第12話 倉庫の外の仕事
倉庫の外に出ると、空気が少し冷たかった。
夕方の光が、町の通りを斜めに切っている。
人の視線が増え、音も増える。
(……やっぱり、外は違う)
入口で待っていた男は、言葉少なに歩き出した。
ついて来い、という意味だろう。
倉庫から離れるにつれ、建物の雰囲気が変わる。
荷を扱う場所から、人が住む場所へ。
男は立ち止まり、地面に置かれた木箱を指した。
箱は一つ。
倉庫で扱っていたものより小さいが、形が違う。
(……中身が違う)
音がしない。
中で動くものもない。
男は、自分の背後を指し、次にルーシーを見る。
護送。
距離は短い。
(……危険度は、低)
ルーシーは箱に近づき、軽く持ち上げてみる。
重さは問題ない。
(二十キロ弱)
肩は使わない。
脚で立つ。
男はそれを見て、短く頷いた。
道は町の端まで続いている。
人通りは少ないが、完全に途切れるわけではない。
(……誰かに見られる仕事)
それが、少しだけ安心だった。
歩く速度は、男に合わせる。
速すぎず、遅すぎず。
途中、路地の影が濃くなる場所があった。
ルーシーは、自然に立ち位置を変える。
男と箱の間に、自分が入る。
(……何かあっても、先に気づく)
心拍は落ち着いている。
視野も広い。
運動をしていた頃と、同じ感覚だ。
何事もなく、目的の建物に着いた。
木箱を置くと、
奥から別の男が現れ、箱を確認する。
言葉を交わす二人。
内容は分からない。
だが、仕事が終わったことは分かる。
護送は、これで終わりだ。
戻る道すがら、最初の男がルーシーを見る。
「……ルーシー」
名前を呼ばれる。
その響きに、もう違和感はなかった。
男は、腰の袋から小さな革袋を取り出した。
軽く振る。
中で、音がする。
(……金)
倉庫ではもらえなかったものだ。
ルーシーは一瞬迷ってから、受け取った。
(……働いた分、か)
量は多くない。
だが、確かだ。
倉庫に戻ると、
年配の女性がすぐにこちらを見た。
何も聞かない。
ただ、目で確認する。
(……無事)
ルーシーは、軽く頷いた。
それで、話は終わりだ。
夜、寝台に横になる。
今日一日を思い返す。
倉庫の中。
倉庫の外。
できる範囲で、崩さない。
必要以上に背負わない。
(……選べた)
それが、今日一番大きかった。
ルーシーは、そう思いながら目を閉じた。




