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探求者  作者: あきみらい
第五章 のぞむもの
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のぞむもの26


 私には、師匠と呼べる人が数人いる。


 普段から師匠と呼んでいたのは、養父である零の聖騎士リドルフィだけだ。

その背を追いかけ、ここまで来たと言っても過言ではない。それだけ神樹を切り倒しにいった時の養父や養母の横顔は鮮烈で、純粋に、憧れた。当時守られる側にしかなれなかった幼い私は、大人になるとはあんな風に誰かを守れる人になることだと刷り込まれた。

 翌年の春、六歳になり光の祝福を貰った私は、戦闘に必要な身体強化系の祝福を何一つ持っていないにも関わらず、自分は聖騎士になるのだと言い切った。途轍もなく険しい道だと何度も確認されたが、他の何かになる自分など、ほんの僅かも思い描けやしなかった。絶対なるんだと駄々をこね、養父のコネを最大限に利用し聖騎士になる道を歩み始めた。その時から、養父は単なる父ではなく師匠になった。戦い方の、考え方の導き星。聖騎士で在るにはどう在ればいいのか、師匠リドルフィはその生き様をもって教えてくれた。先頭に立つ者としてどう振る舞えばいいか、指揮のしかたも自分の見せ方も、すべて実際にそう振る舞って教えてくれた。


 しかし、私に戦い方や物の考え方を教えてくれた師は他にもいる。


 女性の体で戦う方法を教えてくれたのは、エルフの女剣士、イリアス。

どんなに鍛えても自己強化を行っても、身体強化系の祝福を持たない私では、男性に比べると攻撃は軽くなり、装備できる重量が少ない分、防御力も劣る。それをどうやって補い、その軽さすらも強みにするか。エルフという長寿種だからこそ昇華させることができた戦い方を惜しみなく教えてくれた。


 神聖魔法を使って自己強化を行う方法を教えてくれたのは、ジークハルト教官。神樹を倒す時、モーゲンを守りに来てくれた司祭の一人だ。司祭なのに前線を駆け、前衛として戦う変わり種だった彼から学べるよう取り計らってくれたのは、もちろん養父だ。

 ジークハルト教官は数多くある強化魔法の中からどの状況でどれを選べば良いのか、そしてどの魔法が一番効率よく運用でき、そしてどんなタイミングで時限性だったり耐久度があったりする魔法を更新しなければならないかを教えてくれた。


 弓師の視点を教えてくれたのはイーブン教官。聖騎士養成校の主任教官だった彼は、師匠リドルフィの戦場での補佐役だった。彼が教えてくれたのは、援護する時に何を見ているか、どう動いてくれると援護しやすいか、といった弓師の視点だった。罠や遠距離武器の扱い、それを扱う者の心理や、どう動けば狙撃手が狙いづらいかについても教えてくれた。それらは、私が最前線で戦っているだけでは得られない視点だった。


 他にも何人もの人たちが私に教えてくれた。

 剣術の基本の型を教えてくれた教官もいた。師匠リドルフィの剣術は彼自身の経験からかなり我流へとアレンジされていて、だからこそ、原形を知っていることは大事だった。型を体得している者との戦い方と、それ以外の者との戦い方の違いを教えてくれたのも彼だった。魔導師としての視点と、魔法理論を教えてくれた魔導師もいた。星芒の魔導師の称号を持つ彼は、魔導士たちがどんな風に魔法を使うのか、どんなことができるのかを教え、それに抗う方法を教えてくれた。暗殺術について教えてくれる者もいた。私自身が挑まれた時に対処できるようにと。毒やどう追い詰めていくかの知識を包み隠さずに。

 

 戦乱期を知る人たちやそれに近い世代の猛者たちが、私やセシルといった聖騎士候補生に、たくさんのことを教えてくれた。知識だけではなく、すべて実戦込みで叩きこまれた。自分たちが死に物狂いで体得したものを私たちの中に残していった。


 そして、私に神聖魔法での守り方を徹底的にたたき込んだのは、養母でもある聖女グレンダだった。

実は養母は師としては誰よりも容赦がなかった。

 神聖魔法の使い手は、後がない状態での最後の一手を打つ者。使う守護盾は確実に展開し狙った攻撃を弾かねばならない。失敗は守ろうとした者の死に繋がる。治癒魔法はただ祈ればいいだけではない。人体の何が損なわれていてどう治さねばならないのかをしっかり把握した上で的確に治さねば意味がない。魔素溜まりの浄化は自分の命を天秤にのせる行為。死に一番近いところへと潜り、必ず戻って来なければならない。戻らなければ自分以外の誰かの命も差し出させることになるのだから。……そういった覚悟ともいえるものを、言葉ではなくただひたすら繰り返させることで私に定着させた。養母ほどの魔力はもたぬ故に出来る範囲は限られているが、それでも精度は養母が合格だというところまで叩き上げられた。


 今の私を作ったのは、彼ら、だ。

王国最強クラスと、自惚れではなく自認できるだけのものを彼らがくれた。

聖騎士になると言った、まだ小さな女の子だった私に、寄ってたかって自分の生きた証を渡していった。

この歳になって、それが何とも大人げなく、それでいて優しく、祈るような行為だったかに気付いた。

彼らが残していってくれたから、私は、エレノアたちが用意したこの舞台に上がることができる。

必要なものは全て私の中にあった。


 ……憧れたあの大きな背中の後ろではなく、隣に並ぶ。

並んで、超えていく……。



 燃え盛る炎に照らされ、多くの敵意に曝されながら、悠然と笑みを浮かべる。

私は、ここで、この状況で、どう戦えばいいか、知っている。

それが誰かに仕組まれたものであっても。


 成って、やろうではないか。英雄に。

今、この時をもって。



このタイミングで入れていいか悩んだのですが、やっぱりいるかな、と。

前作の登場人物たちの名前を出せて、ちょっと嬉しかったです。

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