勇者コジローとの遭遇
本日6000字です。
後半ちょっとふざけすぎたので削除するかもです。
~エリオット教授~
「ふむ。こう来たか。」
今日届いた新聞の内容は下記のとおりである。
①ダンジョンからモンスターが消えた。
②当然、ドロップ等も全て無くなった。
③しばらくダンジョンは封鎖とする。違反者は賞金首とする。
どうやら、これ以上大都市のダンジョンコアを破壊されない為に強硬手段に出たらしい。
そして私の元には1通の手紙が来ている。
~アレンピックS級招待状~
①今年も3名1組で参加可能なアーレの街でアレンピックを開きます。
②エリオット教授と弟子のマコトさんは必須で参加をお願い致します。
③MVPを取った人は秘密の魔法をプレゼント致します。
――秘密の魔法か。おそらく、アーレの街ダンジョンコアを破壊させてくれるのだろう。ダンジョンコアのチームが優勝すれば問題ないという考えだろうが。目を付けられたか。
逆転の発想だな。ダンジョンコアを1つに絞らせたあげくに囮に使ってくるとは。
だがまあいい。その罠に乗ってやろうじゃないか。
私の研究室に新聞を持ったマコトが入って来た。
「大変ですよ教授!! 新聞見ましたか?」
「嗚呼。ダンジョンコアも必死だな。私の手元にアレンピックS級の招待状が来てしまった。今日の夕方に運営から迎えが来る。学校の前に集合だ。次はアーレの街だな。」
「招待状? アレンピックって何ですか?」
「君の世界で言う〇リンピックみたいなものだ。残念ながらアレンピックは魔法あり、妨害ありという最悪の大会だな。ここに運営からの招待状が来ている。私とお前は強制参加のようだな。」
「最悪大会なんですか?」
「基本的にはショーみたいなものだか、私は嫌いだね。アレンピックは3人1組で全8種類の競技を行うだけなんだが。C級<B級<A級<S級の4グループに分かれており、出場チームは各4チームだ。|私の知人は誰も出たがらない《・・・・・・・・・・・・・》だろうし、残り1人はどうするか……」
「じゃあハワードでいいんじゃないですか?」
「ふむ。不参加の場合は罰則がある強制参加の大会だからな。勝手に名前を書いて提出してあげようじゃないか。一般的には出場する事は名誉だと思われているから問題なかろう。」
「じゃあ誘ってきますね」
「そうしてくれたまえ。」
~マコト~
教授の部屋からでるとロン毛のおっさんがいた。
「話は聞かせて貰った! 元カンチョー隊1番隊隊長であるこの私が最後の1人としてエントリーしようじゃないか!!」
「あ、すみません。人違いです。」
学校の教室に行くと、ハワードとその恋人であるグリコ(♂)さんがいた。
「なあグリコ、俺は聖女様から『危険察知』っていうスキルを貰ったんだが、なぜか先程から危険な予感がするんだ。今日は早退しないか?」
「あらそう。ハワードきゅんが言うならきっとそうなのね。今日は帰りましょうか」
「2人ともおはよう。そしておめでとうハワード。エリオット教授からアレンピックS級出場の権利をプレゼントだよ。」
「本当か!! なぜか『危険察知』スキルが最大限で警報を鳴らしているが、アレンピックのS級?! これで俺も全国区の有名人の仲間入りだぜ。」
「私も恋人として鼻が高いわ~。」
「ホントだよ。もう参加用紙にハワードの名前書いてあるってよ。アレンピックってどんな大会なの?」
「魔法を極めたものしか出場できない非常に名誉ある大会だからな。内容はちょっと過激だけど、まさか俺が出られる日が来るとは……グリコ。アレンピックで優勝したら結婚しよう。」
「ハワード……有難う。頑張って優勝してね!!」
――なぜかハワードが死んでしまう気がする。きっと気のせいだろう。
「とりあえず、今日の夕方に学校の前に集合だから宜しく。」
「わかったぜ」
その日の夕方、学校の前に集合した僕らの目の前には、飛行船が止めてあった。
(この世界……飛行船なんてあるのか)
(当たり前だろう。魔法があると機械がないとでも思ったのか? 逆だ。燃料が必要のない分、お前の世界より一部分は進んでいるぞ。世界の異変前は誰でも魔法を使えるわけじゃなかったしな。携帯電話もあるぞ。)
(教授。勝手に人の心を読み取る魔法を使わないでください。)
(ハッハッハッ。すまんすまん。)
