表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

第一話 天国と地獄

「山田太郎さん!……1兆円規模のプロジェクトを成功させた今の御気持ちは?!」


複数のカメラフラッシュが俺を照らしていた。何を隠そう今の俺が世界で最も注目される人間だ


「はっきり言います。僕だけの力ではありません。このプロジェクトに携わった全ての関係者のお力添えがあってこそ、このプロジェクトは成功しました!」


バンッ!!


銃声が鳴り響いた瞬間、俺の意識は遠退いていった……。


ここまでが記憶の最後。しばらく辺りは真っ暗な暗闇に包まれていて、意識の中ではっきりとメッセージが表示された


【RESTART】


【WORLDCHANGE!!!!】


【OK?】


選べるのか…?


「NO」


【GO!NewWORLD】


日本語に変換してくれ…。


【いいから黙って従え】


口悪。


その瞬間、目の前に眩い光が差し始めると、俺は異世界に転生していた。


品のある女性神官がこちらを見て微笑んだ。


「成功です。紛れもない勇者様です」


俺が…勇者?

いやいや、惑わされるな。俺は成功者だ。こんなところで油を売ってる場合ではない。一刻も早く帰還せねば!


「あの…すみません。家に帰らせてく──」

話を割るように後ろに控えていた王様らしき人がゆっくりとこちらに向かってきた。


「神官よ、勇者様のさっそくステータスを調べてくれ」

「かしこまりました」


神官が青い玉を持ち出すと、そこに手を触れるよう案内してきた。

とりあえず…やってみるか。これで良いのか…?


反応無し。


「……残念ですが……失敗です」


いや失礼だろ。


「ちゃんと調べてくれ。わざわざ転生されたんだ。何かあるはずだろ!」

「…良いだろう。神官よ。ステータス、スキル、魔法、全て確認してみてくれ」

「かしこまりました」


しばらく神官が険しい表情で俺をジロジロ確認し、見解を述べた


【ステータス】

山田太郎 レベル1

力【F】

魔【F】

体【F】

早【F】

【職業】凡人

【才能】剣術レベル0 魔法レベル0

【所持スキル】なし

【所持魔法】なし

【特性】成金(0)


「以上になります」


「良くやった神官よ。もう良い下がって良いぞ。希に見る失敗作だ…。兵士達、この者を城の外へ閉め出すがよい!!」

「ちょっと待て…!」


俺は心無い兵士二人に城の外へ閉め出された──


それに特性の成金って一体何なんだ…?


外は生憎の大雨。

宿で雨宿りをしたいが金もない。

そもそも街を見渡すが読めない文字が並んでいる。この世界の文字だろう。


宛もなく街を歩いていると中央の広場にたどり着き、真ん中に聳え立つ巨大な樹木の下で雨宿りをすることにした。


ピチャッ


小さな足音の先には小汚ない服装の少女が不安そうな表情でこちらを上目遣いで見ている。

(見せ物じゃないぞ…?)


「あなたが世界を救う勇者ですか…??」


少女の真っ直ぐな瞳が俺の判断を迷わせた。

だが嘘は良くない。はっきり言おう


「俺は勇者ではない。さっき王宮で転生されたが、失敗作と罵られ城から閉め出されたところだ」

「そんな……じゃあ私のパパとママは…助からないの?」


どんな展開だこれは。今の俺に何ができる?それ以前に、俺自身これからどう生きていくかさえ全く見えない状況なんだが…。とりあえず、少女には申し訳ないがここは一先ず──


どこからともなく叫び声が聞こえてくる


「助けてくれー!」

「勇者様はどこですかー!!」


大雨の中、街を走り回る住民の姿だった。

同時に、城の兵士達がぞろぞろと街に駆け付けた。

指揮官らしき女性騎士が辺りを見渡していた。


「奴等が来るぞ!お前達、気を抜くなよ!」


なんかヤバそうな気がした俺は少女を安全な所へ避難させ、俺自身も建物の隙間に身を隠した。

すると間もなく現れたのは魔物の軍勢。

こいつらがさっきの女性騎士が言っていた奴等だと確信した。


王宮の騎士達と魔物の軍勢の戦いが始まった。

なんて世界に俺は来てしまったんだ…。

そもそも異世界ものはこんな感じじゃないだろ!

息を殺して沈黙を続けていると、戦場から飛んできた弓矢が頬をかすめる。


ツーッ──


軽い出血。痛みを感じた瞬間、この世界のリアルを実感した。さっきまで他人事のような感覚があった山田は突き付けられた現実に、身を縮めて震え始めた。


現実世界では味わうことの無い恐怖──


これが戦いなのか…。だが凡人の俺には何も出来ない…。ただただ劣等感に苛まれていた。


「勇者様が来るまで何とか持ちこたえろ!!!」


女性騎士が声をあげると、背後から大型の魔物が奇襲を仕掛け、背中をナタのような刃物で切りつける


「ぐはっ!」


その場に仰向けに倒れ込む女性騎士。倒れたと同時に手放した剣を命かながら手を伸ばすがギリギリ届かない。

大型の魔物は女性騎士の背中に乗り何度も切付け、女性騎士は絶命した。

その光景を目の当たりにした俺は完全に恐怖で身体が固まっていた。

大型の魔物が俺と目が合いニヤリと表情を変え、ゆっくりとこちらへ歩き始めた。


「やめろ…!近寄るな!!た、助けてくれぇ!!」


金も女も欲しいものは全て手に入れた。そして大きなプロジェクトも成功させた…!

