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78. 続・リリィVS角兎 ~LVアップ~

「足の怪我もあるし、少なくとも今日のところはもう終わりにしよう」


 もう一度角兎を狩りに行く必要はあるが、無理に急ぐ必要はない。課題にも特に期限は示されていなかった。

 今日はもうすでに2つの課題をこなして日も傾きかけているし、もう休んで体調を万全にしてからにすればいい。


「じゃ、俺は夕食の材料採ってくるから。リリィはそこで休んでてくれ」


 宿の部屋までリリィを連れ帰ると、彼女を置いて琢郎は再び外に出る。

 向かう先は、最初の課題の場所でもあった池の(ほとり)だ。何度か通る内に気づいたのだが、辺りには薬草以外にも食べられる草や木の実がいくつもあった。


そこでいくつか採取したところで、その奥にある雑木林も視界に入ってくる。


「……ついでだ。あっちも木の実がいくつかあったし」


 誰に言うでなしに呟くと、琢郎は林の方へと足を向けた。



「これが夕食用に採ってきた野草と木の実。あとは……」


 日が西に沈みかけた頃に宿へ帰ってきた琢郎は、その成果をリリィの前に並べていく。翌日の朝食の分まで十分な量の野草と木の実に次いで、琢郎が取り出したのは、魔法で倒した3匹の角兎。


「いい加減、肉も獲って帰らないと干し肉がどんどん減っていくからな」


 そう理由付けしたが、場合によってはこれで必要な数の角が揃って次の課題を達成できる、という目論みももちろんあった。


「角兎がどんな攻撃してくるか、今日でだいたいわかったので大丈夫です。次はもっとうまくできますよ」


 リリィにもそれは伝わったようだが、まだ自分で頑張るつもりらしくその角を課題に用いることは断られた。



「やぁッ!」


 翌日、同じ雑木林で昨日と同じように槍を振るうリリィの姿があった。


 いや。昨日と同じではない。

 新たに脛当てを装備しているが、もちろんただそれだけではない。その新装備が足元への攻撃を防いでいるというのもあるのだろうが、自身の言葉通りに明らかに昨日よりスムーズに角兎を倒している。


「えぇいッ!」


 今日1匹目を倒し、2匹目以降に移ってからは尚更で、槍を突く動きもどことなく鋭くなったように思える。

 当初脛当てを買わなかったのは脛当て(それ)まで着けると、重さやら何やらで動きが鈍くなるのが理由だったはずだが、それも感じられない。


「……え。なんか、1日で強くなってないか……?」


 信じられない思いで、琢郎は3匹目も槍で貫いたリリィを意識して見つめる。『特殊表示(ステータス)』が発動して、リリィの能力値が視界に表示された。



『個体名:リリィ=カーソン   種族:人間

 LV:     5

 HP:    23/  25

 MP:     7/   7

 筋力:    14

 頑丈:    11

 敏捷:    15

 知力:    16       』



「……ホントに強くなってる」


 まだ棲家にいた頃にもリリィのステータスを見たことはあったが、たしかその時は具体的な数字までは覚えていないが1桁しかないものもいくつかあったはずだ。他の数値も軒並み上昇している。

 あまり実感はないが、じゃあ自分はどうなんだと、琢郎は自らのそれも表示させた。



『個体名:タクロー   種族:オーク

 追加属性:転生者


 HP:   159/ 159

 MP:  8281/8281

 筋力:    43

 頑丈:    45

 敏捷:    18

 知力:    12

 スキル:「特殊表示(ステータス)」「全属性魔法(オールラウンダー)

     「多重同時詠唱(マルチタスク)」「???」』



 MPだけはまたさらに増えた気がするが、他はほとんど変わっていない。もっとも、MPは元の数字が大きすぎるので上昇率で考えれば、そう大差ないとも言える。


「なんでリリィだけ、こんな急成長してるんだ……?」


 自分とリリィの能力値を何度か見比べて、ようやく琢郎は気づく。『LV』だ。リリィにあって、琢郎にないもの。

 リリィの『LV』の項目に集中して、その解説を表示させた。


『「LV」:広義の“人”種固有の成長項目。これが上昇することで、あらゆる能力が段階的に成長する。』


「……なんだそりゃ」


 RPGなんかじゃ当たり前にあるので見過ごしていたが、とんでもない項目だ。

 そのRPGなんかでも、数値だけなら初期の完全装備の何倍もの値にまで、後半には素の状態で達することも少なくないわけで。実際考えてみれば、異常な成長能力だ。

 下手なスキルや魔法なんかより、よっぽどこの『LVアップ』の概念の方がチートなんじゃないか?


 そんなことを考えながら、『転生者』たる自分は広義の“人”種ではないのか、LV表示が存在しない理由を琢郎は探す。

 そうして行き着いた答えが、これだった。


『「種族:オーク」:身体能力に優れた種族。創世時には“人”種の1つとして創られたが、現在は退化していて“人”種固有の能力は失われている。』


「はッ、ははは……」


 もう笑うしかなかった。

 乾いた笑いを浮かべる琢郎の視界には、累計7匹目、最後の角兎を自分で倒すリリィの姿が映っていた。

LVアップによる異常成長こそ真のチート!

これは私の持論の1つですが、それはさておき。

ヒロイン上げ、主人公落としの流れになってますが、数値の通り現時点ではまだまだ琢郎の方が能力は上。もちろんいずれ別種の方法で大きく成長もする予定ではあります。


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