女神の試練 第1試練
◇1週間後◇
聖女の試練を受けるために、都市ワズールの大きな建物の前にマコト、ハワード、クレアを含めて300名ほどの人が集まっている。
「お静かに! それではこれより聖女の試練を始めたいと思います。」
前の方に試験管っぽい人がいる。
「ふっーー、ふっーーー!! ちょっと待って欲しいんだな。試練をクリアした4人にEXスキルが貰えるってのは間違ってないんだな?」
太った男が異議を申し立てる。――どこかでみたような……あれ? あいつ前の世界にいた勇者トシロウじゃね?
「勿論ですよ。頑張ってくださいね。」
ニヤニヤとした表情で引っ込むトシロウ。――確かあいつはどこかの国の姫様と結婚して贅沢三昧の生活してたんだっけ。チートスキルは『血の結合者』だ。相手の血液を摂取する事で、相手と全く同じ魔法・スキルが使えるようになる。ストックは5つまでの神から与えられたチートスキルだ。
一緒にいるやつは……あいつも元勇者のユウゴっぽいな。あいつのチートは『魔力操作』とかいうやつだった気がするけど‥‥…詳しい事は思い出せないや。
「では、最初の試練の内容を伝えます。最初の試練は…………あみだくじです。」
なんだよそれ。運任せじゃん。
「では皆さん、ここにクジがありますので、それぞれ1枚ずつ持っていってください。9か所の内、どれか1箇所を選んで印をつけて下さいね。下にある〇に当たった人が次の試練へと進めます。当たった人は持ってきてくださいね。」
順番に並んで紙を受け取る。ここで早くも必勝法を見つけてしまった。
先に紙を貰うから、〇がある所から逆算して1箇所を選べばクリアできると。
ハワードとクレアにも耳打ちして、僕はさっさと折りたたんである紙を開いて丸印を探した。
ない。〇がない。僕の紙には〇がない。1個もない。
ハワードとクレアは2箇所〇があるのに。近くにいた知らない男性も先に紙を開き〇を狙って1箇所を選んでいた。すると男性の表情が喜びの表情から絶望した表情になる。
気になるな。話しかけてみるか……。
「どうかしたんですか?」
「線が増えて……〇に辿りつけなくなった……。」
なんだと? どういう事だ。――ハワードとクレアに確認する。
「は? 線なんて増えなかったぜ。ほら、普通に当たりだ」
「当たり……試練突破…………」
当たった2人は合格者の列に並び始める。周囲が騒がしい。列に並べていない150人程が悔しそうだったり悲鳴をあげていたりする。
その中の1人、筋肉隆々の男が試験管に文句をつけている。
「おい! こちとら1年も待って再挑戦に来たんだ! 去年のジャンケンといい、まともな選考方法で選んで欲しい! やり直しを要求する。」
『そうだそうだ!』
『俺なんて今年で8年連続予選落ちだぞ!!』
『ふざけるな! やりなおしだ!!』
筋肉男の紙を見ると、なんと〇が3つもある。僕なんて0だよ。ただの外れクジだよ。
「聖女への信仰が足りないんじゃないですか? それでも納得できないなら、私に1撃当てれば合格に変更して差し上げますよ。但し、10発に1回。私も反撃させて頂きますので悪しからず。」
「なんだ、話が分かるじゃないか。やってやるぜ。泣かない程度に可愛がってやるよ。」
男の体から透明なオーラが出る。おそらく身体強化だろう。男は中々の速さで攻撃を繰り出すがあっさりと躱される。
同時に8人程、外れを引いたであろう連中が試験管に襲い掛かる。9人に攻撃されているにも関わらず全てを躱す試験管。5秒もかからず9人全員が1撃でノックダウンされた。何だ? 当然筋肉男もレベル100のはずだ。なんでこんなに差が出るんだ?