なのに何故こんな事に……俺が何をしたって言うんだ!

その場から逃げようにも足がすくんで身動きが取れない。


このままじゃ死ぬ──


死を覚悟した瞬間


キーンッ


「はぁ…はぁ…、勇者様から離れろ!この化け物!!」


さっき助けた少女が金貨を魔物目掛けて投げ込んだ…!


大型の魔物は一瞬沈黙すると、すぐさまナタを掲げて少女に駆け寄った。


(くそっ!俺を助けてくれた少女だけは見殺しに出来ない!!!)


地面に落ちた金貨を手に取り、大型の魔物目掛けて大きく構えた瞬間、全身が金色の光に包まれた!

頭の中からメッセージが聞こえる


【ユニーク特性《成金》の発動条件が満たされました】


【所持金貨:1G】


【全てのステータス·才能が上昇】


【スキル《ゴールド·ウェポン》習得】


【主の意思に共鳴したゴールド·ウェポンが1Gを消費して自動発動します】


【標的は目の前のオークキングで宜しいですか?】


「良く分からんがそれでやってくれ!!」


【御意】


オークキングの頭上から黄金に輝く剣が生成され、勢い良く頭上を貫いた!

なんて威力だ…成金という特性の使い道を理解すれば俺もこの世界で戦えるのか…?

とりあえずあの少女のところへ!


少女が目を開けると、そこには笑顔で手をさしのべる山田の姿があった。


「助けてくれてありがとう。…まだ戦いは終わってない。一緒にここを離れよう」

「はい!」


二人は魔物達が居ない方向へ走った。


「こっちに安全な場所がある!」

「わかった!」


少女が案内した道の先には古びた小屋があり、そこへ身を隠すことにした。どうやらここは少女が住む小屋のようだ。


「さっきは助けていただいてありがとうございます」


少女の真っ直ぐな瞳は山田にとって眩しかった。死を覚悟した俺を、こんなにも幼い少女が助けてくれた事実。


「助けられたのは俺の方だよ。君が助けてくれなかったら俺は間違いなくあの時死んでいた」

「ううん。やっぱり勇者様は勇者様ですよ!絵本で見た黄金の剣で魔物をやっつけてくれたの、私見たもん!」

「あれは…」


黄金の剣…?さっきのアレか。ユニーク特性《成金》…これがこの世界の攻略の鍵になるのか。


「君、名前は?」

「私はアリス。アリス﹦ヴレンツェと申します。」

「俺は山田太郎だ。よろしくな!」

「山田太郎様…。素敵な名前です!」

「太郎で良いよ。様なんて柄じゃないからな」

「では太郎さんと呼ばせていただきます!それと、もし泊まるところがないのであれば、助けてくれた御礼にうちに泊まっていってください!ご迷惑でなければ……」

「えっ、良いのか?めちゃくちゃ助かる!」

「良かったです!!」


魔物の軍勢は、俺が倒したオークキングがリーダー各だったらしく、その後に駆け付けた勇者パーティーが魔物の軍勢を一掃した。

当然だが俺の名前が世に公表されることはなかった。


宿泊した際に、少女からこの世界の様々な事を聞いた──

この世界は魔物の軍勢を率いる魔王軍によって混沌に包まれていて、各国の王達が定期的に別世界から勇者を転生召喚して、魔王軍との戦いに備えているという。

だがこの数百年、幾度となく戦争が始まったが全ての魔王軍の勝利で終わっている状況らしい。

魔王を打ち破る伝説の勇者の誕生を各国の王達が待ち望んでいた。

少女いわく、先ほど俺が倒したオークキングは、各国の騎士団長クラスでも歯が立たないクラスの魔物だったというが、それが本当なら俺の特性《成金》はかなりのぶっ壊れ特性なんだろう…。

金貨を消費してステータスの上昇や特殊スキルの使用ができる特性。

今後の戦いのためにも、常に金貨を所持して戦う必要がある。

どうやらこの世界には冒険者ギルドが存在していて、そこで魔物を討伐することで大量の金貨を貰えるらしい。

だが、金貨を持たない俺ではそもそも戦えない……ここは恥を承知でお願いしてみるか…。


「どうやら俺の特性は金貨を消費して戦う厄介な能力なんだが……恥を承知でお願いしたい。」

「ちょっと待っててくださいね!」

「えっ?」


アリスは部屋にあった金貨を布袋に詰めて山田に手渡した


「これだけあれば結構戦えますか??」

「こんなに…??アリスの生活資金じゃないのか?」

「私は大丈夫です。親の手伝いでやっていた畑で採れた野菜を街で売っているんです。その金貨は太郎さんが使ってください!」


(なんて出来た子なんだ!)


「では…ありがたく使わせて貰うよ!必ずこの借りは返させてもらう!」


【所持金貨:55G】


次の日の朝、俺は冒険者ギルドへ向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