こっちに人の反応があるわ、急いで」
「了解よ、お姉ちゃん」
2人はスピードを上げる。
数分走ると、エリ達は肉眼で人を捉える。
「お姉ちゃん、アレ」
「襲われているわね」
そこには、8人の女性グループが数十体の感染者に襲われていた。
「由紀様はいないみたいだけど、どうする?」
「もちろん助けるわ、見殺しになんてできない」
「でも」
「大丈夫よ。御主人様とエビスが動いているのよ、あの2人が動いて救出できない方が不思議だわ」
「そ、そうね。分かったわ」
「それじゃあ、ユリお願いね。私は援護するから」
「了解」
するとユリの姿が消え、一瞬で女性グループと感染者の間に現れる。
「名刀 円舞」
ユリは空間収納から刀を取り出す。
――名刀 円舞――ユリの愛刀。円を描くように舞うことで全てのステータスを大幅上昇することができる。そして、舞の素晴らしさから『動く芸術品』とまで言われている。
「参ります」
ユリは刀を構え、動き出した。
柳の様にしなやかに動き、音も立てずに感染者の首を切断していく。
「き、綺麗」
女性グループの1人が呟く。
女性達は今、ユリの円舞に魅了され完全に足を止めていた。
すると、ユリが討ち漏らした数体の感染者が、女性グループに襲いかかる。
「きゃー」
数人の女性が噛まれようとした瞬間、炎の矢が感染者を捕らえ、一斉に燃えて消し炭になった。
「全くユリったら、こんな雑魚を討ち漏らすなんて」
ビルの上から見下ろしているエリ。そのエリの左手には炎でできた弓があった。
エリは、もしもの時に備えて魔法で作った弓矢を構え、感染者をずっと狙っていた。
全ての感染者を倒し終え、エリ達は女性グループの元へ向かう。
女性達は口をあんぐり開けて呆然としていたが、エリ達が近づくと正気を取り戻す。
「あ、貴方は一体?」
リーダー格の女性が問いかけてきた。
「それは貴方達には関係ない事です。ただ、助かった。それだけで十分でしょ?」
「そ、そうね」
「それでは、私達は先を急ぎますので」
「ちょ、ちょっと待って」
「なんでしょう?」
「お願いがあるの。私達を『ホープ』のところまで連れてって欲しいの」
「ホープ? なんですかそれは?」
「し、知らないの? 東京最大のグループよ。私達は、そこに入りにここまできたの」
「そうなんですか? でも私達はホープの場所も存在も知らないので」
「場所は私達が知ってるわ、一緒について来てくれるだけで構わない。あと少しなの。もう、これ以上犠牲者を出したくないの。お願い、私にできる事なら何でもするから」
「犠牲者? 何人で来たんですか?」
「25人よ。今はこれしか残ってないけど」
「そうですか……分かりました。そこまで私達が護衛いたしましょう」
「ちょっと、お姉ちゃんいいの?」
ユリが後ろから口を挟む
「ここで死なれては気分が悪いわ。それにここで見殺しになんてしたら、御主人様はきっといい顔をしてくれませんよ」
「そ、そうね。御主人様なら見殺しになんてしないもんね。分かった手伝うわ」
「あ、ありがとう。とても助かる。私の名前は美由紀よ、宜しくね」
美由紀は満面の笑みを浮かべる。
「私はエリで、こちらはユリです。時間が惜しいので挨拶はこれぐらいにして先を急ぎましょう」
「分かったわ」
道中、数体の感染者に出会ったが、エリとユリが瞬時に倒す事で、移動はスムーズに行われた。
そして、30分程でバリケードが置かれたビルに到着した。
「ここよ」
そう言ってビルの入り口を叩く。
すると、中から2人の男性が出てきた。
「御主人様!」
エリとユリが思わず叫ぶ。
そう、中から出てきたのは知らない男と大悟だった。