飛行船に乗った僕らはそれぞれ個室を与えられた。それにしても、太陽があるってことは、やっぱり宇宙もあるのだろうか。今は関係ないからその内考えるか。その前に教授に他の選手の情報が入ってるか確認しに行こう。
「教授。入りますよ。」
「出場者についてだな。私もお前に聞きたいと思っていた所だ。事前に発表されるから遅かれ早かれわかる。だがおそらくダンジョンコアチーム内には元勇者ハジメがいるだろう。そいつの情報を提供したまえ。」
――以前新聞で元勇者ソウゴの捜索隊チームに元勇者ハジメが入っているという情報を見たが……
「それが……前の世界でハジメという人はいなんですよ。」
「なんだと……おい! 本当にいないのか! 元勇者ハジメはチビでデブでハゲで体臭がキツイおっさんらしいぞ。本当に知らんのか?!」
「いえ……確かにハジメという名の勇者は……(いや、待てよ。チビでデブでハゲで体臭がキツイおっさん? まさかあいつか)。 他にその人の特徴とかわかりませんか? 女性が接待してくれてる店によく行くとか?」
「なんだ。やはり知っているじゃないか。そうだ。この世界ではキャバレットというお金を出して女性と飲むシステムがある。やつは良くそこに出入りしているらしいぞ。」
「そいつは……十中八九元勇者のコジローです。おそらくダンジョンに潜ってないので偽名が通じてるのだと思います。やつは前の世界で有名人でしたからね。」
「ほう? どんなチートを持っているんだね?」
「教授は勇者がなぜ皆若いかご存知ですか?」
「魔王との戦いは長期戦になるからだろう。」
「それもありますが、僕が前にいた世界では、|その原因はコジローにある《・・・・・・・・・・・》と言われていました。基本、神様から貰うチートスキルは3つの選択肢があるらしいんです。
1つ目は『神様が選んだスキル』が貰えます。2つ目は『複数の中から選択できる』です。そして最後は『望んだスキル』が貰える。コジローの場合は最後の『望んだスキルが貰える』というものだったそうです。」
「で、何のスキルを望んだのだね?」
「僕の世界では、一部の大人は魔法やスキルの知識がない人がいるんです。コジローもそんな知識はなかったそうです。奴のスキルは3つ。直接見た方が良いでしょう。どうせあいつは次の街の一番料金が高いキャバレットにいます。すぐに行きましょう。教授のお金で。」
「勿体ぶるじゃないか。アーレに着くのは時差の関係で夜になるだろう。到着次第1番高いキャバレットに行こうじゃないか。」
※用語解説 キャバレット お金を出して女の子とお酒を飲む事ができる。時間制である。
無事にアーレの街に着いた僕らは案内された宿でハワードとグリコと別れ、街で一番高いキャバレットに向かった。何? 18禁じゃないかって? 問題ない。少年〇ャンプでもキャ〇クラは出てくる。どうやらまだ元勇者コジローは来ていないようだ。
「いらっしゃーい。私ピカルっていいまーす。宜しくねー」
僕の隣には可愛らしい女の子がついた。150cmくらいのボンキュボンの女性だ。
「指名で。」
すかさず僕は指名を入れた。なぜだかわからないが、この子がベストだと思われた。そしてどうせ支払いはエリオット教授だ。
※用語解説 指名 一定のお金を払うとその人が隣にいる時間が多くなります。
「おい、マコト。コジローはいないじゃないか。どうなってるんだ。」
「落ち着いてください教授。来ましたよ。やつが……」
入口の方から『チビでデブでハゲ』の男が入ってくる。間違いない。あいつは元勇者のコジローだ。
予め『そういった風貌』の男性が入ってきたら指定の場所へ案内する様に店長へ裏金を渡しておいた。何も知らずコジローは席に着く。そして……
「おい。あいつだ。あいつを指名だ。」
僕の隣にいたピカルちゃんを指名してきやがった。
「呼ばれちゃったわ。ちょっと行ってくるね。」
ピカルちゃんが元勇者コジローの元へ。
まさかあいつ……
「「乾杯~」」
コジローとピカルちゃんがエールで乾杯する。
「まずいです教授!! 奴のスキルがピカルちゃんに発動してしまう。ダメだ……間に合わない!!」
「なんだと!! 奴のスキルは何なんだ!?」
――――くっそぉぉおおおお!! まさかいきなりチートスキルを発動してくるとは!! あの野郎ぉぉおおおお!!!!
