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エピローグ「閉会とそのあと」




ヨーダイ

「クソ審判!」


ヨーダイ

「俺がどうやって負けだって証拠だよ!?」



 ヨーダイは、審判にがなり立てた。



マゴコロ

「落ち着いて。王子」


マゴコロ

「言葉おかしくなってる」


ヨーダイ

「だってあいつが……!」


マゴコロ

「先生は、何もおかしなことは言ってない」


マゴコロ

「この試合は、私たちの負け」


ヨーダイ

「ナンデ!?」


マゴコロ

「勝負は、先に機体が全部、戦闘不能になった方が負け」


ヨーダイ

「だから……俺がリンレイを先に倒して……」


マゴコロ

「ピカードくん」


ヨーダイ

「え?」


マゴコロ

「ピカードくんの機体が、まだ無傷で残ってる」



 ヨーダイは、ギギギと首を回転させた。


 ヨーダイの顔が向いた先に、アナグラタイラントの姿が有った。


 ピカードの機体だ。


 矢を使い果たしただけで、無傷だ。


 憎らしいほどに、真っ金々だった。



ヨーダイ

「あ……」



 ヨーダイはようやく、致命的な過ちに気付いた。


 リンレイとの激闘によって、ひとしごと終えたような気分になっていた。


 まさにバカ王子だった。



ヨーダイ

「あああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」



 ヨーダイの悲鳴が、試合場に響き渡った。



リンレイ

「もう。にいさまうるさい」



 ヨーダイの腕の中で、リンレイが眉をひそめた。


 そして、微笑んだ。



リンレイ

「……けど、そっかそっか」


リンレイ

「私の勝ちなんだー?」


ヨーダイ

「ぐ……」


リンレイ

「これからもよろしくね。にいさま」




 ……。




 大会が終わった。


 戦力を失ったリンレイチームは、3回戦を棄権した。


 1年生は、テルヒチームの優勝で終わった。


 ヨーダイは、リンレイといっしょに帰宅した。


 そして、リビングで隣り合って座った。


 リンレイは、ヨーダイの腕に抱きついた。



リンレイ

「さぁて、にいさま」


リンレイ

「なんでも聞くって言ったわよね?」


ヨーダイ

「殺すなら早く殺せ」



 ヨーダイは、あさっての方向を見ながら、憮然とした顔で言った。



リンレイ

「殺さないわよ!? 私をなんだと思ってるの!?」


ヨーダイ

「キチ○イ?」


リンレイ

「本当に殺してやろうかしら?」


ヨーダイ

「ソーリー」


リンレイ

「……にいさまってば、先月から全然態度が変わっちゃったわよね」


ヨーダイ

「誓約が緩んだんだろうさ」


リンレイ

「誓約?」


ヨーダイ

「俺と国王代理の、魔導契約だ」


ヨーダイ

「俺は国王代理に、忠誠を誓う」


ヨーダイ

「そして、お前が女王になれるよう助ける」


ヨーダイ

「その代償として、国王代理は、俺たちの身の安全を保証する」


ヨーダイ

「その契約が、緩んだ」


リンレイ

「どうして?」


ヨーダイ

「1番の原因は、たぶん、俺のレベルが上がりすぎたことだろう」


ヨーダイ

「言動を強いるという、契約魔術の本質は、攻撃魔術に近い」


ヨーダイ

「攻撃魔術は、レベル差が有る相手には、効きにくくなる」


ヨーダイ

「だから、俺のレベルが上がったことで、契約魔術の効果が薄まったんだ」


リンレイ

「……そう」


リンレイ

「私が知らないところで、色々してたのね」


リンレイ

「決めたわ」


リンレイ

「にいさまとかあさまが、私に隠してたこと、全部話して」


リンレイ

「それを、今回の勝負の報酬にさせてもらうわ」


ヨーダイ

「……実質俺が勝ってたのに」


リンレイ

「ルールはルールよ」


ヨーダイ

「分かったよ」


ヨーダイ

「俺がお前の母親と、最初に出会ったのは……」



 ヨーダイは、昔話を始めた。




 ……。




 1時間もかからずに、昔話は終了した。



ヨーダイ

「こんなところか。俺が話せるのは」



 ヨーダイは、肩の力を抜き、ソファに体重を預けた。



リンレイ

「そう……」



 リンレイは、ヨーダイの腕を掴んだまま、彼にもたれかかった。



リンレイ

「かあさまが、にいさまを傷つけていたのね」


ヨーダイ

