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82. 琢郎奮闘・後編

<嵐風障>(アイ・ウォール)!」


 飛び道具を防ぐための魔法だが、蜂のように空を飛ぶ敵を近づけないようにすることもできる――はず。

 竜巻状の風の壁によって、琢郎は蜂の群れによる一斉攻撃から一時の猶予を得た。


「……ちッ」


 ついでに何匹か竜巻に巻き込まれてくれていればよかったのだが、そううまくはいかなかった。

 竜巻越しの微かな影と羽音からすると、無謀に突っ込んで来ることはなく、かといってあきらめて飛び去るでなし。竜巻の周囲でこちらの様子を窺っているようだ。


「ここからどうする……?」


 竜巻を維持するだけならいくらでも可能だが、こちらからの攻撃方法を自問する。


 同じ風属性の<風刃>(ウィンド・カッター)は竜巻と打ち消しあってしまって使えない。

 一瞬竜巻を消して切り替えることは可能だが、あの蜂の数と速さではその切り替えの隙に(ふところ)に飛び込まれる危険が大きい。


 <火炎球>(ファイアー・ボール)では竜巻の向こうまで飛ばすことはできずに巻き込まれる。

 巻き込んだものを燃やすことで竜巻の殺傷力は一時的に上がるが、そもそも竜巻に近づいて来ないのでは意味がない。


 <地槍>(アース・ステーク)なら、竜巻の外の座標から杭を生やすことはできる。

 だが、宙を飛ぶ相手を地面から串刺しにしようとしてもうまくはいかないだろう。


「となると、残るは<水流射>(ウォーター・ショット)……!」


 傍に水がないため速射は無理だが、高圧水流を撃ち出す水の攻撃魔法なら竜巻を撃ち抜いての攻撃も可能だ。干渉し合って、攻防共に威力が減じることは否めないだろうが。


ブブブ……


 まずは元素操作で水を生み出し、竜巻越しに見える影の1つに狙いを定めたところで、不意に聞こえる羽音が大きくなる。

 はっとした琢郎が顔を上に向けると、2匹の蜂が竜巻の上を抜けて内側に飛び込んできていた。


「ウォ、<水流射>(ウォーター・ショット)!」


 鋭い針を突き出して降下してくる蜂に、慌てて狙いを変えて魔法を放つ。


 1匹を撃墜。

 もう1匹は反射的に避けようとして、内側から今度こそ竜巻に巻き込まれた。


<火炎球>(ファイアー・ボール)!」


 竜巻に炎を混ぜ、巻き込まれた方も確実に仕留める。ついでに、2匹に続いて上から襲って来ようとした他の蜂も、それが牽制になって降下を中止した。


<水流射>(ウォーター・ショット)!」


 あらためて、再度充填した水を竜巻越しで撃ち出す。


「……! これもダメか」


 命中はしたが、やはり竜巻で威力が減じている。蜂の影はふらつきはしたものの、直撃とは違い一撃で撃墜とはいかなかった。


 いっそ、危険(リスク)覚悟で竜巻から切り替えて直接攻撃するべきか。

 そう考えかけたその時、琢郎はいまだ使ったことのなかった魔法を思い出す。


<魔力光線>(マジック・レーザー)!」


 蜂を指す琢郎の指先から、1条の光が射出される。

 水流とは違い、竜巻と互いに一切影響することなく届き、光に貫かれた蜂は今度こそ地に墜落した。


「よし。これなら!」


 その成果を確かめた琢郎は、竜巻による防御は維持したまま<魔力光線>(マジック・レーザー)を連射。次々に蜂を()としていく。


 無属性の攻撃魔法、<魔力光線>(マジック・レーザー)

 各元素に働きかけない純粋な魔力攻撃。物理干渉力が0なことと魔力を凝縮して放つため燃費が極めて悪いことで、これまで試す機会もなかった。


 だが、元素に干渉しないため他の元素魔法の影響を受けず、物理干渉もないため障害物も透過して生命(魂?)に直接ダメージを与える。

 使いようによってはかなり強力な魔法なんじゃないかと、琢郎は思い直した。


「ラスト! <魔力光線>(マジック・レーザー)!」


 竜巻越しに宙に浮いて見える全ての影を撃ち落とし、もう他の影もないか念のため確認してからようやく、琢郎は<嵐風障>(アイ・ウォール)を解除する。


 視界が広がると、周囲の地面に20近い蜂の死骸が転がっていた。

 成果も大きかったが、『特殊表示(ステータス)』を見ると琢郎のMPは、残り約3分の1にまで減っている。やはり相当に燃費が悪い。


「まあでも、死骸に傷が付かないのは換金のこと考えると、利点ではあるのか」


 倒した蜂のうち、竜巻に巻き込まれたのに火球を加えた分だけは燃えてしまって、換金部位の針を回収できなかった。

 だがそれ以外は傷1つなく、数もかなりになった。後でリリィを通して換金してもらえば、結構な収入になるはずだ。


「これなら、今日の狩りの成果は十分……って、あぁ!?」


 あとは、蜂に出くわす前に見つけた木の実の残りを採ろうとしたが、木の実が生っていた木も<嵐風障>(アイ・ウォール)の竜巻の影響を受けてしまっていた。

 風で地面に落ちてしまったり、枝ごと折れてしまったりしていてもう木の実は1つも残っていなかった。


「やっちまったぁ……」


 最後にミスが発覚したが、今のMPで再びデモン・ビーの群れに遭遇するのは厳しい。

 仕方なく琢郎はこの場所での食材集めを切り上げ、街の方へと引き返していった。

設定だけはずっと前から考えてはいた新魔法がお披露目。

ただ、燃費悪い魔法を急遽使わせたことで、当初は蜂の巣まで蜂蜜探しに行く予定だったのが、なしになってしまいました。


あと、確認したら微妙に矛盾して見えたので、風防御魔法を前回使用の31話を微修正してます。

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