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柊マミ@スズメを休ませたい~世界が勝手に願いをかなえてくるけど、余裕で解釈違いなんですが⁉  作者: 奇蹟あい


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27/52

第27話 スズメが暴走して……日本沈没⁉

 教室の室温27度……か。


 んー、暑い。

 クーラーの効きが悪いんじゃない?


 ……なんてことはないよね! 27度最高! ぜんぜん暑くない! 超快適気温ー!


 いや、ダメだったわ。

 南極のブリザードみたいな風が直接吹いてきた……。


「へっくしゅん」


 こんなの風邪ひくって。


 ん。

 スズメが席を立って、トコトコこっちに歩いてきた?


「マミ~。肉まん食べる?」


 にっこりと。


「……ありがたくいただきますけどー……でも今、授業中ですよ!」


 怒られるよ!

 そもそもその肉まんどこから持ってきたの⁉ 真夏だし、購買にもコンビニにも売ってないでしょ!


「首の太い血管を温めると良いよ~」


 マフラー!

 スズメ柄の刺繍でかわいいけど!


 真夏にブリザード級のエアコンの風にあたりながら、マフラーをして肉まんを食べるわたし。


 これは何のガマン大会なの?


「エアコンを調節してくれたら、それで良いんだけどな……」


 普通が一番だよ。



「いや、暑い……」


 また27度……。

 ちょうど良い温度設定は無理なの……?


「そうだね~。ヴェネツィアって良いよね。憧れちゃう~」


 イタリアの水の都ヴェネツィアですか?

 いや、急に何の話?


 そんなことより。


「席に戻って授業を受けなさい」


「でも~」


「でもじゃない」


「でもでも~、そのままの服だと濡れちゃうよ?」


 ……はい?


 えっ、えっ⁉

 教室に大量の水が流れ込んできた⁉ え、水道管が破裂した⁉


「ヤバいヤバい!……ヤバ……い……?」


 先生もクラスメイトも……誰も騒がないね。

 

 膝辺りまで水浸し……あー、そういうこと?


「水の教室2-2~! なんちゃって♡」


「かわいく言ってもダメ」


 かわいいけど!


「夏服が水着になった伏線を、ここぞとばかりに回収しようとしなくて良いから……」


 あーあ、上履きと靴下がぐちゃぐちゃだよ……。


 と、水の流れに乗って、教室の前を大きなスズメが泳いで――。


「やあ、柊。……これはまた、派手にやってるな……」


 スズメ型の足漕ぎボート!

 ……に乗る幼女――じゃなくて、池中先生!


「池中先生……。わたし……じゃないですよ」


「マミもゴンドラで移動する?」


 それ、ゴンドラじゃなくて足漕ぎボートだから。

 ゴンドラはもっと大きくて、たしか木の舟で、ウンディーネさんが立って手漕ぎで進むボートだからね。


「かわいいけど……普通の教室に戻してほしい」


 水の都はノーサンキュー。


「ペンギンのマミも喜んでるのにな~」


 ペンギンの……わたし?

 すごい速さで水中を移動している黒い物体が!


「これがお風呂場で飼っているという例のペンギン……」


 この間の『常夏の海~沈まない太陽2倍キャンペーン』の時に南極に帰りそびれたっ子だ。わたしと同じ名前が付けられている!


「マミ~、マミ~! 戻っておいで~!」


「クワックワッ!」


 びっくりした! めっちゃ大きい声で返事するんだ……。


 ていうか、思ったよりペンギンデカい!

 スズメと身長がほとんど一緒! 若干ペンギンのほうが大きいんじゃない⁉


「マミ~♡ えらいえらい♡ 肉まん食べる~?」


「ちょちょちょ! ペンギンに肉まんあげちゃダメ!」


 ペンギンの食べ物は魚でしょ!


「南野。肉も小麦も、やめておいたほうが良いな」


 ほらー。理科の先生もこう言ってるし!