「疑わないのかよ?」



 リンカはリンレイには優しい。


 リンレイから見たリンカは、良い母親だっただろう。


 その母が、他人を平気で謀殺するような女だなどと……。


 そんな事実を、そう簡単に受け入れられるものなのか。


 ヨーダイは、不思議に思った。


 もしヨーキが悪女だと言われても、ヨーダイは、簡単には信じられないだろう。



リンレイ

「にいさま以外の人が言ったことなら、疑ったかもしれないわね」


リンレイ

「けど、にいさまが言うことだもの。信じるわ」


ヨーダイ

「そ」


ヨーダイ

「……契約の効果が薄まってることを、国王代理に話すか?」



 今の自分なら、リンカとも戦えるのかもしれない。


 彼女と決別する時が来たのだろうか。


 ヨーダイはそう考えた。



リンレイ

「話さないわ」


ヨーダイ

「どうして?」


リンレイ

「かあさまは、にいさまたちを虐める人だって、分かったもの」


ヨーダイ

「あいつのこと好きだろ。お前は」


リンレイ

「そうね。けど、それとこれとは別問題よ」


リンレイ

「たとえ大好きなかあさまでも、にいさまを虐めるのは許せないわ」


ヨーダイ

「そう言ってくれるのはありがたいがな……」


ヨーダイ

「俺はお前のことが、信用できない」


ヨーダイ

「秘密を漏らさないと、魔術契約で誓えるか?」


リンレイ

「妹を疑うの?」


ヨーダイ

「ッ……!」



 ヨーダイは、リンレイの腕を振り払った。


 そして、ソファから立ち上がり、彼女の肩を押さえつけた。



ヨーダイ

「俺をこんな風にしたのは、お前の母親だろうが……!」


ヨーダイ

「お茶会だって言って、母さんを呼び出しておいて……」


ヨーダイ

「あいつはいきなり……母さんを襲わせた……」



 ヨーダイは、泣きそうな顔でそう言った。



リンレイ

「つらかったのね。よしよし」



 リンレイは、ヨーダイを撫でた。



ヨーダイ

「うざい」


リンレイ

「あっ」



 リンレイの手が、振り払われた。



ヨーダイ

「…………」


リンレイ

「…………」


リンレイ

「契約、してあげても良いわよ」


ヨーダイ

「良いのか?」


リンレイ

「ええ」


リンレイ

「たまにはにいさまのワガママを聞くのも、妹の務めというものよね」


ヨーダイ

「……………………」




 ……。




 翌日。


 ヨーダイたちは学校へ向かった。



リンレイ

「マゴコロ=アオプラネット」


マゴコロ

「……なに?」



 早朝の教室で、リンレイはマゴコロに話しかけた。



リンレイ

「あなたをにいさまのお友だちだと、認めてあげないこともなくもないわ」


マゴコロ

「うん?」


リンレイ

「ただし!」


リンレイ

「その前に、あなたがにいさまにふさわしい人かどうか、チェックしてあげる」


マゴコロ

「うん」


リンレイ

「まずあなたは、にいさまのことをどう思っているのかしら?」


マゴコロ

「いいひと」


リンレイ

「それだけかしら?」


マゴコロ

「強いし、綺麗だと思う」


リンレイ

「失格!」


マゴコロ

「えっ?」


リンレイ

「婚約者の居るにいさまを、綺麗だなんて」


リンレイ

「あわよくば側室の座をなんて、思っているに違いないわ」


マゴコロ

「それは無い」


マゴコロ

「私には好きな人が居るから、王子に恋愛感情は無い」


リンレイ

「本当?」


マゴコロ

「本当」


リンレイ

「なんだ。あなた、いい子なのね」


ヨーダイ

(どういう基準だよ)


リンレイ

「そうと分かれば、あなたを私のお友だちにしてあげるわ!」


ヨーダイ

(えらっそうに……)


ヨーダイ

「やめとけやめとけ。コイツはロクなもんじゃないぞ」


マゴコロ

「王子」



 マゴコロは、叱るような目で、ヨーダイを見た。



マゴコロ

「自分の家族を、そんな風に言っちゃダメ」


ヨーダイ

「アッハイ」


マゴコロ

「王女。お友だち」


リンレイ

「ええ。お友だちよ」


リンレイ

「よろしくね。マゴコロ」



 リンレイは、マゴコロに手を差し出した。



マゴコロ

「よろしく」



 マゴコロは、握手を返した。



リンレイ

「ええ。マブダチ」


マゴコロ

「マブダチ」


ヨーダイ

(そのマブダチは、お前をクラスメイトにリンチさせた女なんだが?)