(さて、何人かはあみだくじ試験のカラクリに気がついているようですが)
試験官は息も乱れずに涼しい顔をしている。正直、僕なら一撃当てる事はできそうだが、今はあまり目立ちたくない。今の攻防を見て、クジが外れた人はほぼ全員が意気消沈している。僕ともう1人を除いてだが。
「挑戦させてもらうよ。9つの内8つも当たりがあるのに外れちゃったんでね。手加減は必要かい?」
もう1人の男が高らかに宣言する。元勇者のユウゴである。あいつも外れたのか。
同じ元勇者のトシロウは当たりを引いているようで列に並んでいる。試験会が不思議そうな顔をしてユウジに問いかける。
「8つ当たりなのにハズレですか? ちょっと見せて下さい。うん。いいですよ。貴方は特別に合格とします。」
なんだそれは。酷い試験管だな。さっきの人たちが可哀想すぎるだろ。待てよ? 全9箇所? もしかしてこのあみだくじの原理は…………もし予想が当たっているとしたら、僕にとっては絶望的だ。
念の為、ハワードで確認してみるか。
「ハワード、ちょっと僕のあみだくじ持ってみて。」
「なんだ? 構わないけど、どうかしたのか?」
あみだくじの紙をハワードに渡すと〇が2箇所浮かび上がる。そしてハワードが紙から手を離すとまた〇が無くなる。やっぱりか。
どうしても挑戦しないと通過できないらしい。ここは1つ、穏便に通過させてもらおう。ハワードに紙を渡したまま試験管の元へ。
「零式」
素早く気配を消すと試験管の後に回り肩を叩く。
「はい、これで一撃ですね。じゃあ僕は通過という事でお願いします。」
試験官が驚いた表情で僕の方を見る。次にお前は『いつの間に……あみだくじを見せて貰っても?』と言うだろう。
「いつの間に……あみだくじを見せて貰っても?」
「勿論ですよ。あ、いっけね。人に預けたままでした。ハワード、見せてやってくれない?」
ハワードが自分の分と僕の分を試験管に見せる。
「そういう事ではないのですが、まあ私が言い出した事なのでいいでしょう。では、あみだくじを回収します。…………今回の1次試練の突破人数は152名です」
(私の肩を叩いた男性も9番でしょうね。今年は9番が3人か。豊作ですね。最後まで残ると良いのですが。)
零式が便利でよかった。試験官は一切のクレームは受け付けないと宣言すると、2次試験の為移動する事になった。
おそらくだが、今のあみだくじは〇が9箇所。ハワードとクレアが2箇所〇だったことから〇の数は『属性の数』であると考えて間違いない。属性は全部で8種類、だけど実際には時空魔法や次元魔法が存在している。
ユウゴもチート能力があるから例外の能力は9番目に〇が出るようになっているのだと思う。
そして線が増える現象、これは単純に強さを図っているのか、それとも保持する魔力の総量に反応しているのかもしれない。ハワードの代名詞『ドラゴニックトルネード』は、風属性でも同じ魔法を使える人があまりいないらしい。
レベルは100まででも、魔力に個人差があるという事だと思う。
「それでは2次試練の内容ですが、それぞれの組へ分かれて頂き、試験官の元で試験を受けて下さい。ではクジをどうぞ」
『1』と書かれたクジを引いたので『1番』と書かれた部屋へ入る。僕を合わせて16名が1番みたいだ。なぜか全員男性である。ハワードもクレアさんも別の番号引いたようだ。
部屋には白い胴着を着たロン毛のおっさんが立っている。ロン毛のおっさんを見た周囲の人達がざわざわし始めた。
『お、おい。まさか。あの人が試験管なのか』
『あれは……伝説の一族の生き残り。『元1番隊隊長』だ。間違いねぇよ。』
『謎の忍者に壊滅されたあの一族か?! 無理だ。悔しいけど俺は辞退するわ。』
『元1番隊隊長ってあの隊かよ。っていう事はまさか試験内容は……。』
『もしもその試験なら俺も辞退する。まだ余生を楽しみたいからな。』
『やる……。俺はやってやるぜ!!』
殆どの人が何かに怯えている状態だ。どうやら有名人らしい。何の一族で、1番隊隊長とはどういう意味なのだろう。
「静粛に!!」
白い胴着を着たロン毛のおっさんの声で一同が黙る。そして驚くべき試練内容が発表されるのだった。