「え~? マミはお肉大好きなのに~?」


「それはこっちのわたし……」


 人間のほうのマミの好物です。

 まあ、わたしは、魚も好きだけど。好き嫌いとかないからね。


「こっちのマミもマミと同じだよ~。ね~、マミ~♡」


「クワックワックワックワッ!」


 めっちゃ懐いてる……。

 あ、肉まん一飲みにしちゃった。

 寒いところの動物だし、熱い食べ物は普通にダメだと思うんだけどな。


「クワッ!」


「あ~、そうなんだぁ。じゃあいこっか~!」


 スズメがマミ(ペンギンのほう)の背中に乗って――。


「ちょっとスズメ⁉ どこ行くの⁉」


 ナチュラルにメルヘンなことしないで。

 今日は『常夏の海~沈まない太陽2倍キャンペーン』の日じゃないよ! もうそんな日は来ないでほしいけどね!


「えっと~。あっちに南国のアイス屋さんが来てるってマミが教えてくれて~。ちょっとアイス買って来ようかなって」


 ふむふむ。


「クワッ!」


「ね! 売り切れたら困るよね!」


 ふむ……。


 完全に……ペンギンと会話してるね。


「これが、柊の望みか? 意外と少女趣味があるんだな」


「絶対違いますね」


 見た目幼女な先生に言われると、脳がバグりますね。


「それならこれは……なんだ?」


「それをわたしに訊かれましても……」


 また世界が忖度を?

 でも、わたしはぜんぜんうれしくない……気もする?


 スズメがすっごく楽しそうにしているから、まーーーーー、良いですけどね……。


「う~~~~ん。いかんなぁ」


 池中先生がスマホの画面を見て、何やら難しい顔をしていた。


「また何かトラブルですか……?」


 まあ、今の惨劇がトラブル以外の何物でもないんですけどね。


「異変が広がり過ぎている……」


「たしかに、だいぶ、ぐちゃぐちゃですね」


 控えめに言ってもカオスな状況だなあ。


「いや……日本の国土の7割が水に覆われた」


「えっ⁉」


 日本沈没⁉


「暴走しているな……」


「まずくないですか? これってどうすれば……?」


 わたしが願う? 元に戻れーって。


 でもさっきから、けっこう願ってるような気もしないでもない……。


「違う。南野が、暴走しているんだ……」


「あー」


 そういうことですか。

 たしかに暴走してますね……。

 ペンギンに乗ってどっか行っちゃったし。


「マミ~、せんせぇ! 南国アイス買ってきたよ~!」


 10段くらい重ねてあるアイスを両手に。

 どんなバランスで乗ってるの、それ……。


「スズメ、楽しそうですね」


「ああ。非常に良くないな」


「良くないんですか?」


「良くないぞ」


 スズメが楽しそうなら、わたしは良いかなって思いますけど?


「修復をすべき役割の南野が、積極的に異変を引き起こしてしまっている。そしてそれを、柊は必ず許容する。世界はそれすらも理解した状態でこうなっているということだ」


 うーん。

 うーん?


「ダメ、ですかね?」


「異変はなるべく早く修復しなければ、その状態が異変ではなくなり、確定してしまうからな」


「……日本は沈没して、水の国になるってことですか?」


「このままだとそうなる」


 んー。


「それは、ちょっと困りますね」


「ちょっとどころではないがな」


 冗談ですよ。

 めっちゃ困りますね。


「んんー。スズメ……疲れているんでしょうね」


 ずっとわたしのために世界を修復し続けて……夢の中でも修復しているし、たぶんぜんぜん休めてないんだと思う。


「それは否定しない。だが、南野にしかできないことだ」


「なぜ、スズメだけにしかできないの?」って訊いても、明確な答えは返ってこないんだよねえ。


「困りましたね」


「困った」


 なんか、期待するような目で見てきますけど、何ですか……。


「いやー、わたしはわたしで、大人になろうとがんばってはいますよ?」


 なるべくいろいろなことを受け流すように。

 そして受け入れるように、ってね。


「それは……助かる。が、しかし……」


 池中先生はスズメを見つめていた。


「もう少しちゃんと……休ませたい、ですね?」


「そうだな! 南野には少し休む時間が必要だな……」


 お、なんか方向性が合っていたっぽい。

 でも先生の気持ちはわかる。


「たしかにねー、休んでほしいなあ。世界のほうも変に気を回して、わたしの願いをかなえようとしなくて良いから、スズメの出動機会を減らしてほしいですね……」


「そう、だな……」


 先生は、ずっとスズメのことを目で追っていた。

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