「王子」



 男の声が聞こえた。



ヨーダイ

(今度は何だよ……?)



 ヨーダイは、声の方へ振り向いた。



テルヒ

「お願いが有るのですが」



 声の主は、テルヒ=ヴァイスシバフだった。



ヨーダイ

(珍しいな。こいつが俺に声をかけてくるなんて)



 テルヒはヨーダイに対し、礼儀正しい。


 きちんと一国の王子として扱ってくれる。


 だが、友人というわけでもない。


 ただのクラスメイトという、よくある間柄だった。



ヨーダイ

「いったい何事だ?」


テルヒ

「是非、手合わせをお願いします」


ヨーダイ

「……はぁ?」



 唐突な申し出に、ヨーダイは呆れ顔を見せた。



ヨーダイ

「いきなりどうした?」


テルヒ

「先日の武術会、王子の腕前には、感服させられました」


テルヒ

「どうか、1手ご指南を」


ヨーダイ

(嫌なんだが?)


ヨーダイ

(意地にまかせて悪目立ちしちまったが、もう力を見せるわけにはいかねーんだよ)


ヨーダイ

(俺は無能王子で、妹の噛ませ犬なんだからな)


ヨーダイ

「あれはマグレだったんだ」


ヨーダイ

「たまたま上手くいった試合で、買いかぶってくれるなよ」


テルヒ

「あれはマグレで出せる動きなどではありませんでした」


ヨーダイ

「それが有るんだよ」


ヨーダイ

「1億分の1くらいの確率で、ザコがたまたまクリティカルを出す日が有るんだよ」


ヨーダイ

「俺にとって、あれがその日だったんだ」


ヨーダイ

「納得してくれたか?」


テルヒ

「はい」


テルヒ

「1度手合わせをしていただければ、納得出来ます」


ヨーダイ

「はいじゃねえよ納得してねえじゃねえかクソが」


テルヒ

「……王子?」


ヨーダイ

(手ぇ抜いて、ボロッボロに負けるってのもアリだが……)


ヨーダイ

(なんか見抜いてきそうなんだよな。コイツ……)


ヨーダイ

「なあ、テルヒよ」


テルヒ

「なんでしょうか?」


ヨーダイ

「窓の外をよぉく見てみろ」



 そう言ってヨーダイは、窓を指差した。



テルヒ

「はい……」



 テルヒは素直に窓を見た。



ヨーダイ

「ダッシュ」


テルヒ

「えっ?」



 ヨーダイは走った。


 教室の外へ、一気に駆け出した。


 テルヒも教室外までは、ヨーダイを追った。


 だが、廊下に見えるヨーダイの姿は、みるみる小さくなっていった。



テルヒ

「王子! ホームルームが始まりますよ!?」


ヨーダイ

「サボリが怖くてバカ王子が出来るか!」


テルヒ

「どういう理屈ですか!?」


ヨーダイ

「サラダバー!」



 テルヒの視界から、ヨーダイの姿が消えた。



ヨーダイ

(あんな主人公みたいな奴に、構ってられるかよ!)


ヨーダイ

(俺は平和な学校生活を送って、目立たずに卒業するんだ!)


ヨーダイ

(ちょっと1回だけ目立っちまったが、余裕で挽回は可能だ!)


ヨーダイ

(妹に王位を譲って、王族の地位も捨てて、どこにでも居る普通の平民になる!)


ヨーダイ

(それで、母上と平和な土地に行って、のんびりと暮らす!)


ヨーダイ

(待ってろスローライフ!)



 ヨーダイ=ビストスズという男に、平穏な日常など許されているわけも無い。


 戦乱の種は既に蒔かれており、ヨーダイは、英雄の器を持っている。


 そんな簡単な事実にすら気付かないまま、少年は走り続けた。


 ……翌日。


 ヨーダイは、先生に叱られた。




ここまでとします。

お読みくださりありがとうございました。

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