元勇者コジローはソファーの上でM字開脚になり、したり顔でこう言った。
「おおっとぉ~。これは一体どうした事だ~。いけないいけない。ダメだよ君~。
股間にエールが零れてしまったではないか~。拭いておくれ。」
――――ダメだ。間に合わなかった。僕は何もできなかった。M開脚をしながら自らの股間に酒を零す姿はもうコジロー・オブ・ジョイトイだ。
既にピカルちゃんは奴の持つ恐ろしい3つのスキルの内、2つの餌食になってしまった。
『ラッキースケベ(大人Ver)』と『セクハラ無双』の2つのスキルに……。
「おい。なんだ? 特に何も起こっていないぞ。見苦しい状況が見受けられるくらいだ。」
「あれが奴3つのスキルの内2つです。その名も『ラッキースケベ(大人Ver)』と『セクハラ無双』です。」
「お前ふざけているのか?」
「大真面目ですよ!! チートスキルの概念がないあいつは現実的なチートスキルを望んだんです。汚い……大人の心は汚れてますよ!!」
「なんか、非常に残念なやつだな。だが彼女は魅了魔法を使うぞ。さっきお前にも使ってたしな。」
「そんな……それを早く言ってくださいよ教授。とりあえず魅了魔法解いてください。」
「ほれ。」
先程まであんなに可愛らしく思えたピカルが普通に見えた。お酒の酔いから醒めた気分だ。もう別の子とお酒飲んで楽しもう……。
「で、残りの1つのスキルは何なのだね?」
「ああ。見てればわかりますよ。」
ピカルちゃんの方を見ると、既にチャームを使っているようだ。
「おじ様ごめんなさいね~。でもウチはそういったハードなサービスはしてないの~。」
外から見てるとよくわかる。彼女の瞳がピンク色になり、モロに魅了魔法を使用している。だけどあいつには魔法効かないんだよね。
「困るよ君!! この着物は金貨300枚相当する高級品なんだよ。ごめんなさいじゃすまないんだよ!! それとも何かね。クリーニング代でも出してくれるのかね!!」
――あいつ『パワハラ』のスキルも持ってるんじゃないのか? 相変わらずヤバい奴だな。前の世界でかなりの数の店を『出禁』になったらしいからな。
※ 用語解説 出禁 出いり禁止になる。
「そ、そんなお願い。許して~。」
ピカルがさらに魅了魔法を強化する。
「そうだな~。今晩付き合ってくれたらチャラにしてあげるよ~。いいよね。ピカルちゃん。」
「うるっせぇな!! 嫌だつってんだろ。キモイんだよクソオヤジが!!」
豹変するピカルちゃん。女子って怖い。魅了魔法も諦めたようだ。
「そ、それはそれで興奮するぅぅ。ふぅ。。。。
君さ、さっきから変な魔法かけてきてるよね。お返しするよ。『賢者タイム』」
「見ましたか教授!! あれが奴の3つ目のスキル。『賢者タイム』です。」
「どうせふざけたスキルなんだろ。帰るぞ。会計してくれたまえ。」
教授は何もわかってないな。コジローのスキルの恐ろしさを。
ピカルちゃんの目がトロンとしている。どうやら3つ目のスキルを喰らってしまったらしい。
「やだ……おじ様ったら素敵。こんなにドキドキするの初めて。店長、私今日はもう帰ります。この人と……」
「やれやれ。しょうがない子だ。いいだろう。今日は一晩中付き合ってあげよう。」
「何が起きた。説明したまえマコト君。」
「コジローの3つ目のスキル『賢者タイム』はある条件をクリアする事で、受けた攻撃や魔法を3倍返しできるスキルなんです。」
「その前に魅了魔法にかかっていなかったようだが?」
「そうですね。あいつの『セクハラ無双』は『ある一定の法則で攻撃』しないと攻撃も魔法も効かないんです。その代わり、あいつはレベル上限が10までという制約があるらしいのですが。」
「一定の法則とは?」
「噂では女の子からのダメージ判定10以下の攻撃のみ有効らしいです。他の攻撃は一切通用しないそうですよ。」
「ふむ。興味深いスキルだな。解剖……」
「ダメなんです教授。前の世界にも『スキル奪取』を使う大盗賊がいたのですが、奴のスキルを奪取したその大盗賊は…………死にました。」
そう。奴のチートスキルが恐ろしいのはその特性である。前の世界でスキルを奪える大盗賊、通称『1000のスキルを持つ男』がいた。その大盗賊はコジローのスキルに目を付けた。
だがコジローのチートスキルは3種類しか持てない特別なチートスキルだった。
コジローのスキルを奪った大盗賊は、|持っていた全てのスキル《・・・・・・・・・・・》を『ラッキースケベ(大人Ver)』、『セクハラ無双』、『賢者タイム』のどれかに|強制的に上書きされてしまった《・・・・・・・・・・・・・・》。
それまで好き勝手悪さをしていた盗賊は『ラッキースケベ(大人Ver)』、『セクハラ無双』、『賢者タイム』のスキルを1000個持つだけの変態になってしまった。そう、人として死んでしまったのだ。
「恐ろしいな。働かない。人に迷惑はかける。でも自分は安全。人間のクズじゃないか。」
「大人ってずるいですよね。」
そのままキャバレットを後にしたマコト達。
だがマコトは重要な事に気が付いていなかった。
アレンピックは3人×4チームで争われる。
1組目は教授とマコトとハワード。
2組目は裏ボスと名高いダンジョンコアグループ
3組目は勇者ハジメグループ
そう。どう考えても1チーム分キャラが足りないという事実に。




